共に有ろうか

丸井ブン太/女主



俺と名前(女)とジャッカルは、とても仲が良かった。
毎日3人で昼飯を一緒に食べていたし、試験の前も3人で勉強していた。

よく3人だと上手く行かないなんて言うけど、全然そんな事なく、3人で仲良くやっていたわけだ。
上手く行っていたハズなのに。

「ブン太、苗字、俺彼女が出来たんだ。」

ある日突然ジャッカルに彼女ができた。
ジャッカルに好きな人がいるのは知っていたが、まさか付き合う事になるなんて。

紹介してもらった彼女はまぁ、可愛かった。

名前(女)も俺もジャッカルを散々からかったし、ジャッカルも幸せそうに笑ってるし、その時は良かったなーくらいにしか思っていなかったが。

翌日から、名前(女)と俺との距離は決定的に変わった。

昼休み、いつものように昼飯を食いにいこうとジャッカルの教室に向かったが、彼女と仲良くやっていたので気が引けてしまった。

食堂へ行き、ジャッカルは彼女と食うみたいだぜ、とか名前(女)に言って、2人で食べようとしたのだが。

見られている。

前まで3人でいた俺等が2人になったのだ。
目立ってもおかしくはない。

名前(女)もそれを感じたらしく、いつもならべらべらしゃべっているのに何となく気まずくて、食べる事だけに集中した。


次の日にはもう噂がたっていた。
俺と名前(女)が付き合いはじめて邪魔になったジャッカルを突き放したとか、
名前(女)は俺が好きで二人きりになるようジャッカルに協力してもらってるだとか、そんなところ。

別に付き合ってねーし、気にすることないと思って昼休みにまた名前(女)と食堂に行こうとした。

しかし。

「ごめん、わたし今日パンあるから教室で食べるね。」
「マジでー?じゃあ俺も購買で買ってくるわ。」
「え、いいよ。食堂行ったら?」
「は?」
「わたし友達と食べるから。」

そう言うと名前(女)は行ってしまった。

仕方なく1人で食堂に行くと、仁王と柳生がいた。

「丸井君、お一人ですか?」
「悪いかよ。」
「彼女はどしたん?」
「彼女じゃねーし…何なんだよ。」
「噂になっちょるよお前さん等。」
「くっだらねー。」

俺と名前(女)は親友じゃなかったのか?
友達だと思ってたのは俺だけだったのか?

少し噂が立ったくらいで俺の傍から離れる名前(女)にムカついたし、
くだらない噂を立てる奴等にもムカついた。

「やはり男女間の友情は難しいものなのですね。」

柳生にそう言われてイラッときた。

「…うるせーよ。」


部活後、ジャッカルに相談と言う名の八つ当たりをした。

「お前のせいで俺と名前(女)の友情にヒビが入ったんだよ!」
「俺のせいかよ!」
「何とかしろぃ。」
「お前なぁ……じゃあまた3人で食うか?」
「…彼女に悪いだろぃ。」

冷静に考えれば、俺の言うことは無茶苦茶だった。


次の日の昼休みに再び名前(女)のところへ行った。

「名前(女)。」
「…ブン太、わたし今日も、」
「いいから来いよ!」

グイッと名前(女)を引っ張る。

「ちょ、ブン太、なに?」
「お前にとって俺はその程度だったわけ?噂なんか気にすんじゃねーよ。俺等友達だろぃ?」
「そうだけど、何か今までと違うんだもん。」

周りの目が気になるなら人目につかないとこで食えばいいだろ。
別に噂なんて放っておけばいつか無くなるっつーの。
俺達が振り回されなきゃいけない理由なんて無いだろ。

そこまで言おうとしてハッとなった。

何でこんなに俺は必死なんだ?

「ブン太はいやじゃないの?前ブン太が気になるって言ってた子とか、気にならない?」
「俺は別に、噂立っても」
嫌じゃねーんだ。

名前(女)となら嫌じゃねー。
…他の奴だったら嫌なのか?
他の女友達と噂立てられたら、嫌か?

…嫌だ。

そこでやっと気付いた。

俺はコイツが好きなのかもしれない。

「俺は別に構わない。お前といたいんだ。」
「わたし、おかしいの。」
「…何がだよ。」
「今まで普通にバカやってると思ってたのに、何か、意識しちゃって、わかんなくて、」
「わかんないって、何が。」
「今まで通りにいこうって思ってたのに、今までどうしてたかわかんないの。」

「ブン太は何も変わんないから意識してるのわたしだけって思うと辛くって、」
「でもまだ2人でいられるのは嬉しくって、」
「何かもう、何言ってるのわかんないね、ごめん。」

…もしかして、コイツ…。

「俺も意識したよ。」

「お前が噂立ったくらいでいなくなるんだと思うとムカついたし、」
「こんな必死に一緒にいようとする自分にビビったし、」
「…でも、一緒に居たい。」

「…わかんねー、気付いてなかっただけだろうな多分。」

お前が好きだったんだ。多分、ずっと前から。


名前(女)はパチパチとまばたきをした。


「お前も、そうなんじゃねーの。俺の事ばっか考えただろぃ。」

まっすぐ名前(女)を見つめると名前(女)の顔がボンッと赤くなった。

「…そうなのかな。」
「絶対そう。」


結局俺達も男女間の友情は成立させられなかったわけで。

「ジャッカルになんて報告する?」
「あー、俺達付き合い出したからでいいだろ。」
「今度はジャッカルの彼女も入れて4人でゴハン食べようよ。」
「…それいいな。」

でもまぁ、いっか。

一緒にいられれば。


End





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