日記帳は最初の一ページ目は普通だった。 最初の方は。
「……これは」 しかし読み進めていくと段々内容が怪しくなっていった。如何にもホラーゲームでありそうな内容に変わっている。 それでも、僕は日記を読み進め続けた。……なんか、途中でやめたらそれはそれで呪われそうな気がしたのだ。多分そうならないけれど。
「次のペー……いぎゃああああぁぁぁぁッ!?」 突然、あるページから日記帳の文字が赤く……否、赤黒くなっていた。 「ヒィィィィィィィィッ」 読み進めながら叫ぶ。あくまでも小さい声で、もはや心の声で叫ぶ。端から見れば完全に変な人だ。
こうして僕は叫びながら日記帳を読み切った。何事も起こらなくて一安心だ。物凄く怖かったけれど。 日記帳の最後のページに、銀色の鍵を絵画の後ろに隠したと書いてあった。探してみるとしよう。 …………いやはや、なんだか本当に何かのホラーゲームみたいだ。
そんな事を思いながら絵画の裏側をごそごそと探ってみる。すると、鍵らしき物を見つけた。 「……銀色って言ったのに!!」 思わず四つん這いの状態になってがっくりとうなだれた。 そう。絵画の裏から出て来た鍵は、真っ赤だったのだ。
・ ・ ・
何がともあれ、鍵を開けて扉の向こうへ行くと、そこは廊下だった。窓からは暗い空と、たまに光る雷が見える。うん、素晴らしく不気味だ。 しかしそれ以外は何も無いようで、そのまま廊下の突き当たりに見える扉を目指して歩き出した。
「…………」
「…………」
「…………っ!」
歩き出したのは良いものの、何か後ろから気配を感じる。しかも気配は一定の距離を保ってついてくるため、我慢できずに後ろを振り向いた。
後ろには何もなく、ただ僕が歩いてきた廊下があるだけだった。
「……ぐぬぬ…………」 仕方ない。気にするのは止めよう。後ろの気配は幻覚。後ろの気配は幻覚。 そう考えたら段々気配を感じなくなってきた気がしなくもない。自己暗示ってすばらしい。 「(僕ーッ!後ろーッ!!後ろぉぉぉぉッ!!)」 なんて思っていたのも束の間。ドアノブに手をかけた瞬間に、背後から物凄い気配と重苦しい空気を感じた。
僕にしては機敏過ぎる動きで振り返ってみた。 やっぱり誰も居なかった。 もう嫌だ帰りたい(二回目)。
いやしかし、これで帰るわけにもいかない。 原因はあのピコという女の子だ。あんな可愛い女の子に助けを求められて、途中まで期待させておいてやっぱり逃げるだなんて男が廃る。可愛いは卑怯だ。 まったく、仕方がない。僕は意を決して扉を開いた。
扉を開くとまた廊下だった。どれだけ廊下があるのだろうか。そして何故一繋ぎにしなかったのだろうか。 なんて事を愚痴っていても館の形が変わるわけではない。先へ進もう。 僕が素直にピコを追いかけている理由が、決してピコが可愛くて若干の一目惚れをしたわけではない。決して違う。違うんだ!!
「って……あれ?」 突然、辺りを薄暗く照らしていた明かりが消えた。真っ暗で何も見えなくなる。 「……ん?ああ、蝋燭があるわ」 すぐ近くに蝋燭を見つけたため、火をつけてみた。 辺りが蝋燭の火で照らされると、何故か僕は三体のモンスターに囲まれていた。 「……逃げるが勝ちだな!うん!!」 なんとか攻撃をかいくぐり入ってきたドアから出ようとした。 「おぶっ!?」 しかしドアにたどり着く前に僕は見えない壁に無様にぶち当たった。いつからこんなものがあったのだろうか。 「戻るなってことか……ひょほーい鬼畜だよぉ……」 また敵の攻撃をかいくぐって、廊下の先にあるドアまで猛ダッシュした。 「あべしっ!」 そしてまた見えない壁にぶち当たった。成長しない僕である。 ……多分、これはあの三体を倒せという事なのだろう。仕方ない。 僕は片手剣を構え、僕の目の前で実体化したゴーストを思い切り斬りつけた。 攻撃は全く効かなかった。
「もうどうしろって言うんだよぉぉぉぉ!!」 叫んだ。叫びながら片手剣を振り回した。 何回か敵に当たるのだけれど、やっぱり全然効いていなかった。 敵の攻撃をギリギリで避けながら攻撃を重ねていくこと数分。とうとう体力が尽きてきた。
「僕……もう、ゴールしても……いいよね?」
丁度トドメの一撃を喰らったところで僕は倒れた。
この後も僕は何度も倒れ、その度にジョーンズさんのお世話になり高い治療費に泣かされる日々が続いた。 それでも僕はあのホラーに通い続けることになる。 薄気味悪いピエロを倒すまで、僕が運命の出会いを果たすことを、僕はまだ知らない。
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