VS 謙也



マネージャーというのが大変なのは理解出来た。テニス部が頑張ってるのも理解出来た。ただ俺はあの時の頭の痛みを忘れてはいない。部費削減してやるわ、絶対!!ちゅーか犯人誰やねん!!



「苗字、少しは慣れたんか?」

今日一日コートを走り回っていた苗字に声をかけた。苗字は俺に気付くとニカッと笑った。

「まぁなー!」

さて、俺は苗字に謝らなければならないことがある。苗字がマネージャーになった原因、つまり苗字の頭にボールを当てたのは俺!ということだ。
いつもの俺ならすぐに謝るけどもタイミングを逃してしまいなかなか言い出せずにいた。
白石やらユウジやら、苗字を気に入ってる奴は多いから苗字が一人になった今がチャンスなのだが。

……だが。

「苗字、最初に言うてた、あの、頭大丈夫か?」
「喧嘩売ってるん自分。」
「ちゃうわ!その、ボールぶつけて……、」
「あぁ、アレな。まぁ大したことは無いんやけど。」
「病院とか行ったか?頭やから何かあったら…。」
「大丈夫やろ!あ、でも犯人見つけたら絶対しばくわ!」
「……………さよか。」

やばいまだ超怒ってるやーん!!
ああヤバイ。これはさっさと謝ってしまった方がええわ、と判断した俺はサクッと謝罪することにした。

「………すまん!」
「?!」
「自分にボール当てたん、俺なんや!」
「は?」
「言うタイミング逃してしもて、…そんで、」
「何や自分かぁ。」
「ホンマゴメンな。」
「えーよえーよ。」

苗字はまたニカッと笑う。俺がホッとしたのも束の間、

「何て言うかアホ!!」

思い切りハリセン(どっから出したんや!)で殴られた。

「ほんならさっさと言えやアホ!」
「す、すまん……。」
「謝罪だけかー?俺に何か誠意ある態度見せんかい。」
「あ、明日昼飯奢るわ!」
「明日だけか?」
「こ、今週いっぱい!」
「ん、ほんならええわ。」

苗字は満足そうに笑うとそのまま立ち去って行った。

「か、カッコエエ……。」

思わずその背中に惚れそうになったのは内緒である。


END







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