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ふわふわしてる。何だここ。

「赤也。」

誰かが俺を呼んだ。振り向くと男の人が立っていた。

「名前(男)?」

俺の知ってる名前(男)より10歳くらい年上に見えた。でもこの人が名前(男)だと確信出来た。

「赤也、よく聞いてね。赤也は今重大な過ちを犯そうとしているんだ。」
「は?」
「古来から男と女が愛し合うのは当たり前だろ。男が男を愛するなんて罪だ。許されることでは無い。」
「…お前がそれを言うかよ。」
「俺は後悔してるよ。」

ズキッと心臓に痛みみたいのが走った。何だこれ。何でこんなに痛いんだ。

「罪を犯してはならない。」
「お前もわかるだろ、一生後悔するぞ。」
「今ならまだ……。」

四方八方から名前(男)の声が響く。耳を塞いでも直接頭に入ってくる。

「や、嫌だ、俺はそれを聞きたくない!」



「赤也!」

パチッと目を開けた。見慣れた天井に覚えのあるベッド。ここは俺の部屋だ。

「赤也?どうしたの?」

名前(男)が心配そうに俺を覗きこんできた。あぁそうだ、昨日名前(男)は俺の家に泊まったんだっけ。

なら、さっきのは夢か。
そう気付くとひどく安心した。と同時に、俺は心のどこかで不安に思ってることがあるんだとわかった。
俺は名前(男)が好きだ。でも、それに対して罪悪感を感じている。

『俺は後悔してるよ。』

名前(男)の言葉が頭に残っている。心臓は妙にバクバクしていて、背中にじっとりと嫌な汗をかいているのがわかった。

「赤也…?」

反応を示さない俺を不安に思ったのか名前(男)が再び声をかけてきた。

「悪い、夢見が悪くて。」
「大丈夫?うなされてたよ。」
「あぁ。」
「悪い夢なら話した方が良いよ?」
「…あんま内容覚えてねーからいいや。」
「そっか。…二度寝するにも微妙な時間だけどどうする?」

わざと話題を変えてくれた名前(男)に感謝しながら時計を見る。普段起きる時間(いや起きようと思ってる時間…?大体寝坊するし)の30分前で、二度寝したら確実に寝坊するけど何もしないにしては長い、中途半端な時間だった。
それにこんな状態で二度寝なんか出来るわけが無い。目はすっかり冴えている。

「…ちょっと、このままでいさして。」

名前(男)にぎゅうっと抱きついた。寝起きだからか名前(男)の髪は少し寝癖がついていたし、何となく瞼も重い気がする。でも名前(男)の匂いがして凄く落ち着いた。

名前(男)は俺の背中に手を回すとポンポンと優しく叩いてくれた。…お前は親かっての。

ストレスを解消する方法の一つに、誰かに抱き締めてもらうっていうのがあるって柳先輩が言っていた。ストレスじゃなくても、不安とか苛立ちとかそういうマイナスな感情を無くすには誰かに抱き締めてもらうといいって。
聞いた時はんなわけねーだろと思ったけど、今ならわかる。すっげー安心する。

「…落ち着いた?」
「……ん。」

耳元で名前(男)が囁いた。くすぐったい、と身をよじると名前(男)は気を良くしたのか右耳に唇を寄せてきた。

ちゅぱ、と耳をふさぎたくなる水音がした。右半身だけぞわぞわしている。

「名前(男)!」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ、やめろって。」
「や。」

一文字で会話すんな、と思った。でもそんな余裕がなくなってきた。耳やべぇ。

「赤也って耳弱いんだね。」
「うるせー。」

ニコニコしながら耳にキスする名前(男)は寝起きだから声が掠れ気味で、それが余計扇情的っつーか何つーか。

「いい加減にしろっ。」

グイと強引に顔を遠ざけると名前(男)は不満そうな顔をしてきた。…何だよその顔。
仕返しのつもりで俺も名前(男)の耳にキスをした。
名前(男)にされたように耳たぶをくわえて、奥まで舌を這わせようとしたけど、名前(男)が肩を震わせはじめたので止めた。

「何だよ。」
「いや、赤也が可愛くて。…俺、耳じゃそこまで感じないよ?」
「じゃあどこなら感じるわけ?」
「さぁ?探してみる?」

名前(男)はだらんと四肢を投げ出して横になった。
ムカッときたので名前(男)の性感帯を探すことにする。

とりあえず上からだ、と思って首にキスした。

「ここ、か?」
「わかんない。」
「は?」
「他の人に触らせたことないからわかんないよ。」
「何だよそれー!」
「まぁ、探してみたら?」

多少投げやりに言われたものの、名前(男)は明らかに動揺している。何でかって、多分これから俺にあちこち触られるから。
俺は俺で、他の人に触らせたことない発言に少し安心してたりする。


END







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「見えない臓器の名前は」
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