◯月◯日
じいちゃんにポケモンを貰って、図鑑を埋める旅に出ることになった。レッドにはぜってー負けねー。
でもいきなりレッドにバトルで負けた。悔しいから必ずレッドの先回りをしてやる。そんで強くなってやる。
◯月×日
22番道路でレッドに会った。癪だけどこの先はまだ行けないことを教えてやった。俺って優しい。
バトルにはまた負けた。手持ちは俺とほとんど変わらないのになんであいつのが強いんだ。
◯月△日
レッドよりも先にニビシティを制覇してやった。この調子で全部先回りしてやる。
次はお月見山だ。ロケット団が滅茶苦茶いるけど何かあったのか?
◯月□日
24番道路でまたレッドに負けた。なんでこいつに勝てないんだ。悔しい。でも、ハナダジムもレッドより先に制覇できたからよしとしてやる。
◯月◇日
クチバシティに到着した。せっかくだからサント・アンヌ号に乗ったらレッドのやつに遭遇した。そしてまた負けた。なんでだよ!
悔しいけど秘伝マシンを手に入れたから、サント・アンヌ号には乗ってよかったと思う。
サント・アンヌ号を降りてすぐサント・アンヌ号に挑んだ。ゴミ箱をあさらなきゃいけないのは嫌だったが勝ったしレッドより先だったからよし。
◯月◎日
ラッタが死んじまった。
どうしてかは、よくわからない。今までありがとう。
◯月●日
ラッタを供養するためにポケモンタワーに行った。レッドに遭遇しちまったからバトルをしたけど、あいつは俺のラッタのこと、気付いたかな。
バトルは勿論負けた。でも正直、バトルの結果はどうでもよかった。
◯月▲日
シルフカンパニーをロケット団が占領しやがった。レッドが先に乗り込んじまったから、俺も行ってやることにした。別に心配だったんじゃない。
結局、途中でレッドに遭遇してバトルして負けて、ロケット団はレッドが倒しちまった。なんてやつだ。
負けてられない。もたもたしてたらあいつにチャンピオンの座をとられちまう。
□月■日
やっとのことでカントーのジムを制覇することができた。あれ以来レッドには会ってない。あいつは今どうしてるかな。
次はいよいよ四天王だ。その前にチャンピオンロードがあるけど、そこで俺が負けるわけがない。
□月◎日
鷹をくくってたら22番道路でレッドに負けた。結局これまでの間で俺は一回もレッドに勝ってない。どうして俺はこいつに勝てないんだろう。どこが違うんだろう。
そういえばいつの間にかレッドは自転車に乗っていた。いつ買ったんだ、こいつ。
□月◆日
やっと、やっとチャンピオンになった。
なれたのに、一瞬だけだった。すぐに後を追ってきたレッドに負けて、じいちゃんにカッコ悪いところを見られて、俺は逃げ出した。
あーあ。俺は明日からどうしろっていうんだよ。
△月◯日
レッドがいなくなった。どこに行ったんだよ、あのバカ。
◇
「……グリーンって意外とマメだよね」
そこまで読み終えるとレッドは少し微笑んでそう言った。散々日記を読み上げられたグリーンのライフは当然とっくにゼロだ。
「……『レッドにはぜってー負けねー』」
「うわぁぁぁぁ!! いいからもうやめろって!!」
真っ赤な顔でグリーンは日記帳を奪い返した。同時に心のなかで日記をつけていた自分を恨んでいるだろう。そしてレッドに関する事が多いことを一番恥ずかしく思ってるだろう。
「……懐かしいね、冒険してた頃」
「……だな」
二人は窓の外を見た。かつて、カントー中を走り回った二人の少年はとっくに青年へと成長し、冒険することをやめてしまった。
「……あの頃に戻りたいと思う?」
「どうだかな。戻りたいとも思うし、戻りたくないとも思う」
それからしばらく二人は黙っていた。何か思うところがあるのだろう。
沈んでいく夕日のせいで赤く染まったマサラタウンに、ジョウトから帰ってきたオーキドの姿が見えた。