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名前(男)の上に馬乗りになる。何だか俺が押し倒してるみたいだとぼんやり思った。何だか急に気分が良くなった。いつも俺が受身になるばかりだったから、たまにはこういうのも悪くない。
「…さて、名前(男)はドコが感じるのかなー?」
ぺろりと自分の唇を舐め上げながら言う。俺多分今すげー悪い顔してる。
「赤也ぁー、本気?」
「当たり前だろ。」
「ちょっと心の準備とか、」
「俺にはそんなんさせてくれなかったくせに。」
名前(男)がうっと詰まった。名前(男)の服をぐいっと上に持ち上げてやわやわといじっていく。確か前こんなことされた気がする。
「男でも胸って感じんの?」
「……さぁ。」
名前(男)の顔がヒクついた。何だコイツ、普段俺にどんどん押してくるのに自分がされると弱いんだ。…やっべぇ、楽しいぞ。
「ここ?こことか?」
言いながら触れていく。スゲー楽しい。
「赤也、いい加減に、」
「だーめ!人にされて嫌なことは自分もしちゃいけませんを実地でわかってもらいましょー。」
「そういうことじゃなくてさ、…って言うか一応俺は毎回了承取ってんじゃん!」
「名前(男)だってさっき了承しただろー。」
「あああもう何でこんなときだけ頭の回転いいんだよ!」
「失礼なこと言う名前(男)にはこうだ!」
脇腹をくすぐってみた。ものすごく弱いわけじゃ無いけどやっぱここ弱い人多いらしい。名前(男)がくすぐったそうに身をよじらせた。
「お?ここ弱いのか?」
「赤也ー…。」
名前(男)が力無く俺の名前(男)を呼んだ。さて、次は何をしようと考え始めた瞬間に、
ピピピピ
目覚まし時計が鳴った。
「はいタイムアップ!」
「ロスタイムはー?」
「無い無い、てか赤也のお母さん起こしに来るんじゃないの?」
「…だよなー。起きるか。」
名前(男)の上から退くと、名前(男)はノロノロと起き上がってきた。
「…元気出た?」
ちゅ、と唇にキスされながら言われた。……え、コイツ俺を励まそうとしてたわけ。…わかりにくいっつーの。
でも、やっべードキドキする。名前(男)カッコイイ。
「おはようございます。」
「あ、アラ名前(男)くんおはよう早いのね!赤也も目覚まし時計で起きるなんて…!」
「うるせー!」
母ちゃんは簡単な朝ごはんを用意すると、(もちろん普段より豪華だった)親父と自分の分のコーヒーを淹れてから親父を起こしに行った。
「朝ごはん豪華だね。」
「普段より気合い入ってるからな、多分。」
「あはは、でも美味しいよ。」
さっきまでの様子とは全然違う、いつもの大人びた名前(男)だった。やっぱりさっきは俺を元気付けようとしてたんだよな。…何か、コイツには勝てないって思う。
「俺と同じ時間に出るんでいいの?」
「一回自分の家帰るからいいや。」
ということで、早朝の道を二人で歩く。人影はまばらで、手とか繋いでも誰も見てないだろうなって感じでって俺何考えてんだキモイ!!
「明日は文化祭前日準備だね。」
「あーもうそんな時期か、早いな。」
「テニス部は何やるの?」
「丸井先輩のごり押しで食べ物屋。ケバブっつー奴売るらしい。」
「へえ、美味しそう。」
「味見したけどめっちゃ旨かったぜー、買いに来いよ。」
「うん行く。」
「って言うか、誰と回るか決まったわけ。」
「クラスの人が何人か声掛けてくれたし、男女数人で回ることになりそう。」
「…ふーん。」
「って言うか、赤也もそのメンバーに入れられてたよ?」
「は?!初耳なんだけど!」
「でもそれでいいよね?」
「…まぁ、いいんじゃね。」
いつの間に決まったんだよ!と言いたい。俺聞いてねーぞ。
まぁ名前(男)と回れるわけだし、俺がいない間も名前(男)が一人になることはなさそうだし、いっか。
END