※兄妹ネタ
夜も更け、明日も早いからもう寝ようと言う時に、決まってあいつはやって来る。
大抵は俺に甘えたいが為に無理矢理布団に潜りこむのだが、今日のあいつは自分の枕を抱えて泣きそうな顔をする辺り、怖い夢でも見たのだろう。
いつもの通りに布団を捲って受け入れてやるとまた泣き出し、「怖い夢見たの」と蚊の鳴くような声で小さく呟いた。やっぱりな、予感的中。
「あのね、太一兄ちゃん」
「うん?」
「私ね、最近怖い夢見るの。凄く怖い何かから逃げて逃げて、やっと出口まで逃げ切れたと思ったら、また引きずり込まれる夢」
「そうか…それは怖いだろうな」
「でもね、その後いつも太一兄ちゃんが助けてくれて強く抱き締めてくれるんだ。だから…」
ぽつりぽつりと内容を話す内に眠くなったらしく、俺を抱き枕替わりにして、重そうに開いていた瞼をゆっくりと閉じていく。
「だからね…太一兄ちゃんが傍に居てくれたら、怖い夢も見なくなるんじゃないかなって…思ったの…」
太一兄ちゃんがいつも夢の中で助けてくれるように、あの夢からも助けてくれる気がするから。
最後にそう言って静かに寝息を立て始めたユリ。
その寝顔は、何だかいつもより安らかに見えた気がした。
幸せな微睡み
(お休みなさい、良い夢を)