こころはきまぐれ
「名前(男)くん名前(男)くん名前(男)くん名前(男)くん!」
「うるせえ!何回も呼ぶな!」
名前(男)くんってホントにカッコ良くて可愛いと思う。
この俺がテニス以外でがむしゃらになったのは凄く久しぶりだった。でも名前(男)くんのことを凄く好きになって、それで今も傍にいられるなんて凄くラッキーだと思う。
今日はテスト勉強という名目で名前(男)くんのお家にお邪魔した。名前(男)くんのお母さんは凄く優しそうな人で、てっきり厳しい人なのかと思ってたからびっくりした。
「名前(男)と仲良くしてあげてね、あの子人見知りだから。」
うん、それは同意するけど。
名前(男)くんのお部屋はやっぱりというか何と言うかシンプルな感じで、ベッドと机と本棚があるくらいだった。
「お邪魔しまーすっ。」
部屋に入ってまずベッドに腰掛けようとすると蹴られた。
「痛いんだけど!」
「てめえいきなりベッドってどういう了見だ。テスト勉強、だろ?」
「でも少し息抜きしてからにしようよ!」
「ふざけんな。南に頼まれてんだよ。『ウチのバカをどうかよろしく頼む』ってな。」
「南ひどい!っていうか何で名前(男)くんと南がしゃべってんの?!」
「去年同じクラスだったから。」
「ひどい!俺という彼氏がいながら他の男としゃべるなんて!」
「誰が彼氏だ。」
「え?!」
「は?」
本気で驚いた顔をする名前(男)くんに嫌な予感がした。
「えーっと、俺たち付き合ってる…よね?」
「付き合ってねーだろ、何言ってんだ。」
「だって俺は名前(男)くんが好きで名前(男)くんは俺が好きって言ったじゃん?!」
「好きだとは言ったけど付き合うとは言ってねーだろ。」
好きなことは否定しないんだ、と一瞬嬉しくなったけどちょっと待ってよ!確かにそうだけど!でも事実上付き合ってるって言うかさぁ!
「大体、まだ学生なんだから付き合うとか付き合わないとかは早いだろ。」
…堅いよ!名前(男)くんのそういうとこ超好きだけどやっぱり堅いよ…!
「…でも、好き同士なんだから付き合ってもいいじゃん!年齢は関係無いよ!」
「…………いや、そうかもしんねーけど、」
「だったら…!」
「お前のこと確かに好きだけど、付き合いたくは無いし。」
さくりと心に何かが刺さった。好きだけど付き合いたくない?意味わかんないよどういうこと?
「な、何で?!」
「だって千石だし。」
「どういう意味?!生理的に無理ってこと?!」
「…………。」
「そこは否定してよ!!」
俺もう立ち直れないかも。何かもう泣きそう。
そう思って名前(男)くんのベッドの中に潜り込んだ。
「おい、」
「…………。」
「おい!」
「……………。」
「千石!」
「………………千石じゃないもん。」
「はぁ?!」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「………清純。」
ガバッと起き上がった。名前(男)くんはやれやれと言った表情で俺を見ている。
「な、名前なんか呼んだってダメだからね!」
「何キャラだよ。」
「うるさい!ブロークンハートなんだよ!」
「……悪かったな。」
「何で付き合いたくないの?」
「…いや、男同士だし。」
「その壁は乗り越えたんじゃなかったっけ?!」
「でも付き合うとなると違うだろ。」
「…俺は覚悟できてるよ。名前(男)くんを俺の両親に紹介だってできるよ?」
「……でも、実際イバラの道だろ。」
「そうかもしれないけど、でも名前(男)くんとならいいやって思ってる。」
「…………。」
「名前(男)くんは、やっぱ無理、かなぁ。」
じわっと視界が歪んだ。何、マジで泣きそうなの俺。めっちゃカッコ悪い。
「……お前は後悔しないわけ。」
「しない。」
「……じゃあいいか。」
「いいって、どっちの意味?」
「付き合うか、って意味。」
その言葉を聞いた瞬間、名前(男)くんをベッドの中にひきずりこんでた。
「えへへ、名前(男)くん超好き。」
「ハイハイ。」
ぎゅうっと抱き締めると抱き締め返してくれた。
「チューしていい?」
「…好きにしろ。」
お許しをもらって、好きにキスをする。
名前(男)くんはチラッと時計に目を遣った。
「時計気にしてる、余裕なんか、あるわけ?」
「違ぇよバカ。」
カチッカチッと時計の秒針の音がする。
「ハイ10分。」
「うえ?!」
ベッドから突き落とされて、呆けた顔をしていると名前(男)くんは参考書を取り出した。
「今日の本来の目的は?」
「名前(男)くんとイチャイチャ………テスト勉強です。」
ギロッと睨まれたので慌てて言い直す。
「甘い時間10分だけ?!」
「当たり前だ。」
相変わらずお堅い性格だけども、
「うーん、そんなとこも好き!」
「ば、ばかやろー!」
名前(男)くんめっちゃ好きだなってことで、ファイナルアンサー。
END