『ニビジムデイズ』


※カゲロウデイズ(曲)をパクってます※
※大丈夫な方のみどうぞ※



 ある日のこと。
 俺がいつも通りニビジムで挑戦者を待っていると、十歳の緑色な少年がやってきた。そいつはあっさりジム内のトレーナーを撃破して俺の目の前までやってきた。やけに自信たっぷりで、若干のナルシストっぽい奴だった。数年後に過去の自分を思い出して羞恥に悶えるタイプだろう。
 そいつの手持ちはゼニガメとポッポの二体だけだった。ただ、レベルはそこそこ高い。集中して育ててきたようだ。
 結果はまあ……相手の手持ちにゼニガメがいたのだから仕方ない。俺はあっさり負けた。子供だと思って甘く見てはいけないと学んだ瞬間だった。
 そいつが去ってから少しすると、今度は同じ十歳の赤い少年がやってきた。手持ちはヒトカゲとコラッタ。相性的には当然こちらの方が有利なのだが、緑の少年同様赤い少年も俺以外のトレーナーを楽々と撃破していく。
 戦ってみて、何故そこまで強かったのか納得がいった。彼のポケモンは緑の少年を上回るレベルだったのだ。つまり、本来効果は今一つの体当たりをレベルに任せてごり押ししただけだった。



「ふむ……」
 俺は、挑んできた少年の相手をしながら昨日見た夢を思い出していた。
 不思議な話だ。夢に出てきた赤い少年と、今戦っている少年は同一人物のように見える。違うところがあるとすれば手持ちのポケモンくらいだ。
 夢に出た少年はヒトカゲとコラッタをつれていたが、今戦っている少年はフシギダネとバタフリーを連れていた。レベルはそれなりだが、相性が悪い。やはり俺はあっさりと負けてしまった。
「そういえば、彼の先に来たトレーナーも夢に出てきたな……」
 赤い少年が去ってから、俺はそっと呟いた。勿論彼も手持ちが違ったのだが、強さは変わらなかった。



 夜中だと言うのにジムに挑んでくる元気なやつがよくいる。しかし、それが子供というのは初めてだった。誰だ、こいつの親は。夜はしっかり寝かせろよ。
 夜に来たというのも十分異常だが、戦ってみると少年の更なる異常性を知った。彼の手持ちにゼニガメがいるのだが、なんと水タイプであるはずのゼニガメが『かえんほうしゃ』を放ってきたのだ。どう育てたらそんな技を覚えるのだろうか。
 それだけではない。彼は何故か、既にレベルが100になっているスピアーを持っていたのだ。通信でもらったポケモンだろう。バッジを持っていないのだから当然このスピアーは言うことを聞かない。そう思っていたのだが、スピアーは彼に従順だった。結果、俺は技をほとんど繰り出すこともなく負けてしまった。意味のわからない戦いだ。一方的な暴力とも言える。
「……なんかこの光景見たな」
 去り行く少年の背中を見ながら俺はそんなことを呟いた。赤い上着、赤い帽子の十歳くらいの少年……正夢でもみたのだろうか。



 この世界が何度も繰り返されているということに気付くのはそう遅くなかった。一体何巡目だろうか。いつも必ず緑色の少年と赤い少年に俺は倒される。そうプログラムされているかのように、俺は二人に勝つことができない。……俺はジムリーダーでいいのだろうか。そんなネガティブな思考すらわいてくる。
「こんなアホみたいな話に結末があるとしたら……」
 呟いてみるが、答えは出てこない。当たり前だ。でも、妄想の一つぐらい普通は出てくるのか。俺の想像力は貧相なようだ。
「大変ですよタケシさん!
 そんなことを考えていたら、ジムのトレーナーたちが騒々しく俺のもとへやってきた。なんだなんだ。
「チャンピオンが!」
 次の言葉で俺の頭のなかは真っ白になった。
 現在のチャンピオンは、何度も何度も俺を倒すあの赤い少年だ。彼はそんな地位まで上り詰めていた。……とはいえそれも何度目になるかは分からない。何度も聞いた話だ。ただ、彼がチャンピオンになると割りとすぐに時間が巻き戻されて、俺はまた駆け出しのトレーナーである彼に負けることになる。だからこんな騒ぎは初めてだった。



「そうか……これが結末なのか」
 それから、時間が戻ることはなかった。俺はもう、あの日々を繰り返さない。消えてしまった少年は今はどこにいるのだろうか。



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