『クリスマスパーティー』


12月25日は言わずと知れたクリスマスの日。
12月に入れば段々と辺り一体がクリスマスムードに染まり、カップル達が増え始め、イルミネーションが夜を華やかにする。


…………筈だったのだが。


今年のイッシュ地方にはそんなムードは全く到来していなかった。
クリスマスなんて、そんなものに構っている暇はない。そんな状態だった。……否、クリスマスムードを楽しんでいる場合ではないと言った方が適切だろうか。

「ムーランド、『ワイルドボルト』ッ!!」
「ギガイアス、『ストーンエッジ』!!」

とある場所で、二人のトレーナーを赤と白の何かが群れて囲んでいた。二人のトレーナーはそれぞれのポケモンで赤と白の大群を蹴散らしていく。
「ど、どうしようチェレン……全然減らないんだけど……」
「そうだね……せめて逃げ道を作れればいいんだけど……」
困り果てたベルになんとか応えようと、ギガイアスに指示を出しつつ、チェレンは辺りを見回した。しかし辺りは一面の赤と白……尋常ではない数のデリバードが埋め尽くしているだけである。
「このぶんじゃ、まだ無理そうだね」
倒しても倒しても経る気配を見せないデリバードにため息を漏らしつつ、チェレンはもう一度ギガイアスに『ストーンエッジ』を命じた。このまま先にPPが尽きてしまうのは目に見えている。しかし、二人は他にどうすることも出来ないまま、ただひたすらデリバードを倒していった。


同刻。チェレンとベルが奮闘しているところとはまた別の場所。
此処でもまた二人のトレーナーがデリバードの大群に襲われていた。
「なあ、レッド何処まで逃げればいい!?これ、何処まで逃げればいい!?」
「こっちが聞きたいぐらいなんだけど……ッ、ピカチュウ!」
「ピッ」
ただし、こっちはグリーンの手持ちであるウインディにグリーンとレッドが乗り、ただひたすら逃げ回り時にレッドのピカチュウがデリバード達に強烈な電撃を浴びせていた。
非常事態であるために、レッドが常に声を張り上げるというレアな現象まで起きている。
「あのデリバード達、どうしてこんなに凶暴なんだよぉぉぉぉ!」
「メリー☆クルシメマス」
「言ってる場合かァァァァッ!!」
……なんだかんだ、楽しそうな二人である。


こんな感じに、イッシュ地方は尋常じゃない数の凶暴なデリバード達が暴れ回るという災難に見舞われていた。クリスマスっぽくクリスマスを楽しめない現象である。
超大型のデリバード台風がやってきた。と、言われても納得できる感じにイッシュ地方は荒れていた。
そして、何が一番酷いかと言えば、デリバード達が減る気配を見せないため、この件が収束する気配も見えないという事である。永遠ループって恐ろしいね、という話だ。

「……レッドさん」
「何!?」
「逃げ場終了のお知らせを聞いてみるか?」
「分かった、グリーンを叩き落とせばいいのかな?」
「良くないけどとりあえず止まれウインディ!止ぉぉぉぉまぁぁぁぁれぇぇぇぇ!!」
「なんで急に……ッ!?ば、馬鹿じゃないのグリーン!?」

しかしまあ、転機は訪れた。
ギャグはギャグらしく訪れた。

「ううう……、ムーランド!もう一回ワイルドボルッ……!?」
「どうした、ベル!?……ってうわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

グリーンとレッドがチェレンとベルに突っ込むという最悪な形で。


ずっと走っていたウインディが急にに止まれるはずもなく、チェレンとベルそしてデリバード達を跳ね上げて直進し、木に激突したことでやっとウインディは止まった。当然、ウインディはもう動けなくなった。

「お……おぼぉ…………」
「……本っっっっ当に馬鹿じゃないの?」
「い、いたたたた……」
「……ベル、重い」

倒れ込んだ四人が次々に身を起こす。襲っては来ないもののデリバード達はそんな四人を確実に囲んでいた。
「……責任取ってよ、グリーン」
「いや……これは流石に」
いくらレッドがグリーンを睨んだ所でデリバード達は減らない。それどころかじりじりと距離を詰めてくる。
「や、やめたげてよう!!」
「……だから重いって、ベル」
ベルが叫んだところで事態は変わらない。ついでに、チェレンの上に乗ったままのベルの重さが変わることもない。

万事休す。誰もがそう思った、次の瞬間である。


「ゼクロム、『らいげき』!!」

本来ならば単体相手にしか使えない『らいげき』が炸裂し、デリバードの群れを一掃した。
こんな芸当が出来るトレーナーに心当たりしか無かったチェレンは空を見上げ、そして叫んだ。

「トウコッ!?」

其処には、一年ほど前から失踪していたトレーナー、トウコがゼクロムに跨り空に居た。
トウコは「おっひさー」とか言いながらウインクをし、軽く星を飛ばしている。軽い。一年振りの再会だというのに物凄く軽い。軽すぎる。
「なんで此処にッ!?いや、今まで何処にッ!?」
「トウコぉぉぉぉうわぁぁぁぁっ!!」
地面に軽く着地したトウコにベルがタックルをかまして来るのを軽くあしらってから、トウコは笑顔でチェレンの質問に対し、答えになっていないがしかし重要な事を言った(ちなみにレッドはゼクロムに釘付けになった)。

「いやぁ……クリスマスだしさ、いっぱいのデリバードでサプライズして帰ってこようと思ってたんだけどねー」
失敗しちゃった☆と、トウコは可愛らしく言った。
可愛らしく、全く可愛くないことを言った。
瞬間、四人の目が鋭く光った。



「「「「お前が原因かァァァァァァァァッ!!」」」」


四人の絶叫と共に、四人の全力な攻撃が炸裂したのは言うまでもない。
サプライズも程々に。



end



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