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何このアウェイ感。
ここ俺ん家なんですけど。
「名前(男)くんは彼女とかいないのー?」
「今はいません。」
「ホント?!ちなみに参考までに聞くけど年上って好み?」
「あんまこだわりは無いですかねー、」
姉貴、そんな欲望丸出しで話しかけるな。悲しくなるだろ。お前年上が好きとか言ってただろ。
「にしても惚れ惚れするほど男前よねー。」
「あはは、ありがとうございます。」
母ちゃんも韓流スターでも見たかのようなはしゃぎっぷりはやめてくれ。
「ちょっと母ちゃんに姉ちゃんも名前(男)が困ってるだろ、いい加減にしろよ。」
ここで空気の読める男である俺は話に強引に入る。だって名前(男)困ってんだもん。
「何よ赤也。……っていうか、二人ってどうして仲良くなったの?」
「え?」
話を中断されて不満げな姉貴が聞いて欲しくないことをズバッと聞いてきた。
ホントの理由言ったらかなりまずい気がする。だって俺と名前(男)が仲良くなったきっかけって罰ゲーム………、だったよな。それから同じバンドが好きで話が弾んで、わけわかんねーうちに告白されて今に至る、と。
名前(男)と(てきとーに口裏合わせとけ)と目で会話する。
「んーたまたま席が近くになって話すようになってー、そんくらいかな、あんま覚えてねーや。」
「たまたま同じバンドが好きで趣味が合って、って感じです。」
「そうそう。」
「ふうん……。」
姉貴が目を細めた。何その顔。嘘はあんま言ってねーからな。
これ以上追求されたらボロが出そうだから話を切り上げることにした。
「名前(男)ゲームする?俺の部屋行こうぜ。」
「あ、うん。これ流しに置いて平気ですか?」
「ええ。」
立ち上がった拍子に食器を下げる。そういや俺は食べたら片付けなさいっていっつも言われてたな。
「てきとーに座っていいから。」
俺の部屋は相変わらずきれいに片付いてるとは言いがたいけどまぁ普通か。名前(男)はベッドに腰を下ろした。
「この部屋、赤也の匂いがする。」
「お前そういうの普通に言うなよ…。」
「だって超落ち着くんだもん。」
名前(男)は何を思ったか俺のベッドにごろんと横になった。
「…お前人のベッドで何してんだ。」
「んー…赤也の匂いがするー。」
「変態か!」
名前(男)を起こそうとして肩に触れたらそのままぐいっと引っ張られて俺もベッドに横になってしまった。
「何してんだお前。」
「抱き枕ー。」
「抱き枕ーじゃねぇよ!」
「…赤也はいいね。」
「は?何が?」
「家に帰ったらご飯ができてて、お母さんがいてお姉さんがいて。赤也の部屋のベッドもちゃんとベッドメイクされてんじゃん。」
「………。」
「うらやましー。」
名前(男)はわざと間延びした感じの声を出した。
「……お前ん家ってどうなってんだよ。」
「んー……。」
名前(男)は曖昧な返事をした。話したくないってか。あぁそうですか。
END