長編



SAKURA〜ハッピーエンドをもう一度〜 1

 桜の花弁が風に踊っている。逸れはまるで、枝から離れて自由になったことを喜ぶかのよう。

祐太が他界して、早くも3年が過ぎようとしている。そういえば、彼が他界してからこんなに真面目に桜の木を見たのは初めてだった。

彼も、この桜の木をあの霞が掛かった空の向こう側で、見ているのだろうか。





  『相模祐太』 彼と初めて顔を合わせたのは、高校二年生の時。年度初めでクラス編成が変わった時に、偶然同じクラスになったの(それ以前に、廊下ですれ違ったりしているかもしれないが、余り記憶に無い)だ。正直、最初は彼に対して興味は全く無かった。成績優秀、容姿端麗。それでもって、謙虚で他人にも優しい。正に絵に描いたような人物であると言う話を、彼の追っかけをしている友人から聞いただけだった。実際、接点を持つまでは滅多に言葉を交わさない間柄であった。

 そんな二人が親しい仲になり始めたのは、学園祭準備期間中でのこと。キッカケは、お互いが学園祭実行委員という同じ分担に着いたことだった。
「しっかし、何でこんなにまあ面倒くさい役職に着いちゃったのかな。アタシ、学園祭嫌いなのに」
学園祭準備期間初日の放課後。幼い頃から学校行事が何よりも嫌いだった私は、早々に文句を垂れていた。
「しょうがないですよ、なってしまったものは。僕も手伝いますから一緒に頑張りましょう」
 祐太は終始にこやかに話を聞いていた。実は、私を除くクラス中の女子が祐太と同じ役職に着きたいと言って、乱闘騒ぎにまで発展しそうになった。なので女子の分担みくじ引きで選ぶことになったのだ。しかし、くじ運が良いのか悪いのか。個人的には、一番その役職に相応しくないであろう人物が選ばれてしまったわけだ。
「だからってさ、アタシである必要は無いでしょ」
「そんなことはありませんよ。僕は、桜井さんで良かったと思っています。第一、追っかけられる僕の身にもなってほしいものです。僕は芸能人じゃないのですよ」
と、真剣な顔で言われた。
「へぇ、人気者も大変だね」
私は、それでも僻み(何に対して僻んでいるのか良くわからない)が出たのか少し嫌味な口調になった。
「桜井さん、それって褒めてるんですか、貶してるんですか」
祐太は、呆れたように言っていた。
「別に、褒めても貶しても居ませんよ」
私は満面の笑みでそう返した。そして、一息ついてから
「さて、どうするの。この先」
と、話を学園祭の方に戻した。
「じゃあ、まずはどんな企画をしたいのかクラスでアンケートをとってみましょう。その結果が出次第ですね」
「りょーかい」
そうして、その日一日はお開きとなった。




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