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「赤也。」
「ん、」

名前(男)が俺に何回もキスしてくる。
俺はそれに応えようと必死になっているけど、名前(男)は憎らしいほど余裕のある顔をしている。ように見える。
実際名前(男)の態度は余裕なんてものとは程遠いんだろうけど、そんなことを考える余裕が俺には無かった。

「どうしよ、もう俺死んでもいい。」

重いっつーの、と思いながらも、背筋がゾクゾクするほどの喜びを俺は確かに感じていた。
そのまま名前(男)が俺をきつく抱き締めてきたので、俺も隙間を埋めるように名前(男)にしがみついた。

さて、俺が告白した後はどうなったのかといいますと、話は1時間ほど前に遡る。




名前(男)はポカンと口を開けて俺を見ている。おい、その顔イケメンが台無しになるからやめた方がいいぞと思ったもののそんなことを言える空気ではない。でも、だが、しかし。

「…………何か言えよ。」

元来おしゃべりな俺はこの沈黙に耐えられない。ドキドキはもちろんしているので、名前(男)の顔をまっすぐ見ることが出来ずに下を向いてしまった。

「花火マジック…?」

長い沈黙の後、ようやく名前(男)が言葉を発したかと思えばそんな一言だった。

「んなわけねだろ!ふざけんな!」
「…だって、え、ホント…?」
「…別に嘘にして欲しいならそうするけど?」
「いや、違くて、あーもう俺何言ってるんだろ。」

珍しく名前(男)は混乱しているみたいだった。せっかくだからよく目に焼き付けておこう、と顔を上げるとこっちをまっすぐ見ている名前(男)と目が合った。

「…ね、赤也、もう一回言って。」
「やだ。」
「お願い。」
「やだってば。」

さっきの「好き」でなんかもう色々使い果たした俺に、もうその言葉を言う気力は残ってないわけだ。

「じゃあ触っていい?」
「…それならいいけど。」

名前(男)がこっちに手を伸ばしてきた。顔を包み込まれて、名前(男)の手が冷たいことに気付いた。

「赤也、好き。俺も赤也のことすっげー好き。…どうしよ、すげー嬉しい。」

少しだけ震えている名前(男)の声を聞いてさらに心臓の音が増した。

「わ、」

キスされんのかと思ったらデコとデコをくっつけられるだけだった。
…正直、こっちのほうがドキドキするんだけど。名前(男)の顔めっちゃ近いし。

「…俺さ、すっげー悩んだけど、でもやっぱ名前(男)と一緒にいたいんだ。」
「うん。」

緊張をごまかすために話し始めた。でもなんかもっと恥ずかしいこと言いそうな気がした。

「だから、その、何つーか…。」
「赤也、」

ごにょごにょと言葉にならない言葉を話していると名前(男)が静かに声を出した。

「……赤也、ありがとう。俺を好きになってくれて。」

……その言葉を聞いた瞬間に、何かもう俺コイツホント好きだと思った。つーか、ぶっちゃけムラムラした。名前(男)は確かにイケメンだけどそれだけじゃなくて、ちょっと変なトコもあるし色々残念だけど、それでも好きだと思った。

「………好きだよ、スゲー好き。」
「うん。俺も。」

こうして俺と名前(男)は無事に結ばれたわけだ。


そんで、今に至る。名前(男)の家で2人だけど打ち上げみたいなことをして、結局名前(男)の家に泊まることになった。

病み上がり(つーかホントに治ったか微妙)なんだけど、どうしても帰りたくは無かった。

この勢いならぶっちゃけヤれると思う。つーか、想いが通じ合った(とか言うとスゲー恥ずかしい)今となっては、名前(男)にムラムラしかしないわけだ。くっついてるこの体制もけっこうヤバイ。
さっき飯食った時も名前(男)の料理してる姿になんつーか欲情したし。俺大丈夫か。

「赤也、お風呂入る?風邪の後だからシャワーの方がいい?」

名前(男)が思い出したように言った。あぁ風呂か、確かに風邪ん時は風呂入るなってよく言うよな。

「なんなら一緒に入る?」

名前(男)が悪戯っぽく笑った。きっと俺が「もうバカバカ!」ってなる反応を求めてるんだろうな、とは思ったけど。

「いーよそれでも。」

名前(男)と同じくらいニヤニヤした顔を作ってやった。


END







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