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「おい、危ねーなぁ。」
「………。」
「名前(男)?」

袋の口がしっかり閉じてあったからいいものの、一歩間違えたらゴミ散乱だぞ。と言おうとはしたんだけど、名前(男)が無反応なので気になって覗き込んだ。

「………赤也。」
「な、何だよ。」
「俺を殴って。」
「うん、まず落ち着け。」

名前(男)がおかしくなった。いやおかしいのは前からか。……更におかしくなったと言う方がいいかな。

「赤也が犯罪的に可愛い…。」
「…キモイ。」

マジでどうした名前(男)、と思ってさっきの自分の言葉を反芻する。えーっと、確か名前(男)は名前(男)だからいいんだっつーのって………、

あ。
何すっげー恥ずかしいこと言ってんだよ俺…!

「…早く捨てに行こうぜ。」
「…うん。」

お互い微妙に顔が赤い気がする。何だ俺等。

回収所まで行くとそこには幸村部長と柳先輩がいた。

「あれ、どうしたんスか?」
「しっ。」

先輩の指した方向を見てみると、真田副部長と女の人がいた。二人でゴミ捨てに来たみたいで、女の人が一生懸命副部長に話しかけてる感じだった。

「で、何で二人は覗いてんスか。」
「面白いから。」
「データのためだ。」

何て奴等だと思ったけど余計なことを言ってとばっちりを食らうのはご免なのでさっさと目的を果たしてしまおうと思った。名前(男)もいるし。

「名前(男)、いいから捨てに行こうぜ。」
「あ、うん。」

柳先輩はじいっと名前(男)を見ている。(…いや、目閉じてるけど多分見えてるはず)
名前(男)はぺこりと会釈をすると俺と歩き出した。真田副部長の邪魔をしない為に別のゴミ捨て場まで行くことにしよう。名前(男)も同じ考えらしくって、ここからわりと近いゴミ捨て場に向かって歩いていた。

「テニス部の先輩って意外と野次馬なんだね。」
「ん?まぁ相手が真田副部長だしな。知ってる?あの老け顔の……、」
「あぁ真田先輩?風紀委員の先輩だから知ってるよ。」
「へー………ってお前風紀委員だったんだ。」
「ひどいなー、その辺把握しといてよ。」
「いや、名前(男)のイメージだと図書委員とかかなーって。」
「去年はそうだったよ。今年もなりたかったけど……さ…。」
「何だよ。」
「なれなかったってだけ。」
「嘘つけ絶対何か隠してるだろ。吐け。」
「嫌。言ったら赤也多分怒るもん。」
「もんじゃねーよ!怒らねーから!」
「ホントに?」
「当たり前だろ!」
「…去年、俺が当番の日だけ貸出しが集中して一般生徒が迷惑したから、先生に今年はなるなって言われた。」
「…は?」

どういうことだ?!
…コイツそこまで人気だっけ?せいぜい廊下でちょっとキャーって言われるくらいで、そんな図書室に殺到するようなファンとかいたっけ?
テニス部の先輩達のが過激なファンが多いと思ってたんだけど。

「いや…何て言うか、去年は今よりずっと無口だったから、多分他の人と接する機会がそこしかなかったんだよね。」
「……あー。」

なるほど。名前(男)とお近づきになれるとしたらそこしかなかったわけか。だから図書室に人が殺到するのかー、そっかそうだよなー。…………うぜえ!

「赤也怒ってんじゃん!」
「怒ってねーよ!ただ胃がムカムカするだけだっつーの!」
「それが怒ってるって言うんだよ…。」
「どうせ名前(男)の顔しか見てないんだな。確かに名前(男)はイケメンだけど。そういう女うざいな。」
「……え、そっち…?!」
「は?え?」
「いや、別にいいんだけど…。」

名前(男)は何か難しい顔をしてたけど特に何も言わなかった。
…何だよ。

「にしても、文化祭ってこんな準備大変なのな。」
「ね。去年はもっと簡単な感じだったし。」
「俺んトコもそんな感じ。やっぱ1年だったしな。」
「赤也のおかげだよ。」
「え?」
「去年は俺、周りから凄く遠慮されてたんだ。今年忙しいのは赤也が俺にあの時声かけてくれたから。」
「……何だよ。嫌味か?」
「違うよ。赤也、ありがと。」
「あーもうやめろよ恥ずかしいなぁ!」

名前(男)にまっすぐ見られるとめちゃくちゃ恥ずかしい。名前(男)はいつも人の顔をじっと見つめてしゃべるから、端正な顔立ちを正面から見なきゃいけなくなるんだ。
…女のコが好きになるのもわかる気がする。

あー…何か今無性に抱きつきたい。

「ふう、戻ろうか。」

いつの間にかゴミ捨て場に着いていたらしい。ゴミ捨てを終えて戻ると教室の中はけっこう出来上がっていた。

「すっげーなぁコレ。」
「だろ?」
「お前さっきサボってただろ!」

アハハと笑い声が起きる。青春だな!


「あ!苗字くんちょっとこっち来て!」
「え?」

名前(男)が女子に呼ばれた。調理場の壁の高さをチェックするらしい。

「名前(男)くん背高いね。これなら余裕かな。」
「腰あたりまでしか壁無いけどいいの?」
「うん、この方がよく見えるでしょ?」

女子がさりげなく名前(男)の腕に触れた。名前(男)も特に嫌そうな顔はしていないし。何だよお前。

……あー、こんなんで嫉妬とかどんだけだよ。つか付き合ってねーし。俺こんな女みたいな思考回路してたっけ。気持ち悪いな。

時計を見ると1時ちょい前だった。昼休みは各自で適当にはさむらしいから、一段落したら名前(男)と飯食べに行こう。


End







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