VS 財前
ユウジに睨まれていたような気がしたので小春にユウジが何か言っていたか聞いたけど曖昧に笑われただけだった。……何やねん。
「俺、アンタのこと認めてへんから。」
第一声がそれ。明らかに喧嘩腰な自覚はもちろんある。
でも俺は正直気持ちが悪かった。急に入ってきて一日で平部員もレギュラーも虜にするとか、どんなチートやっちゅーねん。
「……おお?」
言われた苗字名前(男)は驚いたように返事をした。そらそうか、と思ったけど特に謝る気も無いし訂正する気も無い。
「…そういうことで。失礼します。」
言いたいことはあれだけだったのでそこで踵を返して部室に行こうとした。
しかし、
「あー!!せや、思い出したでー!」
「…は?」
「自分図書委員の子ぉやろ!火曜日の放課後にいっつも本整理してる。」
「な、…何で知ってんねん。」
「俺は本とか読まへんけど、会議で使う資料も図書室にあるからよぉ使うんや。自分が資料も整理してくれてたやろ?」
「………。」
本の整理は確かに委員の仕事だけど、資料の整理は管轄外だ。でも割と潔癖症な俺は散らばったままの資料をそのままにして置けなかった。まぁええやろ、と思って出来る限り整理整頓していた。
「前見かけてな、お礼言いたかったったんや。」
「……そらどうも。」
俺は誰かに礼を言われるためにそうしたわけではないのに、何故だかとても嬉しかった。
「ちゅーかアレやろ?自分『財前』やろ?」
「え、」
「よう健ちゃんが話すんやでー、『おもろい後輩がおる』って。」
「副部長が?」
「せやで。ほな頑張ってな!」
………初対面であんな態度取って、嫌われて当たり前なのに何であんな風に笑ってんねん。
…何やあの人。
「…絶対認めへんから。」
タオルで顔を拭いたのは汗を掻いたからで、決して赤くなった顔を隠すためでは無い。
END