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名前(男)は涙目だ。やっぱり恥ずかしかったんだろうな。
そして俺は妙に気分がいい。
顔のことを言われるのが嫌いなのは知ってるけど、俺は名前(男)の顔が好きだから涙目になっているその顔は妙にそそる。

「続きしよーぜ。」

名前(男)を軽く押し倒そうとすると抵抗された。思わずムッとして名前(男)をにらむような顔をしてしまった。

「何で止めるわけ?」
「今日はもうダメ。」
「えー。」
「それよりそろそろお昼にしようよ。」

立ち上がって行ってしまった名前(男)の後を追うように俺も部屋を出た。

「何がいい?」
「何でもいい。」
「そういうの一番困るんだよねー。」
「主婦か!」

台所で並んで料理をする。と言っても俺は簡単な作業だけだけど。
つーか、この構図ってアレだよな。ベタベタだけど、

「新婚さんみたい?」
「は?」
「いや、赤也も同じこと思ってたら嬉しいなーって。」
「ば、バカじゃねーの?!」
「あ、図星?」
「んなわけ…!」
「ほら、手が止まってるよ。」
「………。」

名前(男)の手つきは相変わらず良い。多分俺がいないときも自分で料理作ったりしてるんだろうな。


「……なんつーかさあ、この口で飯食うのもあれだよな。」
「それは言っちゃダメでしょ。」
「あはは、まぁ名前(男)のだから何でもいいよ。」
「またそうやって殺し文句を…。」
「で、午後は何すんの?」
「勉強。」
「以外。」
「……今日の目的はなんだっけ?」
「元気のない名前(男)を励ましてイチャイチャする。」
「バカ。」

名前(男)が簡単に作った昼食を食べながら他愛ない会話をする。

「つーか昼寝くらいしようぜ。」
「昼寝ー?」
「いいじゃん、休みなんだし。」
「そんな余裕あんの?」

テストとかテストとかテストとか。

「うるせー!いいんだよ気にしなくて!」
「まぁ寝てから再開すればいっか。」
「勝手に決めんなよ!」
「赤也。」
「……な、何だよ。」
「俺、赤也のことスゲー好きだよ。」
「は?」

何だコイツ急に。恥ずかしい奴だな。
……いや、まぁ嬉しいけどさ。

「だから、一緒に3年生になろう。」
「留年なんかするわけねーだろ!!」

名前(男)は果てしなく失礼だった。

「……いや、それはさすがに冗談だけど。でも赤也が赤点取って先生に怒られたり先輩に怒られたり赤也の赤は赤点の赤とか言われたら俺は悲しいしさ。」
「今俺は悲しいよ。」

何だこれイジメか。新手のイジメか。泣くぞオイ。

「……じゃあ起きたらちゃんと勉強するから寝かして。」
「おっけー。」

二人で食器を片付けてから名前(男)の寝室に向かった。

……乱れたままのベッドのせいでさっきの行為を思い出してしまった。少し顔が赤くなってる気がする。

「……じゃあおやすみ。2時間くらいしたら目覚ましかけるから。」
「おっけー。」

当たり前のように俺の隣で寝ようとするのを嬉しく感じた。

「じゃあおやすみ。」
「おやすみー。」


……さて、名前(男)は目を閉じた顔も綺麗だ。
何つーか、どんな表情をしても絵になる。睫毛長いし鼻は高いし……、欠点が見つからない。

「ん?!」

何となくほっぺたを引っ張ってみた。
名前(男)はびっくりして起きたみたいだ。……いや、そもそも完全に寝てたわけじゃないんだろう。

「はに?」

多分何?と言いたいんだろうけど俺が名前(男)のほっぺを引っ張っているせいで上手く言葉にできなかったみたいだ。

「名前(男)の顔が綺麗過ぎてむかつく。」
「あのさぁ……。」

仰向けになった名前(男)の上に乗っかって顔をぐにぐにいじってみた。

「名前(男)なんか全然イケメンじゃなかったら良かったのに。」
「俺の顔好きって言ったじゃん。」
「好きだよ。だからむかつく。」

名前(男)の胸のあたりでうつぶせに寝た。
あーもう眠くなってきた。何言ってんだ俺は。

「……俺は赤也のモノだから安心していいよ。」

半分寝ながら聞いたその言葉が夢だったのか現実だったのかいまいちわからない。



ピピピピピ

と、無機質な音で目が覚めた。時計を見ると3時半で、いつの間にか寝ていたことがわかった。

目覚ましを止めて起きようとしたけど、名前(男)はまだ熟睡していた。
いつも名前(男)が先に起きていたので、名前(男)の寝顔を見るのは久しぶりかもしれない。

名前(男)に腕枕される体制になっていたので何度か寝返りを打ったりして収まりのいい位置に移動した。
少し変な体制で寝ていたのか首が痛い。

名前(男)は寝たまんまだ。規則正しい呼吸音がする。

コイツとずっと一緒にいられたらいいのに、なんてふと思った。


………そのまま夜まで二度寝してしまったのは言うまでもない。


END







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