セルフィアにいる風幻竜、セルザウィード。
僕はそんな大仰な肩書きのドラゴンの上に落ちた。

ラピュタのように。



そう、まるでラピュタのように。



そして、ラピュタのような落ち方を決めた僕は、運命的な出会いを果たしたドラゴンのパシりになっていた。
ヨクミール森に行ってこいだの水の神殿に行ってこいだの…………。その前に畑仕事をしろだの王子の代わりになれだの焼き芋が食いたいだの、散々である。
そんな、偉そうなドラゴンのパシりになった哀れな僕と言えば。

「最近ユウレイが出るらしいですよ」
「ユウレイだって〜怖いねぇ」
「ユウレイだとよ……くだらねえ」
「ユ、ユ、ユ、ユウレイなんて」
「いやぁぁぁぁ出たぁぁぁぁ」

町のユウレイ騒ぎに巻き込まれていた。
確かにくだらない。というか喧しい。ユウレイ如きに騒いでないで皆さん僕のハーレムにきませんか。


そんな騒がしい日の夜のこと。
「…………」
目の前に見知らぬ女の子がいた。そして女の子はクルリと一回転して消えた。
「(元凶見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)」
思わず心の中で叫んだ。
多分というか、確実に今の女の子がユウレイ騒ぎの元凶だろう。消えたし。
騒ぎを一刻も終わらせてハーレム計画を進めるため、僕は夢中でさっきの女の子を追いかけた。


「くっ……見つけたと思ったらすぐに消えやがる…………」
思っていたよりもユウレイだった。移動速度が尋常じゃない。とうとう僕は、あのユウレイを見失ってしまった。

『あなたが千虎さんですのね!?早くルーちゃんを助けにいくですの!!』
結局広場で力尽きてたら女の子の方から来てくれました、まる。
『セルフィア平原を西に進んで橋を渡った先に黒曜館はありますの!おわかりになられましたの?』
「お分かりになられたいです」
一気に言われて分かるか、そんなもん。というか、方角で言われても分かるかそんなもん。
しかし、話している間にもどんどん時間は過ぎていくわけで、そろそろ寝ないと危ない時間になったため仕方なくお分かりになられてあげた。
……それにしても、黒曜館か…………。どこぞのパイナップルが居そうな所しか出て来ない。パイナップルの種でも貰えるのだろうか。





翌日。
セルフィア平原をさまよい続けること三時間。
僕はようやくそれっぽい空気を放つ館にたどり着いた。多分というか絶対パイナップルは無い。
館の前ではあの女の子が待機しているのだけれど、正直行きたくない。帰りたい。
回れ右。
やっぱり帰ろう。
僕は館に背を向けて歩きだそうとした。
『ああ、やっと来ましたの!早くルーちゃんを助けに行きますわよ!!』
…………案の定捕まった。
そしてそのまま女の子は僕を引きずって館の中へ向かって行った。明らかに女の子は僕をすり抜けて居るような気がするのに、なぜ僕は引っ張られているのだろうか。

館の中は、ホラーゲームとかホラー映画で出て来ても違和感はない感じだった(外見からして明らかにそうだったのだが)。
いきなりデカいハサミを持った吉田さんが出て来てもおかしくは無い気がする。…………ところで吉田さんは倒せるものなのだろうか。
『早くルーちゃんの所へ行きますわよ!!こっちですの!!』
そんな僕の心境も知らずに、ピコと名乗った女の子は階段を登って正面にある扉の奥へ行ってしまった。
乗り掛かった船だ。仕方ない。
僕もその後を追い掛けてドアノブに手をかけた。
「…………え?」

なんという事でしょう。扉には鍵が掛かっていた。
「これは……鍵を探せってことか」
よく辺りを見回してみると、この扉以外に扉は無さそうだ。ピコの後を追うにはこの扉をなんとかするしかない。
全く、仕方がない。

「……なんか視線が…………」
そういえばさっきから謎の視線を感じる。というか、壁にかけられた絵画に思い切りガンをとばされている気がする。何これ怖い。
視線から外れてみようと動いてみる。
すると、僕の予想に反して絵画の視線は動かなかった。絵画はずっとどこか一点を見つめたままである。
「…………日記帳?」
そこで、視線の先を追ってみると、一冊の古びた日記帳にたどり着いた。
…………これは、読めという事だろうか。

僕は恐る恐る日記帳を開いた。



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