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「先輩達こそ、二人でいるなんて珍しいッスね。」
「さっきまで柳生とジャッカルもいたんだけどな。用事あるらしくて帰ったぜ。お前はどーしてここにいんの?」
「あー、俺は……、」

名前(男)と来ましたって何でか言いたくない。って言うか名前(男)を二人に見せたくない。

「クラスの友達と来ました。」

間違ってはいない。

「ほう?」

仁王先輩はニヤリと笑った。この笑顔にいい思い出が無いんだけど。

「彼女か?」

丸井先輩が聞いてきた。だから彼女いないっての!

「違いますよ!!」
「その割には俺等にここにいて欲しくないみたいじゃのう。」
「いや、そういうわけじゃ……、」
「友達って誰だよー?女のコ?」
「違います!」
「だったら紹介してくれてもいーじゃねーか。」
「…………いや、別にいいッスけど…。」
「はい決定!で、彼女はどこだー?!」

彼女じゃねーよ男だよ!話聞いてねーなホントにコイツ等!!

しかし悲しいかな俺は後輩。先輩の言うことは多少無茶でも従わなきゃいけないんだ。

「……小説コーナーにいます。」
「さっき2年で有名な苗字名前(男)を見かけた場所じゃな。」

……え?

「何だよ苗字くんかよ!お前誤解を招く反応すんなよな!」
「……いや、すんません。」
「プリッ」

ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる仁王先輩を見て確信した。この人多分最初から俺が名前(男)といるってこと知ってたんだ。
……何で俺の反応を見るようなことをしたのかはわかんねーけど。この人大体意味不明だしな。

「って言うかお前等ホントに仲良かったんだな。休日にも遊ぶとか。」
「ブンちゃん知らんのか?最近赤也と苗字名前(男)が仲良いのはけっこう有名な話ぜよ。」

……そうだったのか。俺も知らなかった。

「ウチのクラスの女子も騒いでるよなー、めっちゃカッコイイって。」
「へー…そうなんスか。」
「あ、お前知ってる?苗字くんの親ってめっちゃ金持ちで、でも仲は良くないからって生活費だけもらってほぼ一人暮らししてるって噂。」
「ハァ?!何スかそれ。」
「いや、クラスの小林って女子が言ってたんだけどよ。」
「…いや、俺は知らないッスけど…、」

というか小林さんって人が何でその話を知ってるんだって思う。名前(男)がそういうのべらべらしゃべるとは思えないし。

「え?お前知らねーの?苗字くん前に小林と付き合ってたんだぜ?」

………は?!
小林さんって女子だろ?!名前(男)って女のコダメな人種じゃなかったっけ?!

「小林ってめっちゃ可愛いくて胸でっかいんだ。で、苗字くんとはめっちゃお似合いだったけど何でか別れたんだよな。」
「……はあ。」

ムカッ。ときた。
名前(男)が女のコと付き合ってたことも、その女のコに自分について色々話してたことも。

「まー、真相はわかんねーけど。じゃーな!」

二人はそのまま帰った。俺は何となくモヤモヤして、とにかく名前(男)に話を聞いてみようと思った。

小説のコーナーに行くと名前(男)は何かの文学書を立ち読みしていた。女子高生とおぼしき人がチラチラと遠巻きに名前(男)を見つめている。

「名前(男)ー、そろそろいいか?」
「あ、うん。」

名前(男)はパッと顔を上げると読んでいた本を棚に戻した。

「それ買わねーの?」
「あー……、立ち読みで大体読んじゃったからいいや。」
「そっか。」

さっき丸井先輩に言われたことが気になる。彼女がいたこととか、家庭のこととか。でも、俺にそれを聞く権利があるのか。付き合ってるわけじゃないのに。

「赤也?何かあったの?」
「…いや、さっきそこで先輩に会ってさ。」
「あ、俺も見たよ。髪目立つよね。」
「確かに。」
「赤也はなんだかんだで先輩に可愛がられてるよね。」
「知らねーよそんなこと!」
「はいはい。じゃ行こうか。」

駅ビルを出て駅前の商店街みたいなとこを歩く。鍋の専門店に入って、少し店員さんと会話をし、中くらいの大きさの中華鍋を買って出た。

店員さんとそれなりにフレンドリーに話していたのは少し意外だった。


「この後どっか行く?」
「いや…別に…、」

そろそろ帰らねぇ?と言いかけたところで名前(男)が悲しそうな顔をしたので慌てて言い換える。

「どっか話せるとこに行くか。」
「うん。」

あからさまに明るい顔になる名前(男)に半分呆れて、半分ホッとした。


どうやって彼女がいたことを聞き出そうか、と思っていると名前(男)がおもむろに切り出してきた。

「で、先輩に何を言われたの?」
「はっ?!」
「俺のことなんか言われて気になってるんじゃないの?」

エ ス パ ー ? !
こいつエスパーなの?先輩達といいコイツといい、俺の周りって何で鋭い人が多いんだ。
…いや、こいつの場合やたら鋭いところと鈍すぎるところとでの差がでかすぎるからなんとも言えないけどさ。

「…名前(男)に、彼女がいたことがあるって。」
「あぁ…それね。知りたい?」
「当たり前だろ!」
「何で?」
「何で、って…そりゃ、友達のこと気になるのは普通じゃねぇのか。」
「友達…ね、まぁいいや。」

じゃあどっかで話そうか、と名前(男)は歩き出した。

…聞いちゃっていいのか、マジで?


END







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