VS 白石
マネージャーという言葉の持つイメージ的に、元気いっぱいの女のコとかが想像されると思う。何で俺やねん!確かに元気が有り余っとる自覚はあるけど!俺は一人でテニスコートに向かって歩いていた。非常にイライラする。やって意味わからんわ!何やねんテニス部!俺の敵や!!
「遅い!」
「生徒会やったんや!」
「次からは気ィつけてな。ほな、仕事紹介するわ。まず部員のデータ管理とドリンクの補充、それに部室の掃除と洗濯はやってもらうで。それから休日は他校の練習試合を……、」
「一気に言わんで!頭パンクするわ!」
「……自分、ホンマに生徒会の仕事こなしてるん?」
「失礼な奴やな!……まぁ、こなして……る…で?」
「ホンマに?」
「………………。」
「まぁ追々覚えていけばええわ。」
「悪いなぁ。」
何でか謝ってくる苗字に心が痛まなかったわけではない。でも、苗字をテニス部のマネージャーに出来たのは俺にとって大きなチャンスだった。
苗字名前(男)は俺の想い人である。前に逆ナンされて困っていたときにさらっと助けてもらって一目惚れしたのだ。
「自分カッコイイんやから逆ナンされた時の断り文句くらい考えとき。はっきり断らんとああいう子達には通じないで?」
そう言った苗字はとてもカッコ良く見えた。学校で再開した時にこれは運命だと確信したのだが。
「……?どこかで会うたっけ?」
彼は俺のことをすっかり忘れていたのだ。それからどうやってお近づきになろうかと考えていたところにこのビッグチャンス。苗字を落とすなら今しかない。
「じゃあ今日は慣れてもらう為に俺と一緒におってな?絶対やで。」
「お、おう。」
職権乱用、卑怯者、何とでも言うがいい。
「何や苗字って呼びづらいから名前(男)って呼んでええ?」
「構へんでー。」
「あ、じゃあスコアの取り方教えるな、」
さりげなく近寄り名前(男)の手元のバインダーを覗き込む。
名前(男)は俺とあまり変わらない身長だからやりやすい。
近寄った時に名前(男)の髪からはシャンプーか何かのいい匂いがした。
「自分シャンプー何使てるん?」
「んー、オカンが買ってきた奴やからようわからんわ。」
「ええ匂いすんな。」
「何や自分変態くさいで。」
「やかまし。」
「ちゅーか、」
名前(男)が俺の首元に顔を埋めてきた。
「白石もええ匂いするやん。」
ニッと笑う名前(男)に心臓ぶち抜かれた。
「なんなんその顔。」
「じ、自分それ俺以外の人にやったらアカンからな!!」
名前(男)ってなんなんホンマに。
あー、アカン、絶対落とそ。
そう俺が心に決めたことも知らずに名前(男)は第二波を放つ。
「白石って照れた顔もイケメンなんやな。」
……K.O。
なんちゅーか、もう、俺の負けでいい。コイツ大好きだ。
END