ばーかばーか。
真田弦一郎/女主真田家庭教師
「ばっかもんがぁー!!!」
怒声をあげるオッサン(仮)の前で正座をするわたし、プライスレス。
真田氏。下の名前は忘れちゃった。なんだっけ。
年はわたしの二つか三つくらい上。には見えないけど。
成績が低空飛行地面すれすれのわたしに用意された家庭教師でございます。
わたしの通う高校は附属大学がついていて、ぶっちゃけた話出席日数と単位だけ取ってれば大学に行けちゃうのだ。
それを知った日からわたしの成績はジェットコースター並に落下した。
だって割に合わない努力はしたくないし、大学にさえ行けちゃえば親は何も言わないじゃない?
しかし現実は甘くなかった。
単位はきちんと取っているし赤点も取っていないのだが、この前学校で受けさせられた模試の結果が親に見つかってしまった。
烈火の如く怒り狂った両親から、幼なじみのオッサンを提供された。
それが彼である。
「聞いているのか?!」「聞いてますー。」
「…いいか、勉強がすべてだとは言わん。しかし、社会に出たときに最低限の常識も知らないようでは話にならんぞ。」
彼はもうね。まじめすぎ。
「予習復習は欠かさずしろ」
「寝る前に必ず英単語を覚えろ」
「勉強する時間を決めて普段の生活に組み込め」
最初にそういわれたときは度肝を抜かれた。
いや普通の受験生なら何でもないことなんだろうけどさ。
「常識くらい知ってますぅー。」
「口答えするな。」
宿題をやらなかっただけでお説教の嵐だ。
最初はちょっと泣きそうになったけどもう全然気にならない。
まだ何かぐちぐち言っていたけども、あまり耳に入ってこない。
あーもうホントにうるさいなーくらい。
慣れって怖いねほんと。
と、聞き流していたお説教の中に聞き逃せない一言が含まれていた。
「そんなことで俺の嫁になれると思ったのか!」
「は?!」
俺の嫁って何だ、よくオタクの人が言う「○○は俺の嫁はぁはぁ」とかいうやつ?
いや、それ聞いても理解してもらえなさそうだから黙ってよう。
「嫁って…?」
「何だ知らなかったのか、俺とお前は将来を誓った仲だぞ。」
「はぁぁぁ?!」
聞いてないよママンパパン!
っていうか……。
「嫌だよ!!」
わたしがあまりにもきっぱり言い過ぎたからか、真田センセーはショックを受けたような顔をした。
「嫌だとは何だ!」
「だってセンセー絶対亭主関白じゃん!それにわたしまだ遊びたいよ若いんだから!!」
「そうだな、お前が大学を卒業したら正式に結婚を申し込もうと思っていたのだ。」
「いや違くて!って言うかわたしの話聞いてます?聞こえてる?あーあーあー聞いてますかー?!」
「落ち着け。きちんと聞こえている。」
「なら説明してよ!」
説明を要約すると、つまりこういうことだ。
なんでもわたしが小さいときに
「げんいちろうくん(そうだ弦一郎って名前だったっけ)とけっこんする!」
とか血迷ったことを言い。
弦一郎くんが「いいだろう」とか了承してしまい。
その場で両親に挨拶を済ませた、とか。
「すいません、全然記憶にないのですが。」
「そんなことだろうと思ったがな。」
なんだそれ。わたし全然聞いてないぞ。知らないぞ。
でもわたしの思考回路は非常に単純だった。
「だったらなおさら勉強しなくて良くない?」
「…たわけが!」
軽く頭を叩かれる。
「いったーい!!今ので脳細胞死んだ!わたしの脳細胞死んだよ!」
「死ぬほど存在していないだろう。」
「ナチュラルにひどいんですが…。」
「俺の嫁になる人物が教養の無い人間では困るからな。しっかり勉強しろ。」
…はぁ?!
いや、別に頼んでないし!(昔のことは忘れたわ!)
嫌だって言ったじゃん!
なにその言い草!
思わずキィーッとなってたらふ、と呆れたように笑われて頭をなでられた。
「だから、一緒にがんばろうな。名前(女)。」
な、そんなことでわたしを懐柔しようなんて甘いのよ!
と思ったけどなんだか急に勉強に意欲が湧いてきたので、まぁ良しとしよう。
End夢色サイダーのアマルナちゃんからのリクエストで「年上家庭教師の真田とお勉強」でした!