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さて次の日。3連休の最終日は珍しく部活が休みだった。顧問(影薄い)が急用とかで。
名前(男)と約束してるとか言うわけじゃないんだけど、とりあえず電話してみた。昨日の恨みもあるし。

しばーらく呼び出し音が鳴ってから名前(男)はやっと出た。

「もしもし?」
「もしもし?じゃねーよ!何で昨日来なかったわけ?」
「ゴメンゴメン。ちょっとね。」
「そうやってごまかすなよ。何で?」
「………昨日父さんが帰ってきてさ。」
「え、」

名前(男)のお父さん。そういえば名前(男)は父子家庭だったな。何回泊まりに行っても見たこと無かったけど。

「えーっと……、」
「久々だからご飯一緒に食べたんだ。だから昨日行けなくて。」
「だったらそう言えばいいのに…。」
「ごめん、そういう気分になれなくてさ。」
「そっか。まだ家にいるのか?」
「ううん、もう行っちゃった。」
「…今日部活休みなんだけど、名前(男)ん家行っていい?」
「もちろん。今から?」
「おー、すぐ行く。」

確か丸井先輩が前に父親とはうまくいっていないと言ってた。それなのに名前(男)は昨日父さんと二人きりで…!あぁもう何でもっと早く俺に言わねーんだよ。いや俺に言ったからって別に何かあるってわけじゃねーけど…、何かこう、名前(男)のこともっと知りたいし。

すぐに着替えて名前(男)の家に行った。とりあえず財布と携帯だけ持って。

「おじゃましまーす。」
「どーぞ。…って赤也、何で手ぶらなの?」
「は?」
「え、今日勉強会じゃないの?」
「は?!」

何だそれ。俺初耳ですけど。



「別に父さんと仲悪いなんて言ってないよね?」
「いや…うん、はい。」
「……まぁ、赤也が俺のこと思って来てくれたっていうのはなかなか嬉しいんだけどさ。」
「別にそんなんじゃ……、」
「じゃあ何で?」
「…………。」

名前(男)ってお父さんと仲悪いんじゃねーの?
丸井先輩(って言うか透子さんが言ってたらしいよな)の言ってることを真に受けて名前(男)に質問したら、別に仲悪いわけじゃないってさ。どういうことだよ。

「あはは、じゃあ勉強しようか。」
「ちょっと待て!」

名前(男)が寂しがり屋なのは知ってる。その原因が今まであまり愛されて来なかったことだと俺は思ってんだけど、違うのか?!

「別に特別仲良いわけでもないよ。親子っていうより、叔父さんみたいな感じなだけ。向こうが妙に俺に気遣ってくるし、俺も敬語で話すし。」
「親子なのに?」

言ってからしまった、と思った。俺って何で思ったことをすぐしゃべっちゃうんだろう。

「………赤也の中の常識が当てはまんないんだよ、うちは。さて、俺の問題集一緒に使えばいいから、勉強しますか。」
「お、おう。」

何となくスッキリしないまま、名前(男)の寝室に入った。
勉強机の横に椅子をもう一つ持ってきてもらって、完全に俺が教えてもらう体制である。
俺も急展開に頭がついていけてないんだけど。まぁいいのか。名前(男)もこれ以上掘り返されたくないだろうし。
なし崩し的に勉強会がスタートした。

「名前(男)の勉強はいいの?」
「教えるのも勉強になるし。じゃあまず英語からね。」
「英語かー………。」

いきなり苦手科目。でも名前(男)に教えてもらえるならまだナントカ頑張れるかもしれない。

そして1時間後。


「俺さ、人に勉強教えるのって初めてなんだよね。」
「?」
「だからきっと俺の教え方が悪いんだと思うんだ。」
「………………そんなことないと思います。」

や、もう前言撤回。やっぱり英語は頑張れません。
もちろん名前(男)が悪いわけではない。むしろ先生よりわかりやすいかもしれない。それでも一向に機能しない俺の頭はなんなのか。英語をそこまで拒否する理由がわかんねーんだけど、何でなんだろうか。英語に何かしらの因縁があるとか…?

「……根本的な解決にはならないけどさ、ここから半分くらいはそのまま答え出るじゃん?」
「そうなの?」
「先生の話聞きなさい。…だから、ここを全部覚えちゃえば赤点は免れると思うんだよね。」
「ホントか?」
「うん。暗記だから英語関係ないと思ってやっちゃえばいいよ。」
「………頑張る。」
「頑張れ。」
「でもさー、そろそろ休憩しても……、」
「覚えたらね。」
「鬼!」
「ちゃんと覚えられたかテストするから、9割出来たら休憩。」
「出来なかったら?」
「続行。」
「鬼!!」
「ハイハイなんとでも。」

名前(男)は案外スパルタだった。

「……もし全部出来たら、…そうだな、赤也の命令何でも一個聞くから、集中してみ?30分時間あげる。」

しかし名前(男)は巧みで俺は単純だった。超上から目線なその言葉にまんまと乗せられて一瞬で集中モードに入った俺を周りが見たら絶対バカだと思う、と思う。
でも集中した俺は自分で言うのもアレだけどけっこう凄いよ?
名前(男)に命令っつっても別に何かしたいわけじゃなかったけど、名前(男)に匙を投げられたら真田副部長と勉強会なわけで、それは避けたい。あと名前(男)に呆れられたくない。ってことで、バカみたいに集中したら。

「………うーん、1問ミス。」
「マジで?!」
「って言うかスペルミス。」
「マジかよ?!」

ケアレスミス1個で済みました。うん、俺ってやっぱり凄い…………よな。

「そんなに落ち込まなくても。そんなに命令したいことあったの?」
「べ、別に……。」
「でもよく頑張ってたからいいよ。」
「いいよって、命令しても?」
「うん。」
「……………。」

命令って、別に命令したいことなんか………。
名前(男)に命令。何となく色々してみたい気もするけど。
なんつーか、あ、もう名前(男)にに引かれたらどうしようってことしか浮かばないんだけど。
あぁはい、ざっくり言うとエロいことですすみません。

「……………。」
「赤也?」
「ひ、引かないよなお前?」
「内容によるけど。」
「…………じゃあ言わねー。」
「ダメ。じゃあ引かないから。」
「絶対?」
「絶対。」
「………………気持ち良くして欲しい、んデスケド………。」

ぽかーん。
今の名前(男)の表情に音をつけるならコレだ。

「や、やっぱり、」
「ホントに?」
「え?」
「じゃあ、赤也のお願いだし、俺は断れないよねー。」

でもすぐにニヤリと嫌らしく笑う名前(男)を見て、あれ、俺何か間違えた気がするとどっかで思った。

何だよあの表情!反則だろ!!


END







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