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「じゃ、何から聞きたいの?」

ただいまファミレス。時間が微妙だからか空いていて、一番端っこの隅に座れた。

「え…っと、彼女が出来た経緯について…?」
「あぁ……うん、じゃあ話すよ。」

名前(男)は気乗りしない様子で話し出した。

「小林さん……俺は透子さんって呼んでたからそれで統一するね。透子さんと知り合ったのは、たまたま図書委員会で同じ曜日が担当になったから。透子さんは可愛い顔をしている割に男っぽいサバサバした性格だったから話しやすかったんだ。
女のコが苦手な俺でも普通に話せるようになったときに告白された。
昔、仲の良かった女のコに告白されて振ったら次の日から無視されたことがあったから、正直断るのも怖かったし付き合うことにした。もしかしたら透子さんなら好きになれるかもしれないと思ったのもあるし。」

名前(男)は表情を少し固くした。

「最初は楽しかったし、こんな女のコもいるんだって思ったけど……。」
「…けど?」
「…昔付き合ってた人の悪口言うみたいで最低だけどさ、何ていうか、…自分で言うのもアレだけど、俺は人より顔が整ってるじゃん。透子さんにとって俺は、アクセサリーだったわけ。」
「アクセサリー?」
「…『つまんない男だけど、連れて歩くにはいいからね。』ってさ。周りの子に言ってたらしい。」
「はぁ?!何だよそれ?!」
「まぁ確かに俺はつまんない奴だったと思うから言い返せないけど。それに、俺は結局透子さんを好きになれなかったから、何も言う資格はないしね。」

何だそれ最悪じゃねーか!と思った。結局名前(男)の外見が好きになっただけで、中身を見てないだろ。名前(男)が男しか好きになれない原因の一部になったかもしんねーのに。

…と思ったところで、ふと気がついた。俺も小林さんと一緒かもしれない。名前(男)が俺とだけ仲良くしてくれることに対して感じた優越感。これって、名前(男)が言うアクセサリーって感覚と一緒なのかもしれない。

「…名前(男)はカッコイイから、そういう奴が集まってきても仕方ねーんじゃねーの。」
「え?」
「だってお前超イケメンだもん。誰だってお前が隣歩いたら多少は浮かれるっての。アクセサリー感覚ってのが全然理解出来ないわけじゃねーかも。」
「…赤也もそう思ってる?」
「……まぁ。」

名前(男)の顔からスッと表情が消えた。

……俺、いま何て言ったんだ。名前(男)が一番言われたくないことを言ったんじゃないのか。

「あ、いや…その、」
「…………そっか。……もう出ようか。」

俺の返事を待たずに名前(男)は立ち上がった。レジで俺の分の金を出そうとしたら遮られた。

そのまま無言で駅に向かって歩き出したので慌てて追いかける。名前(男)に何か話しかけようとしたけど、何を言えばいいかわからなくなった。最初に会った日と似てる。その時の俺は確か超必死で名前(男)と友達になりたいって伝えた気がする。

駅に着いても名前(男)は黙ったままだった。こんな沈黙が重いのは初めてだった。

「な、なぁ、」
「……何?」
「………ちょっとトイレ行かせて。」
「わかった。」

トイレの前で待とうとする名前(男)を無理矢理中に引っ張る。

「え?俺はいいよ?」
「いいから来いよ!」

幸い誰も入っていなかったので個室に名前(男)を引っ張り込んだ。

めっちゃ狭い。けどここなら誰にも見られないはずだ。

「……あ、赤也?」

先ほどまでの無表情を崩して呆けたように俺を見る名前(男)。

「……目閉じろ。」
「え?」
「早く!」

強引に目を閉じさせた。ここまで来たら名前(男)ももうわかっていると思う。素直に目を閉じた名前(男)にキスをした。軽く背伸びしなきゃいけないのはちょっと屈辱だった。

「…赤也?」
「悪い、その、俺、一番お前が言ってほしくないこと言ったよな。」
「………うん、まぁ。」
「つーか男が男をアクセサリーみたく思うって何だよって話だよな。でも、お前が俺にだけ心開いてるっていうのは確かに優越感感じるし、嬉しいんだ。」
「………。」
「お前の顔好きだよ。でもそれだけじゃなくて他の部分もちゃんと見てるから。」
「…そっか。俺もこの顔利用して赤也に迫ってるとこあるからお互い様だよね。……で、どうしてキスになるの。」
「……い、いや、名前(男)が喜ぶと思ったから…!」

確かにそうだ。何でただ謝らずにわざわざキスしたんだ俺!!
名前(男)はクスッと笑った。

「うん、嬉しい。めちゃめちゃ嬉しい。」
「あああもう忘れろ!」
「絶対無理。」

…でも、効果はてきめんだった。名前(男)は一発で機嫌が治ったように見えた。

「俺からもキスしていい?」
「…あぁ。」

その後何回かキスをした。名前(男)とのキスは気持ち良くて好きだと思った。


END







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