開かずの扉 没シーン



「雨水に心を浸す」志桜登場後

「あ〜ッ、こんな所にいたァ」
「柳……大人しくしてろっつったろが」

 湿った風が体を撫でていくのとほぼ同時に、緩く波打った茶髪の長身の美形が現れた。どうやら志桜様の知り合いらしい。
 長身は俺に目を留めると、瞠目したのちに嬉々として俺の前で膝をついて、俺の頬を両手で包み上向かせた。
 ……いや、……は?

「ヘェ〜、キミが白水芳春クン? 良いなァ、スッゴいボク好みッ。昔の志桜クンにちょっと似てるネェ。目茶苦茶によがらせてナかせてみたいナッ。ねェ志桜クン、芳春クンお持ち帰りしていい?」

 いや、え、何だこいつ。伊能より質悪い。何、俺いま生命の危機か何かか?

「馬鹿、いたいけな後輩に手ェ出してんじゃねえよ。そう言うとこマジで変わらねえのな」
「だぁって、ホント、芳春クンってばボク好みなんだモン。志桜クンとか芳春クンみたいな、プライド高そうなカッコイイ美人を犯しちゃいたいって思うのはァ、男の性デショ〜。志桜クンは闥センセーに理事長に聖センセーに乙霧クンって、目茶苦茶ガード堅くてボク泣く泣く諦めたけど、って言うか志桜クンが天然すぎて毒気抜かれたのもあるケド〜」
「お前キモいよ。俺は天然じゃねえし。あといい加減芳春離してやれ。――芳春、この変態は柳蘭っつって、ここの元会計で、情報屋だった変態だ」
「ネェ何で変態って二度も言ったノ?」
「今は都内で探偵してる。どっから俺が顔出すって掴んだんだか、俺のマンションの前で待ち伏せてやがった」
「え、無視? ……まァいいや。芳春クン、コレ、ボクの連絡先ネ。何かあったら、いつでも頼って。キミはお気に入りだから、破格値で請け負ってアゲル」

「死贈り」Back to the subject.

「あれだろ、広まった噂は水町家の意に反して、白水の過去だから、余計気に病んでるんだろ」
「……また柳情報かよ」
「フテんなって。蘭の情報網は役に立つんだからよ」

 そりゃわかってるし、俺もよく頼らせてもらうが。なんで柳、未だに学園内の情報握ってるんだよ……。

「そっちは完璧に生徒間の問題らしいぜ。だから気にすんな。いまの会長って、非公認の親衛隊があるんだろ?」
「らしいが」
「ソレ関連だとよ。詳しいことは水町本人とか、嘉山って奴に聞くように蘭が言ってたぜ」

 ……嘉山って、おい……。

「……あいつら、繋がってんのか?」
「や、蘭が一方的に知ってるだけっぽい。……まかり間違っても手ェ出すなと、言ってはおいた」

 そうだ、あいつ完璧柳が捩じ伏せたがるタイプだった……。

「……万一接触があったら、直接会うことだけはするなと、忠告しておく」
「そうしてやれ……」

 柳が嘉山を気に入りでもしたら、あの手この手で食おうとするだろうからな。さすがに、ちょっと、それは……。俺から柳に釘を刺せば手出しはしないだろうが、厄介な奴に目を付けられたもんだ。
 後日、柳に釘を指したら、

「ヤダなー、志桜クンってば! そういうコトで目を付けたんじゃないヨ? でも、そっか、ふーん、タチなんだァ……」

 と、やたら明るい声で返されたのは、また別の話だ。
 ……悪い、嘉山。生きろ。

おまけ

志桜「……」
蘭「……」
志桜「お前、この話にとって鬼門なのか」
蘭「知らないヨ〜。昔書いてたキャラが懐かしいからって、関係ないのに出そうとするから悪いんデショ。ボク悪くな〜い。ところで、嘉山クンってタチなんだ?」
志桜「……手ェ出すなよ?」
蘭「アハハ、出さない、出さない」
志桜(嘘くせえ……)
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