神様お願い



白石は昨日彼女に振られた。


あの聖書が、完璧な絶頂男が振られるなんて。

俺と白石は所謂幼馴染。
俺のほうが2つ上で、白石はまぁ弟のようなものなのだ。

彼女は俺と同じ高校の生徒だったらしい。
どういう経緯で知り合ったかは知らないが、白石と彼女はとてもうまくいっているように見えた。
白石は彼女にベタ惚れだったのでノロケうぜーとか言いながらも、俺も祝福していたのだ。

そんな白石が振られた。

「なぁ名前(男)、俺の何がアカンかってん?顔か?性格か?」
「顔ってことはないやろ。」
「じゃあ性格か…俺そないに性格悪かったんか…。」
「まぁ、一致不一致の問題や。」
「せやって、俺彼女のためなら何だってしたで。それなのに…!」
「ホラ、尽くされるより尽くす方が好きって奴もおるし…?」
「俺は俺は…!」

さっきからずーっとこの調子。
もうぶっちゃけうっとうしい。
男泣きかよ、情けないな!

「白石、自分それでも男か。振られたくらいで何やねん。お前はカッコイイ。お前と付き合いたがらない女子なんかおらんわ。もっと周りを見てみい。世界はお前への愛で溢れとるんやで!」

白石は自尊心が強い。
その分、落ち込んだ時はドロッドロに落ち込む。
俺はそのたびにコイツが復活するまで慰める。
もうそんな構図が出来上がってしまっているのだ。

「ホンマにそう思う?」
「もちろん。俺は白石ほどイケメンな奴見たことあらへんで。」
「俺、性格悪ない?」
「悪ない。いつでも一生懸命やで。お前ほど性格がええ奴めったにおらんわ。」
「名前(男)は俺が好きなんか?」
「好きやで、めっちゃ好きや。俺のほかにもな、」
「俺気づいたかもしれへんわ。」
「そうか、今回は立ち直りが、」
「俺は真実の愛に目覚めた。」
「…? もう好きな人見つかったん?」
「名前(男)、好きや。」
「あーはいはい俺も好きやでー。」
「ホンマ?俺ら相思相愛なん?」
「あはは、せやなー。」
「名前(男)、今まで気づいてあげられんくて堪忍な。」
「…は?」
「名前(男)はいつでも俺を好きでおってくれたんか…せやなかったら俺が落ち込むたびにこないに励ましてくれへんな。うん、俺も好きやで。」

どうも変だ。
会話が微妙にかみ合っていないような気がする。

「名前(男)!俺はこれからお前への愛に生きたるで!」


…違あああああう!!!!

「は、はぁあああああ?!お前何言うてんねん!アホちゃうか?!」
「いやー…、今まであんだけ励ましてくれたんも納得や。俺はずっと、名前(男)の愛に包まれてたんやな…。」
「ホンマにちゃうわ!男同士やん!俺の話聞いて、」
「名前(男)。男同士とか、そんなの関係あらへん。もしかしたら、お前を幸せにはできへんかもしれへん。せやけど、俺はお前を不幸には絶対せん。」

ダメだ、何も聞いてない。

そして俺は不覚にも、その言葉にときめいてしまったのだ。
しっかりしろ俺!でもコイツイケメンなんだもん仕方ないじゃないか!

「…、自分、さっきまでめっちゃ振られて凹んでたやん。」
「嫉妬か?」
「ちゃうわアホ!」
「…俺なぁ、ホンマのこと言うと振られた理由、アタシの事ホントに好きじゃないでしょ?だったんやで。」
「…。」
「考えたんやけど、俺は、もしかしたら名前(男)に慰めてほしかっただけなのかもしれへんわ。」

…ダメだ流される。
こんなことでは年上の威厳が…!

「名前(男)が高校入ってから滅多に会えんくなったけど、俺が落ち込んでるっちゅーと必ず駆けつけてくれるやん。名前(男)に会いたかったんやきっと。」

あぁもう神様。
コイツの口をふさいで下さい。
俺がこれ以上流されてしまわないように。

「やから、名前(男)ッ」

口をふさいでくださいと神頼みした。
それでも俺の口でふさいでくださいとは言っていないのに。

気づいたら勝手に身体が動いて、コイツに口付けしていたのだ。


…ホンマに、アホちゃうか俺。


END







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