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次の日はあり得ないほどの眠気に襲われた。俺には一生オールは出来ないと思う。
その日の部活は超ハードだった。もう絶対変な時間に寝るまいと心に決めた。


さて、それから数日。
文化祭の興奮もなくなり、すっかり皆テストモードだ。
高校、いや大学までエスカレーター式なんだから赤点さえ取らなきゃいいじゃんと思うのは俺だけらしい。クラスの奴等は案外真面目だ。

あの鮎川ですらテスト勉強をしているのだ。

「いや、それは赤也がおかしいから。」
「えー?何でだよ。って言うか名前(男)も勉強してるようには見えないんですけど。」
「俺はいいんですー。赤也が俺のことちゃんと見てないだけだよ。もっと俺を見てよ。」
「何だそりゃ。」

どさくさに紛れて何恥ずかしいこと言ってんだコイツ。


テスト期間で部活が無いので最近は放課後毎日名前(男)の家で勉強をしている。
先輩達との勉強合宿がなくなったのが本当に嬉しい。毎回柳生先輩にねちねち言われて柳さんにデータ取られて部長に脅されて結局最後まで面倒を見てくれるのは真田副部長……という苦行から解放されるのは誰だって嬉しいと思う。
名前(男)に全力で感謝だ。

その名前(男)は俺に勉強を教えるばっかで、自分の勉強をしている様子は無い。

「名前(男)はホントに自分の勉強しなくて大丈夫なのかよ。俺に教えてたから成績下がったとかなったら嫌だぜ?」
「あー大丈夫。結局基礎を何回もやるのが一番点数に繋がるから。」
「……そうですか。」

まるで頭の良い人みたいだ。いや実際名前(男)は頭良いか。
授業を受けてるだけなのに名前(男)の説明はわかりやすかった。何でだ?やっぱり元の頭の出来が違うのか。

「……赤也は授業中寝てるからでしょ。」

ピシャリと言われた。

……うん、この空気からわかるように甘さ半分厳しさ半分って感じです。
絶妙な飴と鞭。俺多分今までで一番テスト勉強してると思うんだよね。
教科書や授業で使う問題集の問題もよっぽど難しい応用とかじゃない限り解けるようになったし、苦手な英語も基本問題は大体出来るようになった。

何も問題はない。
テストもこのまま行けば間違いなく赤点は免れるだろう。

……何も問題はない、はずなのに。

何か物足りないという、この気持ちは何なんだろうか。

だって名前(男)は俺(恋人)が近くにいるのに全く意識する様子が無いし、逆にどんどん淡白になってる気がする。

勉強するときの体制ってけっこう顔が近い。だから俺は名前(男)の睫毛とか唇とかにいちいち目が行ってしまってバレないようにするのが大変なのだ。
なのに名前(男)はぜんぜん!まったく!そんな素振りが無い。これは何だ、つまり俺に魅力が無いってことなのかよ。
あ、やっぱ今のナシ。自分で考えて落ち込むなんてバカらしい。

要するに、俺はもっと関係を進めたいわけだ。
触るのはもちろん気持ち良いんだけど、それだけじゃなくてこう……うん。



セックスしたいわけです。

ネットで色々と調べたけど、やっぱり最初はかなり痛いらしい。でも慣れたらスゲー気持ちいいとか書いてあった。
好奇心もあるし、今なら部活が無いからそこまで翌日に支障をきたすこともないと思う。
逆に言えば、今しかないのだ。テストが終わったら俺はまた部活三昧だから、名前(男)と一緒にいられる時間も多少減ると思う。

だからこのテスト前の週末は絶好のチャンスだ。
テスト期間が終われば名前(男)の家に泊まるのもしばらく無くなるだろう。
最近泊まり過ぎだと母親が嫌な顔をするし、それは俺も思う。
名前(男)の家は普段父親が帰って来ないのでほぼ一人暮らしなことは言ってある。そこに俺が何度も泊まりに行ってんだから親としては心配なんだろう。(と、名前(男)が前言ってた。)

うん、まぁそれはいい。とりあえず今日は覚悟を決めてきたんだ。だから名前(男)は俺を襲うべきだと思う。


「……じゃあ今日はこの辺で終わりにしようか。夕飯何がいい?」
「えっ、あ、何でもいいけど!」

そういうことを考えていたらつい変なテンションで返事をしてしまった。

名前(男)は一瞬変な顔をしたけどそのままキッチンに向かおうとした。

「じゃあ何か適当に作っとくよ。お風呂入って来ちゃって。」
「名前(男)!」
「……なに?」
「………今日さ、一緒に風呂入らねー?」
「え?」
「風呂だけじゃなくて、……その…、」
「……あー…。」

名前(男)は何となく俺の言いたいことを悟ったらしい。

「…じゃあ、夕飯の後に一緒に入ろうか。」
「それでさぁ、そのあとしようぜ。」
「何を?勉強?」
「何でだよ!…だから……、」

セックスしようぜ!

なんて言えるわけがない。でもこのままだと前みたいに触るだけで終わりそうだ。

「……名前(男)は、…その、何だ、俺に入れたいとか思わねーの?」
「え?」
「だから…!」

何でこんな恥ずかしいことをもう一回言わなきゃいけないんだ。

「……入れたいっていうのは…えーと、」

名前(男)も察したらしく、自分の髪の毛をくしゃっといじった。

俺がコクンとうなずくと、少ししてから言った。

「……そりゃあ、思うけど…。」

え、今日するの?

と、口の動きだけで言われた。声にならなかったのかもしれない。

「テスト終わったらまた部活だし、そしたらちょっと難しいだろ。」
「いや、そうだけど…。」
「だったら今日チャンスじゃん。」

俺は折れないぞ、と名前(男)の目を見ていると名前(男)は少し考えてから頷いた。


END







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