過去拍手11/14-2/6

(2011.11/14〜2012.2/6)
今回はシリーズものの番外編です。


オジコン。番外編
(ヒロインちゃんから真田君へのラブレター)
ねーねーキミキミ!番外編
(卒業文集より、保健医から卒業生に寄せて)
神様どうか、番外編
(今日は俺の卒業式)
ヒーロー番外編
(赤也の幼馴染の記録)





オジコン。
(ヒロインちゃんから真田君へのラブレター)

真田君こんにちは。急にお手紙なんか書いちゃってごめんなさい。でも何となく書きたいなぁと思って書きました。メールもいいけど手紙もなかなか面白いなぁと思います。あ、でも形式は良くわかってないので間違ってても怒らないでね。

わたしからの手紙だからどうせしょうもないことばっかなんだろうとか思わないでください。それは否定出来ないんだけど。

最近真田君の周りの人とお話する機会が増えて、どこが好きなんだよって言われることが多いです。真田君の顔ももちろん大好きなんだけど、貴方の頑固なところとかまっすぐなところとか色々大好きです。
真田君の好みのタイプってどんな人かなぁって考えたんだけど、やっぱり大和撫子みたいな人なのかなぁ。わたしは三歩下がってついていくとか多分出来ないけど…うん。

この間おばあちゃんのお家で柿がとれました。渋柿だから食べられないんだけど、干し柿にすると美味しいんだよね。おばあちゃんのお家は柿の他にも杏とか梨とかたくさん果物があって凄く楽しいです。わたしが生まれた日におじいちゃんとおばあちゃんが桃の種を撒いたんだけど、それは台風が来て枯れちゃったんだって。従兄弟の分の梨の木は順調に育ってるのにわたしの木だけ無くてなんとなく寂しいです。

真田君にこんなこと言ったら凄く怒られそうなんだけど、真田君とわたしのおじいちゃんは何となく雰囲気が似てます。おじいちゃんは昔気質の人で凄く頑固なんだけど、孫のわたしにはとても甘いです。おばあちゃんとおじいちゃんは幼なじみで、おじいちゃんがおばあちゃんにプロポーズしたんだって。小さい時はおばあちゃんに何でもやらせるおじいちゃんをあまり良く思って無かったけど、今になっておじいちゃんはおばあちゃんが大好きなんだなぁって思います。

ところで、この間仁王君がニヤニヤしながらわたしに写真をくれました。真田君が寝ている写真です。あれは誰が撮ったのでしょうか。というか、何で仁王君がそれを持っているのでしょうか。謎です。心あたりがあれば教えてください。…あ、その写真はちゃんとわたしが部屋に飾ってるから安心してね。


「真田?どうしたんじゃ?」
「…仁王、そこに直れ。」










ねーねーキミキミ!
(卒業文集より、保健医から卒業生に寄せて)

氷帝学園の皆さん、卒業おめでとう。保健医として、君たち卒業生は僕にとって3年間受け持った初めての生徒達です。
これから皆さんは今までとは比べ物にならない大きな世界に飛び立つことになります。そこで出会うものに圧倒されることなく、どうか素直に感じてください。この世界にはこんなにも素晴らしいものがあったのだ、と。

卒業文集に寄せて原稿を書いて欲しいと頼まれて、僕も自分の卒業文集を読み返しました。今から5、6年前の氷帝学園の卒業文集です。当時はクラスページやアンケートなど、興味を引かれたものしか読んでいませんでしたが(すいません)改めて先生方の寄せてくださった文章を読むと、もっと早くに読むべきだったと後悔しました。なので卒業してすぐにここを読んでいる貴方はラッキーです。

先生方は教師という職業に就くにあたり、何かしらの信念を持っています。在学中にはそれがわからなくても、大人になるとわかる日がきっと来ます。
僕の学生時代は、決して誉められたものではありませんでした。有り体に言うとグレていたわけです。当時僕の担任をしていた先生と職員室で出会うと、「お前はあの時……」と必ず僕の行いを語られてしまいます。
ですが、先生は在学中僕と正面から向き合ってくれました。頭ごなしに否定せずに、僕の意見に耳を傾けてくれました。先生のおかげで僕はまっとうな人間に戻ることが出来たのだと思っています。僕は保健医になるにあたって、広い視野を持ち生徒と接することが出来るよう心がけています。

保健室に訪れる生徒は様々です。怪我をした、具合が悪いといった生徒から、少し学校が息苦しいという生徒まで、色々な個性があります。たまに寝不足だからベッドを貸して欲しいという不届き者までいます。その全ての生徒を見ていて、皆はまだ学校という狭い世界にいるのだなぁとしみじみ思います。
社会において生きづらさを感じることは必ずあります。学校という社会では特に歪みが生じやすいものです。そこで立ち止まることは決して悪いことではありません。時には休むことも大切です。皆さんが疲れを感じた時に拠り所となる場所が保健室だと僕は考えています。どうか卒業しても、貴方には保健室という拠り所があることを忘れないでください。


「お前さ、こんなこと書いて恥ずかしくねーの?」
「うるさいよ!!」










神様どうか、
(今日は俺の卒業式)

小さな白石少年はこんなにも大きくなった。俺はいい加減覚悟を決めなければならない。
今日は俺の高校の卒業式だ。白石は今日という日をじっと待っていた。心臓がバクバクする。周りの友達と今日で会う日が最後になるかもしれないという日なのに、俺はそれどころではなかった。白石から今日未明に届いた手紙のせいだ。

「今日、夜中、行くから。」

一文字一文字、メールの機械的な文字からはとても読み取れなかったけど、きっと白石はあらゆる緊張をもってこのメールを送ったんだろう。俺を自分のものにするために。俺はそれがどうしようもなく嬉しくて、ドキドキして、あぁもう俺はとっくに白石のものだと改めて実感した。それくらい白石が好きだ。だから今日という日を待っていたのは白石だけではない。俺も今日をずっと待っていた。
周りの友達が写真を撮りはじめた。俺ももちろん輪の中に入る。コイツ等と過ごした3年間は決して無駄じゃなかった。俺の人生の大きな大きな糧になったというのに、白石のことしか考えていない俺はどれだけ嫌な奴なのだろう。どれだけ醜いのだろう。それでも、仕方ないだろう。
真知子さんが緊張した面持ちでやってきた。二人で写真を撮りたいと頼まれた。周りの視線が一気に色めき立つ。いいよと返事をして二人で写真を撮った。彼女はいい女だ。白石と真っ向から渡り合った。白石が居なければ俺はきっと真知子さんを好きになった。
ありがとう、いい思い出が出来た。そう言って帰っていく彼女の背中は美しかった。つまりはそういうことだ。彼女は俺を諦めるのだろう。どこかで惜しいような気がする。
打ち上げに角が立たない程度に参加し、皆で友情を誓って帰路に着く。
月が高く上っている。きっともう白石は俺の家の前で待っている。白石、早く俺を奪ってくれ。早く、早く!俺はお前に捕らわれたって構わないのだから。


「…おかえり。」
「ただいま。…ほな、行こか。」










ヒーロー
(赤也の幼馴染の記録)

クラスで一番カッコイイ男の子。それだけでわたしは彼を好きになった。彼は優しい。わたし達皆に平等に接する。特別扱いされたいとは思ったけど、彼はわたし達の誰も特別扱いしてくれなかった。それでも良かった。
でも、赤也は別みたいだ。赤也を見ているときの彼の優しい顔は、まるで恋をしているような表情だった。赤也が妬ましかった。
いつだってそうだ。赤也はわたしが欲しいものを皆持ってる。すなわちそれは周りに愛される能力だったり、彼との繋がりだったり。
それで赤也を憎むのは筋違いだと痛いほどわかってるんだけど、それでも英語のノート貸して!って泣きついてくる赤也の顔をビンタしたくなることはあった。恋をするというのは厄介なものだ。自分にこんなにワガママな面があるなんて知らなかった。知りたくなかった。
彼は赤也に恋をした。それが当然だと言うように。赤也はその想いを受け入れたのかはわからないけど、放課後の教室で彼等が顔と顔を近付けておしゃべりしているのを見てしまった。夕焼けのせいで彼等の表情は読めなかったけど、それはとても美しい光景だった。男同士なんて気持ち悪いとは不思議と思わなかった。
きっと赤也は彼を受け入れるんだろう。
幼なじみが道を踏み外そうとしているというのに、わたしはそれをただしてやることが出来ない。赤也もただされることを望まないだろう。赤也はきっとたくさん悩んで、それで出した結論がこれなのだから。

赤也と彼は家が近い、らしい。つまりわたしと彼も家が近いという事だ。だから何も考えなかった。赤也と彼がキスしているのを見てしまった。彼はわたしに気付いた。赤也はちょうどわたしに背を向ける形になっている。その場に縫い付けられたように足が止まってしまったわたしと目が合った彼は、キスを一度中断して赤也に見えないように唇に指を立てた。内緒にしてという動作だった。
カアッと顔が赤くなったのがわかった。回れ右をして走った。

彼は次の日わたしの元へやってきた。わたしが誰にも言う気が無いことを告げると彼はホッとしたように笑った。彼の笑顔を見るのは初めてだった。彼はありがとうと言った。彼にお礼を言われるのは初めてだった。
わたしはそこでやっと初めて彼等を肯定することが出来た。二人を応援したいとさえ思った。
貴方が好きでした。だから頑張って。
彼はコクリと頷いて、赤也の元に行った。だから、赤也、そんなにわたしを睨まなくても取らないってば。


「さっき何話してたわけ?」
「内緒ー。」



End






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