一生のお願い

財前光/女主




side boy

人間誰でも一番大事なのは自分に決まっている。君を世界で一番愛しているよだとか言って死んでいった映画の主人公を見ながら俺は冷めた気持ちで思った。
今死んだこいつだって、結局は恋人のために死んだ自分に酔っているだけだ。残された恋人のことなんてまるで考えていない。こいつのことが一生忘れられなくて、この恋人が一生一人で過ごすかもしれないのならば、わざと突き放した態度を取ったっていいはずだ。結局自己犠牲なんてただの自己満足だ。
そして今泣き崩れている恋人は、「恋人を亡くした自分」が可哀想で泣いているのだ。

そんな映画を見て涙を流す奴は、ただそれを自分の立場に置き換えて泣いているか、映画に感情移入して泣いている自分に酔っているだけ。

穿った見方をしているのは百も承知。でも俺はそれが人間の本質だと知っている。

「くだらな。」

エンドロールが流れたところですぐにDVDを消した。何で俺がこんなくだらないDVDを見ているかというと、名前(女)先輩に無理やり持たされたからだ。

『超泣けるから!財前も見てみて!』

そう言われて仕方なく持って帰った。見ないで返そうかとも思ったけれど、感想を求められたときに困るだろうと思って一応見た。それだけだ。

名前(女)先輩は俺が見てきた人間の中で一番人間らしいと思う。くるくるとよく変わる表情が好きだと思った。そんな先輩と付き合えているなんて俺は世界一の幸せ者だと思った。
しかし、俺はこの感情がいつか霧散するものだと知っていた。所詮は中学生。俺のこの気持ちも、いつか変わるかもしれないし、名前(女)先輩の気持ちもいつか変わってしまうことはわかっていた。

その日は唐突に訪れた。先輩の態度ですぐにわかる。
先輩はもう俺に対して興味がなくなっている。
その事実に対して俺は焦るとともに、やっぱりなぁとどこかで納得していた。

永遠なんて無いと知っている俺に先輩は愛想を尽かしたのだろう。あの人は夢見がちなところがある。嘘でも良いから、俺は先輩に永遠を誓うべきだったのだろうか。

先輩の背中が遠い。距離はこんなに近いのに、先輩がとてつもなく遠く感じた。

「先輩、好きです。」

俺が絞り出すようにそう言うと、先輩は一瞬目を丸くしてから笑った。

「でも財前は自分が一番好きなんやろ?」
「………はい。」

先輩はまた笑う。心がここには無いかのようにただただ笑っている。苦しい、とぼんやり思った。

「……わたしはさ、嘘でもええから、甘い言葉とか態度とかが欲しかったで。」

先輩が遠くを見つめながらそう言った。俺はそんな先輩に対して何も言えなかった。

「財前の言ってることは正しいかもしれへんけど、それでもわたしは永遠が欲しいわ。つまらんわ、そんな冷めたような顔して付き合ってても。」

先輩の表情は疲れていた。
二人で歩く帰り道は、いつの日からか非常に重苦しいものになっていた。



そんな時、だ。

「先輩ッ!!!」

信号の無い道を横断しようとした先輩に車が迫っていることに気付いた。
慌てて先輩を引っ張ると、先輩は一瞬訳がわからないという顔をしたが、車が過ぎ去るのを見て納得したようだ。

「あ、ありがとう……。」
「いや、気ぃ付けてくださいね。」
「うん。」

たったそれだけのこと。ただ、俺があと数秒反応が遅れていたら先輩は無事ではなかったかもしれない。そう思うとゾクッとした。
先輩がいなくなってしまうということは、俺がいなくなることよりも怖かった。

「……先輩、」
「あーびっくりした。まだ心臓がバクバクしてる。って、どうしたの財前?!」

先輩の表情が変わった。俺を見て驚いている。何だろうと思って自分の顔に触れると、水が手に付いた。

「先輩、いなくならないでください。俺、先輩がいなくなったらきっと死んでまう。」

誰の為でも無い。ただの俺のエゴだ。

先輩はそれを聞くと、少しだけ頬を赤らめた。

「財前がそんなこと言うとは思わんかったわ。」
「何がですか。」
「ううん、なぁ、もっと言って。」

自己犠牲なんて下らない。人間は自分のことしか考えられない生き物だ。

それでも、それでも。
俺は俺の為に、先輩に傍にいて欲しかった。

だからきっとこれは偽りでは無いのだ。

「先輩が、世界で一番好きです。」


END







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