くびったけ!



「名前(男)ってどんなカッコ好き?」

今日初めておじゃました一氏家で、ユウジは大量の服と小道具を手にそう言った。


ユウジと付き合いだしたのは一ヶ月前。
もともとどーせいあいしゃ(まぁ言ってしまえばホモだホモ。)だったらしいユウジにロックオンされた俺は、紆余曲折を経たものの今やユウジにメロメロだった。

ユウジはツンデレ具合がやばい。小春に対してはひたすらデレデレだったけど、ユウジの本質はどっちかっていうとツンデレだと思う。え?俺に対してだけ?それはそれで可愛いからよし。

ユウジは好きになったものはとにかくひたすらに愛を注ぐ生き物だから、俺愛されてるなぁと思うことが多々ある。二人きりでデレた時のユウジとかマジでやばい。超やばい。いい意味でやばい。

「どんなカッコって?」
「これやこれ!」

ユウジが持ってきた服はパーカーとかタートルネックみたいな普通の服から、コスプレ用かと思われる和服や燕尾服まである。

「え?メイドさんとかナースとかそういうのは、」
「アホ!何で女装やねん!やっぱ女がええんか?」
「いやそうじゃなくてそういうのを着たユウジが見たいっていうか。」
「…とにかく!名前(男)が好きな系統の服が知りたいねん!あと俺も名前(男)に俺が好きな服着て欲しいんや!」
「あーなるほど。」

つーかユウジめっちゃ服持ってるんだな、そういえば親父さんがデザイナーだって言ってたっけ。

「あ、これなんかいいんじゃない。」
「それは小春に着せる用やからダメや!」
「えー…。じゃあこれ。」
「それはこの前映画行ったときに着とった奴やん!何でまた着なアカンねん。」
「こっちなんかどう?」
「自分はホンマにそのよくわからんサイケデリックが俺に似合うと思うんか?」

…ユウジはかなりおしゃれだから、判定に厳しかった。

「もうわかんねーよ、じゃあユウジは俺に何を着て欲しいの?」
「こ、コレ!」

目をきらきらさせながら(フィルターかかってると思うけど)ユウジが差し出してきたのはスーツだった。スーツっていうか、タキシード…?

「仮面とか被ったほうがいいの?」
「何でタキシード仮面意識してんねん。そのまんまでいいから着替えて。」
「…えー…。」

言われるがままに服を脱いでタキシードに袖を通す。着替え終わるとユウジはにんまりと笑って俺の髪をセットし始めた。

「おー!!新郎名前(男)や!」

オールバックにされた俺は(笑いたいだけ笑うがいいさ)ユウジにげらげら笑われながら抱きつかれた。

「じゃあユウジ花嫁やってよ。」
「アホ、俺男やん。」
「いいじゃん、コレ着て。」

漫才用かもしれない白いジャケットと白いズボン。それにでっかい蝶ネクタイがついてたけどそれだけ普通のネクタイにしてしまえば結婚式の服装にも見える。

「ユウジはサラサラのくせに癖ッ毛だからセットしなくていっか。」
「何でもええよ。」

雰囲気出そうとカーテン閉めて、ちょっと綺麗なテーブルライトを照らす。
小道具やけど、と100均のワイングラスを持ってきたユウジが照れくさそうに笑った。
じゃあ気持ちワインな、ってことでぶどうジュースをそれに注いだ。

「えーっと、病めるときも健やかなるときも…なんだっけ?」
「知らん。ちゅーか何やねんこれ。」
「擬似結婚式ー。」
「アホやー!」

くすくす笑ってジュースを飲み干す。

「……俺等、いつまで一緒におられるかな。」

ユウジがぽつりと呟いた。

「ずっとだろ?」
「…ずっとってどんくらい?」
「んー、まず高校行くだろ、んで俺は大学行きたいし。それで就職して、おじいさんになって退職して、それからもずーっと。」
「……一生?」
「うん、一生。」

にへらと笑って答えるとユウジは呆れたような顔をした。
だって俺、物事は深く考えないタチだし。深く考えて上手く行く事なんか一個もねーじゃん。

「……呆れた?」
「かなり。でも、好きや。」
「うん、俺も。」

今が幸せならそれでいーじゃんって思うわけだよ、俺は。


END


「っていうか、こんだけ色んな服あんならもうちょい着替えたりしようよ。」
「せやな!名前(男)何着て欲しい?」
「あ!この牛柄のパーカー可愛い。」
「……自分やっぱセンスおかしいと思うで。」








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