『メノクラゲが語るだけ』


 あ、どうもメノクラゲです。イッシュ地方じゃすっかりプルリルさん達にお株を奪われましたが、今日もジョウトとかカントーとかの海を漂っております。
 なんて、僕がマイクを持って(?)語っている間にも、僕たちメノクラゲはどこかの海で戦闘を繰り広げています。あ、今45番道路あたりで戦闘になりましたね。相手のトレーナーの舌打ちが此処まで聞こえてきそうです。ご苦労様です、はい。

 ……いやぁ、ね? 僕たちも好きで頻繁に出て来ているわけじゃ無いんですよ?
 当然僕たちも痛みを感じるわけで、現れてはバタフリーの『サイケこうせん』で一撃で沈められるのは当然つらい訳です。「序盤のバタフリー強いじゃん!」なんて言われましても当たり前じゃないですか、バタフリーはエスパータイプの技が使えるんですから。
 更に言えば、出て来たのが僕たちだと分かった瞬間にトレーナーたちが全力で逃げていくのもつらいんですよ。トレーナーたちの後ろ姿が遠ざかっていくあの光景…………。ああ痛い、心が痛い。

 ごくたまに相手にしてもらえたと思えば、モンスターボールは使われずただひたすら流れ作業みたいに経験値の肥やしにされるだけなのだから、生きにくい世の中になったものです。僕たちにも一度くらい『さいみんじゅつ』とか『みねうち』とか、捕獲用の技を使ってみてくださいよ。捕まえてくださいよ。毒が効き過ぎて倒れるなんてことはありませんよ、ほらほら。なんて言ったって毒が効きませんからね! 僕たち毒タイプ入ってますから! ……こんなところも僕たちが嫌われる原因なのでしょうか。なんせ水タイプの癖に草タイプの技が効きませんから。むしろ僕たちの方が有利ですから……。うふふ。
 こんなんだからいつまで経っても僕たちはジムリーダーさんたちのパーティー入りが出来ないのでしょうね。水タイプのジムじゃジムリーダーが女の子なんていうこともあって、僕たちはビジュアルからして受け入れていただけませんし、毒タイプのジムじゃコンパンやモルフォンが居座りますからね……。それにベトベターやドガースなんかもいますね。どうせ僕たちはロケット団にすら捕まえてもらえませんよ。コイキングですら実験の標的にされたというのに!
 確かに、ギャラドスさんは強いです。さん付けで呼ばないと噛み砕かれそうなくらい強いです。認めます。でもね? 僕たちだって進化してドククラゲになれば、自分で言うのもなんですが、なかなか強いんですよ? よく思い出してくださいよ。ドククラゲの防御や特防、割と強いですよね。
 あっ! そこドククラゲを経験値の肥やしにしないでくださいぃぃぃぃ話を聞いてくださいぃぃぃぃ!!

 ……はあ、はあ。すみません取り乱しました。なんせ「ウザい」だの「邪魔」だの罵られるものですから…………。語ろうとしたのに殆ど愚痴になってしまって申し訳ないです。此処までお付き合いいただきありがとうございました。

 それでは、波に乗るトレーナーさん。そろそろ僕とバトルでもしましょうか?



「……と、まあ、こんなようなことをこのトモダチは言ってるみたいだよ」
 ぷにぷにとメノクラゲをつつきながらNはそう僕に言った。僕が返すのはただ一言だけ。
「やりにくいわ」



おわれ。



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