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「………おはようございます。」
「……おはよう…。」

何だろうこの脱力感。
学校行ったら休みだったみたいな虚しさがある。

「目覚ましいつ鳴った…?」
「…3時半くらい…?」
「赤也起きてたの?」
「……………悪い。」
「いや…別に怒ってるわけじゃないんだけどさ…。」

11時まで二人して爆睡だって、凄いね!
俺の携帯にはさすがに親からの電話とメールがガンガンに来ていた。普段遅くなってもあんまり心配されてないのかと思ってたけど、そんなことはなかったみたいだ。少し嬉しい、けどそんな場合じゃない。

……って言うか、嬉しいって思うのも変な話か。前の俺なら超うぜーくらいにしか思ってなかったと思う。
それは名前(男)のおかげなんだろうか。

「……ちょっと親に電話してくるわ。」
「あ、うん。大丈夫?」
「多分なー。」

電話をかけると凄い勢いでどこにいるんだとか心配したんだからとか言われた。
名前(男)ん家で寝てた、と答えてもなかなか信じてもらえなかったんだけど、俺が逆ギレしそうになったあたりで名前(男)が電話を代わって説明してくれた。
……うん、実の息子の言うことより名前(男)の言うことを信じる親ってどうなんだよと思うけど、名前(男)の説明(っつっても寝ちゃってただけだけど)を聞いて納得してくれたなら良しとしよう。

そんで、暗いし今から帰るのもアレだからそのまま名前(男)の家に泊まることになった。


「…あー、今から眠れねーし腹減ったし明日学校だし!」
「夜食で軽くなんか食べようか。俺もお腹空いたし。」
「そーだな。」

作るのもめんどくさかったのでカップ麺を食べてシャワーを浴びた。
…ちなみにシャワーは別々に浴びた。前回の経験から、全裸は恥ずかしいってことを学んだのだ。

それから諸々の用事を済ませて再びベッドに入る。

「さすがに眠れねーと思うのですがその辺どうなんですか名前(男)さん。」
「俺もそう思います赤也くん。」

二人してくくくと笑った。
夜なのに全然眠くなくて、明日辛いことはわかってる。それなのに楽しく感じる。修学旅行の日の夜みたいだと思った。

「もうちょいそっち行っていいか?」
「もちろん。」

妙にわくわくする。怖い話でもした方がいいんだろうか。いや、恋ばなかな。
何でもいいけど話がしたい。色々名前(男)のことを知りたい。

「……なぁ、俺、名前(男)のこともっと知りたいんだけど。」
「……誘ってんの?」
「ちげーよバカ!」
「あはは、冗談。俺も赤也のこともっと知りたい。」

と言いつつ名前(男)は背中のあたりをわさわさ触ってくる。

「その手を退けなさい。」
「えー…。」
「えーじゃない!」
「俺、赤也のこと全部知りたいんだ。」
「触り心地は知らなくていいだろ。」
「けちー。」

不満そうにするな。欲求不満なのか、さっきあんだけ抜いただろ。

「って言うか名前(男)ってさー、今まで何で抜いてたわけ?」
「え?な、何急に。」
「いやちょっと気になってさ。」
「……あんまり抜いたりとかはしなかったけど…。」
「は?!まじで?!そんな奴いたのか……。」
「だって生々しくてさ。」
「じゃあ無駄にキス上手いのは何で?」
「し、知らないよ。上手いんだ俺。」
「俺もそんなに経験ねーからわかんねーけど、普通に上手いんじゃね?」
「そうなの?良かった。」
「何で?」
「……んー…、わかんない。」
「って言うか透子さんとはどこまでしたわけ?」
「……何でそんなこと…。」
「気になるじゃねーかよー。」
「それ言ったら俺だって赤也の歴代の元カノとどこまでしたのか知りたいよ。」
「歴代って言うほどいねーし!」
「あんまりこういうのは言わない方がいいと思うんだけど。」
「………だって、」

男っちゅーんは、相手の最初の男になりたがるモンじゃ。女は逆に、相手の最後の女になりたがるってな。一般論じゃが。
って仁王先輩が言ってた。
俺も少なからずその傾向があんのかもしれない。いや、全てじゃないけど。今は出来れば名前(男)の最後の人になりたいとも思ってるし。
要するに独占したいだけだ。そんくらい好きなんだよ。

「……キスはした。」
「やっぱり?」
「でもそのくらいまでかな。」
「……触ったりとかは?」
「うーん……、やっぱり俺ダメでさ。そういう雰囲気になりかけたときに気持ち悪くなっちゃって……。」
「……あぁ…。」

ホントに女のコダメなんだなこいつ……。いや、わかってたつもりだけど、気持ち悪くなるとか、やっぱり俺とは感覚が違うんだな。

「赤也は?」
「え?」
「俺は話したから、赤也の番。」
「……いや、俺も一番進んだ相手でもキスまでだなー…。」
「え、そうなの?」
「あぁ。何か……うん、いざとなるとちょっとびびった。」

あれ、俺なんか情けないな。
だって仕方ねーじゃんいきなりあんな空気になって対応できるかよ!

「……ちょっと、嬉しいかも。」
「あ、そ。」

名前(男)も俺のハジメテになりたいとか思うんだろうか。最後の男になりたいと思ってくれるんだろうか。

「名前(男)はさ、俺とどうなりたい?」
「どうって?」
「………いつまで一緒にいたいとか。」
「え、そりゃあずっと一緒にいたいよ。」
「ずっとってどんくらい?」
「ずっとっつったら、一生じゃないの?」

名前(男)は当たり前のように言った。

何こいつ、意味わかってんのかよ。男同士で、俺たちまだ中学生で、それで一生とか。

「………赤也?」
「…うん、そうだよな…。俺も名前(男)と一生一緒にいたい。」

あーもう、だから好きだ。スゲー好きだ。意味わかんないくらい好き。


END







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