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その後苗字と話して分かったことと言えば、小学生の時からそのバンドが好きということ、小学校卒業と同時にこっち引越してきたこと、家案外近いこと、母親がいない父子家庭だということ、とか。
羅列すると大したこと無いけど、これ聞き出すまで何時間もかかった。何でコイツこんな無口なんだ…。

「帰りさ、どっかで飯食わねー?」
「うん。」

それでもだいぶ打ち解けたと思う。苗字はただ無口なだけでいい奴みたいだ。

「あそこでいい?あの最近出来たナントカウォークみたいなとこ。」
「うん。」

駅前にあるちょっと大きなショッピングモールに苗字と行く。
チラチラと周りの人の視線を感じる。もちろん視線は俺…じゃなくて隣のイケメン様を見てるわけだけど。

苗字は周りがあまり気にならないらしい。さすがイケメンは見られることに慣れてるのかもしれない。

「ここ初めて来た。」
「マジ?なんなら飯までちょっと時間あるから見て回る?」
「うん。」

あー友達いなさそうだもんな一人でここ来る機会無いよな、と言いかけたがさすがにそれは言っちゃダメだろう。

苗字と二人で歩いてて気付いたこと。
コイツの方が背が高い。足長い。でも顔の大きさはあんま変わらない気がする。顔整ってる。作り物みたいだ。顔だけじゃなくて全体のバランスが良い。モデルみたい。
まるで女みたいなことを考えている自分が少し気持ち悪い。何考えてんだ俺。

しかし苗字は俺の視線も無視し、女の子が喜ぶような雑貨がおいてある店に入っていった。
え、お前そこ入るの?

苗字は店内を少し巡回したかと思うと、何かよくわかんないちょっとふやけたパンダのぬいぐるみを手に取った。

「…何コレ。」
「あー、クラスの女子が持ってた気がする。何かのキャラクターだろ?」
「…超可愛い。」
「…は?」

男二人でこんな可愛らしい店に入ってぬいぐるみ手にしてるってどんだけしょっぱい光景だよ。

結局、そのキャラクターのぬいぐるみとストラップとシャーペンとをお買い上げ。何かが苗字の琴線に触れたらしい。
心なしかホクホク顔をしている苗字を見て、コイツ変な奴だなぁとしみじみ思った。

時計を見ると晩飯にはいい時間になっていたし、腹も減った。

「苗字、そろそろ飯行かね?」
「そうだね。」
「何か食べたいものあるか?」
「ん…何でもいいけど…。」
「じゃファミレスとフードコートだったらどっち。」
「ファミレス。」
「よし決定!」

ファミレスに入ったときも店員が苗字を見て少し赤くなった。
いや苗字どんだけ?俺だってなかなかイケてるでしょおねーさん?!
案内される席にすたすたと歩いて行ってしまう苗字の背中を見て少し虚しくなった。



「んー、焼肉…いやハンバーグ?あ、ステーキ…もいいな…。」

メニューを見ながらうんうん考えていると苗字がこっちを見ているのに気付いた。

「…何だよ。」
「いや…誰かとご飯食べるのって久しぶりだから、何か楽しい。」
「…ふーん…。」

そういえばこいつ父子家庭つってたっけ。

「苗字は何にすんの?」
「んー…あ、この筍と小エビの和風オムライスって美味しそう。」

イケメンって頼むメニューも何かちょっとカッコイイわけ?
いやさっきから卑屈だな俺。

「ねえ、切原。」
「あ?」
「ポテトかなんか頼まない?割り勘で。」
「いーんじゃね?」
「割り勘で何か食べるのって初めてだ。」

………こいつやっぱ友達いないんだな…。
微妙にニコニコしているように見える苗字に少し同情した。


End







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