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俺のクラスには変わった奴がいる。
名前は苗字名前(男)。
はっきり言って、超イケメンだと思う。
いや俺のほうがイケメンだよ?うん。いやほんとに。

…まぁ、それはさておき。
イケメンな苗字くんはとても無口な奴だった。
暗い?っつったほうが的確かもしれないけど。
イケメンだと無口で暗いだけでもクールって言われるからうらやましいよな。

っと、また話が逸れた。
んでその苗字くんと俺は別に話したこともないし、むしろクラスで対極に位置する存在なわけ。




「赤也罰ゲーム決定ー!」
「嘘だろー?!」

昼休み。
クラスで気の合う奴らと数人でトランプをしていて。
『これ負けた奴罰ゲームな!』
とか言い出した奴がいて、みんなそれに乗っかって俺は見事に負けたところである。
うん非常にわかりやすい説明だな。

ここは一つ男らしく引き受けてやろうと意気込んでいたのだがしかし。
俺に課せられた罰ゲームは予想外のものだった。

「んじゃ、赤也。お前苗字と仲良くなって来いよ。」
「は?」
「いやここは俺たちのグループにああいうクールイケメンが必要だと思ってな。」

何だこいつ意味わからん。
それに何より、

「イケメンならここにいるだろ。」
「冗談きついぜ!」
「てめ…ッ!」
「まぁ冗談はさておき、苗字はいっつも一人で寂しそうだろ?友達いないだろ?」
「別に寂しそうには見えねえしいいんじゃねぇの?」
「あーもういいから!苗字みたいのがいると女子人気が上がるだろ?結果的に俺たちもモテるっつーことだよ!」

ああ、そういうことか。
つまり、こいつは苗字とつるむことで自らも女子に注目される機会を増やしたいということか。

「お前清々しいまでにクズだな。」
「うるっせー!いいから仲良くなってこいよ。今日部活休みだろ?帰りにどっか寄り道してこい。」
「いやそんないきなり…。」
「成功するまで毎日誘うこと!いーな?」
「でもお前…。」
「決まったことにぐだぐだ言わない!」

決まってねーよお前が勝手に決めたんだろ!とか色々言いたいことはあったけど予鈴が鳴ってしまって何となくうやむやにされた。

苗字は俺の斜め前のさらに前の席。
いつも昼休みはいないけど、女子の話によると図書室に行っているらしい。


予鈴が鳴って少しすると苗字が戻ってきた。


午後の授業は古典。何という拷問だろうか。
あくびを噛み殺す努力すらする気にならない。
ちらっと苗字の方を見ると奴もウトウトしていた。
…まぁ、完全に沈没している奴もいる中で頑張ってる方だとは思う。

綺麗な顔、と思って見ていると古典が終わった。


もう一つの授業である数学も終わり、帰りのSHRも終わったところで苗字の方を見ると既に姿が見えない。

「あれ、苗字は?」
「お前っ何してんだ追いかけろ!」

クラスの連れの奴等に急かされて慌てて後を追わされた。
つか、マジで行くのか。

下駄箱のあたりで帰ろうとしている苗字を発見し、声をかけようとした。

「お、おい!」

しかし奴は俺に気付かず帰りはじめようとする。

「お前だよ苗字!!」

追いかけて肩を掴むと少し驚いたように(いや表情あんま無いけど)俺の顔を見た。

「何?」
「へ?あ、いや、一緒に帰らね?」

はぁ?
と苗字の声が聞こえてきた気がした。
怪訝そうな顔でこっちを見ている。

…いや俺思いっきり不審者じゃね?
誰だって話したこともないクラスメートにいきなり帰ろうとか言われたら身構えるよなそうだよなうん。

「わ、悪い今の忘れて…、」
「……別にいいけど…。」
「えっ?」

しかし予想外だった。まさかのオッケーが出た。え、こいつ結構フレンドリーなの?

「あ、じゃあ帰るか!」




「…」
「………」
「……………」



……会話がねぇ…!!

苗字が無口な奴なのは知ってたけど、俺も話したいこととか特に無いから間が持たない。
気まずい。気まずいにもほどがある。


「苗字ってさ、」
「うん。」
「あー…ゲームとかする?」
「…あんましない。」
「ふーん……。じゃあマンガ読む?」
「立ち読みはするけど…。」
「マジ?何読むの?」
「マガジン。」
「……へー俺ジャンプ派。」
「そうなんだ。」
「つーか何か好きなもんとか無いの?趣味とか!」
「いや特に…。」
「普段図書室いるんだろ?何読むの?」
「太宰とか司馬遼太郎とか。」
「……読んだことねーな…。」

いやこいつ会話続ける気無いんじゃね?
あまりに沈黙が痛い。

あーもうこいつと仲良くなるとか不可能だろと思っていると、ケータイにメールが来た。
マナーモードにするのを忘れていたらしい。授業中鳴らなくて良かったなーと思っていると、苗字の表情が変わった。

「あ、その曲…。」
「え、知ってんの?」
「うん、このバンド好き。」
「マジ?!これ知ってる奴少なくね?!」
「確かにあんまり有名じゃないよね。」
「でもすっげーカッコイイよな!何かこう魂ゆさぶられるっつーか!!」
「うん、ロックだ。」
「そうそう!!!」

まさかだ。
ケータイから流れてきたのは俺のお気に入りの曲で。
その曲はまだマイナーなバンドの曲だから連れの中で知ってる奴はいなかった。

「まさか知ってる奴がクラスにいるとは思わなかったぜ!」
「うん、俺も。」

…何か俺コイツと仲良くなれそう。

End







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