黒い帽子の下の赤い顔

真田弦一郎/女主



今日は真田弦一郎の誕生日だそうで。

今朝知ったのだが。


真田とわたしはクラスメートで隣の席。
忘れ物をしたり宿題をやらなかったり授業中に寝てたりするわたしの保護者係のような存在だ。

最初は真田もわたしに気を遣っていたようだが、わたしが怒鳴られたりお説教を受けても泣いたり凹んだりしないと気付いてからは容赦なく怒ってくる。

わたしは非常に態度が悪い生徒だったが、真田のおかげで3年になってからはやや改善されつつある。

担任の計らい(押し付けとも言う)によってわたしの隣の席は真田で固定されたのだ。

友達なんかは真田を怖いって言う子が多いけれど、何だかんだわたしはいい奴だと思っている。
わたしにまっすぐ向かってくる時の真田の顔がたまらなく大好きだ。
女のコは叱ってくれる男が好きというのは本当なのだろう。


真田繋がり(真田のお説教をものともしない女子としてレギュラー陣が見に来た)で友達になった柳から、今日は真田の誕生日だと教わった。

誕生日か、何かすべきだろうか。散々お世話になっているし、お礼もかねてお昼ごはんを奢ろうと思ったが、よく考えたら真田は毎日お弁当だ。

うーむ、今から学校をサボってプレゼントを買いに行くか…。
いやいや、そんな事をしたら受け取ってすらくれないだろう。

考えを巡らせていたら、柳はそれを読んだように薄く笑った。

「別に物をあげる必要は無いだろう。」
「歌でも歌えばいいかな。」
「…いや、今日部活後にテニス部で御祝いをする事になっているから、お前も来るといい。」
「えー、テニス部のに乱入するの悪くない?」
「そんな事は無いぞ。お前がくれば弦一郎も喜ぶだろう。」
「ホントに?」
「あぁ。喜ぶ確率は93%、泣き出す確率は7%だ。」
「何で泣くの!」
「冗談だ。では放課後教室で待っててくれ。」
「わかったー。」

柳がああ言っていた事だし、誕生日パーティに乱入すればいいやと思っていた。


1時間目の休み時間に柳生と仁王が来た。

「どうしたの?」
「いや、今日部活終わるまで教室で待っとって。」
「?うん。」
「すみません、事情は追々話しますので。」

事情も何も誕生日パーティの事じゃないのかなぁ。


3時間目の休み時間に丸井とジャッカルが来た。

「放課後教室にいろよ!帰るなよ!」
「え?あ、うん。」
「ブン太、お前説明くらい…。」
「まぁ後で話すわ。んじゃーなー。」

何だ皆して。不思議だ。


昼休み、幸村と切原が来た。

「先輩!今日帰らないでくださいね!」
「あ、うんわかった。」
「ふふ、頼むよ。」

テニス部の人がいちいち確認しに来る。
皆律義だな。
そんなにわたしはフラフラしてると思われてるのか、心外だ。

「…今日は客が多いようだな。」
「え?そうみたいだね。」

教室に戻るといつものようにどっしりと真田が座っていた。

確かに、休み時間になる度に呼び出されてたら不審に思うだろう。

今のうちに誕生日おめでとうだけ言ってしまおうかと思ったけど予鈴がなってしまって言えなかった。

放課後、真面目に宿題をして時間を潰していた時だ。
教室のドアがガラッと開いて、見ると柳が立っていた。

「待たせたな。」
「大丈夫だよー。」
「それでは行こうか。」

立ち上がろうとした瞬間。

「お待たせしました。」
「ちゃんといい子にしとったかー?」

柳生と仁王が来た。

「…参謀、何でここに。」
「言っておくが俺が先に声をかけたぞ。」
「そんなの関係なか。」

何の話かと思っていたら、

「お待たせー。」
「悪いな、わざわざ。」

丸井とジャッカルが来た。

「は?お前ら何で?」
「…丸井も来たと言うことは、やはり…。」

何なんだコイツらと思った瞬間に、

「先輩ー!遅くなってスイマセン!」
「お迎えにきたよ。」

幸村と切原が来た。

「アレ?先輩達何で?」
「…考える事は皆一緒っちゅー事かの。」
「予想通りだな。」
「仕方ありませんね。」
「まーいっか、連名って事で。」
「じゃあ行こうか。」

全く状況が飲み込めないでいると、全員がこちらを向いた。

「な、何?」
「部室へ行くぞ。」

そのままぐいぐい引っ張られつつ押されつつ部室へ連行された。

「誕生日おめでとう真田!」
「これは俺達からの心ばかりのプレゼントだ。」
「受け取ってくださいね。」
「どーぞお幸せに!」
「煮るなり焼くなり好きにしろぃ。」
「うまいことやれよ!」
「プリッ。」

「えええええっ?!」

「それじゃー俺達はこれで!」

しかも全員帰ってしまって真田と二人きり。
…気まず過ぎる…。

「さ、真田…?」
「何故お前がここにいるんだ。」
「え?何かレギュラー陣に待ってろって言われて…。」
「お前はそんな素直にな方ではないだろう。」
「真田の誕生日だって言われたから何かプレゼントあげたかったの!」
「…それが、これか。」
「いや、その、何も聞いて無かったんだけどさ…。」

わたしをプレゼント☆なんてどこのマンガだ。彼女でもないのに。

「しかし、せっかく皆がくれたのだから有り難くもらうとしようか。」
「は?」
「お前を、もらってやると言っているんだ。」
「んなっ、もらってやるって失礼じゃない!」
「お前のような奴、俺しかもらえないだろう。」
「余計なお世話よ!欲しいならちゃんと言えばいいじゃん!」

別にいらん!とか返ってくるとばかり思っていたけれど、違った

「…お前が欲しいんだ。」

真田が帽子の鍔の部分を手でいじりながら言った。

え、何それそうだったの。

何だかとっても嬉しくなって、ニヤニヤしてしまった。

「仕方ないなー、くれてやるよ!」
「じ、女子がそんな言葉遣いをするな!」

微妙に焦点のずれた注意をしてそっぽを向いてしまう。

でも真田のトレードマークでもある黒い帽子の下からは赤い顔がバッチリ見えて。

「真田、誕生日おめでとう。」
「…あぁ。」

何か、これ幸せじゃない?って思った。


End

真田誕生日夢企画たるんどらんに提出。

07 黒い帽子の下の赤い顔

ありがとうございました!

Happy Birthday !!




「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -