VS 千歳



俺の傍から離れるなとか言ったくせに全く動かなくなってしまった白石に代わって副部長の健ちゃん(知り合いなんや!)に千歳を探してくるよう頼まれた。千歳っつったらアイツやろ、あのデッカイ………デッカイ奴やろ。



今日は天気も良く、風もそこまで吹いていない。明らかに部活日和だ。
そんな日は勿論昼寝日和でもあるので、俺は部活に出る気は無く裏山で惰眠を貪ることに決めた。

お気に入りの木の下に横になるととても気分が良い。今日は最高の日だ。

ガサガサッ

……最高の、…?


何気なく上を見上げるとそこには見事としか言い様が無い蜘蛛の巣が張っていた。
…巣だけなら良いのだが、もちろん本体もいる。というか、超デカイ。

「…………ッ!!!!」

蜘蛛が大の苦手である俺は驚きのあまり声が出なくなった。
蜘蛛は細い糸を伝ってツーッと降りてきた。
………俺の方に。

ヤバイどうしよう気持ち悪い。

思わずヒクッと喉が鳴る。蜘蛛との距離はわずか数10cm。風が吹いてきたら俺と接触するだろう。

「ちーとーせーくーんー。」

そんな時、間延びした声が聞こえてきた。一体誰かを考える暇も無くブンブン手を振った。

「お?どないしたん自分、って何やその蜘蛛めっちゃデカイな!!」
「ちょ、助けてくれんね!!」

情けないとは思うが蜘蛛を撃退するのが先だ。

「んー、ちょお待ってなー。」

その人はどこからともなく枝を持ってくるとそのままその枝に蜘蛛を乗せた。

「とりゃっ。」

そんな掛け声と共に蜘蛛が乗った枝を遠くに投げつける。
その見事な動きに思わずおーっと歓声を上げるとその人は俺の方を向いてニッコリ笑った。

「もう大丈夫やで!」

その邪気の無い笑顔に思わず胸が高鳴る。この人は誰だろうか、と思った。

「なぁなぁ、自分千歳千里、っちゅー奴知らん?」
「へ?」
「探してくるよう頼まれたんやけど、どこにもおらへんねや。」
「あ、…俺たい、千歳千里は。」
「ホンマに?」
「おう。」
「あ、俺苗字名前(男)っちゅーんや、よろしゅうな!何かようわからんけど今日からテニス部のマネージャーやらされることになってん。んで自分のこと探してくるよう頼まれたんや!」
「ほ、ほんなこつ?」

いきなりでイマイチ頭がついて行かないが、この人は苗字名前(男)と言うらしい。それだけは頭に入った。

「ほんなら部活行こか!」

サボっていた俺を責めることなく、手を引かれて立たされた。

な、何ねこん人、
……むっちゃかっこ良か…。

蜘蛛との遭遇からドキドキしっぱなしだった心臓がさらに高鳴った気がした。


END







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