『赤緑とサブマスがバトルなうのようです』


マサラタウンのとある部屋に、赤と緑と白と黒が集まっていた。
赤と緑ならまだしも、白と黒……すなわちサブウェイマスターがこの部屋、否、この地方にいることは異様な光景である。バトルサブウェイは今頃大騒ぎになっているだろう。
サブウェイマスターが失踪した……と。

そして、誰もサブウェイマスターがカントー地方のマサラタウンにあるグリーンの家に上がり込んでいるとは夢にも思わないだろう。

「なッ……レッド!お前ピカチュウ使うの禁止だ!!」
「黙れ変態」
「なんでそうなるんだよ!」
「……ゼルダ、ゼロスーツサムス…………」
「綺麗なお姉さんが好きでなにが悪い!!」
「二人とも、初心者の私達がいることを忘れないでくださいまし……」
「ルカリオ、素晴らしい」

ましてや、この四人がWiiの大乱闘スマッシュブラザーズに興じているなどということは…………。





「もう一回だ!」とグリーンが叫んだ。テレビ画面は、2Pの勝利を告げており、ピカチュウがすやすやと寝息をたてていた。つまりレッドの勝利である。細かく言えば、二位が1Pのグリーン、三位が3P4Pのノボリとクダリの同着だ。
グリーンはその画面を見つめて歯軋りをした。
「……何度やっても結果は同じだと思うけど」
そんなグリーンを横目に見つつ、膝に乗ったピカチュウを撫でるレッドは相変わらず澄ました顔をしている。変わりに膝のピカチュウの方が誇らしげな顔だ。
「大体何で俺のゲームなのにお前の方が強いんだよ!!」
「……グリーンがお姉さんキャラにデレデレしてるから。気持ち悪い」
「デレデレなんてしてねえよ!?しかもそんな事言ったらお「ピカチュウ」ギャアアアアァァァァッ」
何かを言いかけたグリーンにレッドがピカチュウに指示を出して電撃を浴びせた。意志の疎通はお手のものである。
……もっとも、グリーンの言いたいことは大方想像がつくものなのだけれど。すなわち、『お前だってピカチュウにデレデレしてるだろ』という事である。グリーンが綺麗な(画面の向こうの)お姉さんにデレデレするのと、レッドが(画面の向こうの)ピカチュウにデレデレするのではまるで意味が違うのだが。

「……クダリ、この二人をどうにかしてくださいまし…………」
そんな二人のやりとりを見てノボリがクダリに助けを求めた。しかしクダリは「無理無理」という意味を込めて首を横に振るばかりである。

そんなやりとりが、ゲームを始めてからずっと続いていた。





「ましぃぃぃぃぃぃぃぃ」
ノボリの叫び声が響き渡った。それと同時に、ノボリが操作するネスが星になった。
「あっはっは、ハンマー最強!」
ノボリのネスを星にした犯人はグリーンのサムスである。サムスはハンマーを全力で振り回していた。

すぐにノボリのネスは帰ってきた。どうやらライフ制限は無いらしく、表示はされていない。落とした数、落とされた数を数値化して競う設定のようだ。
ノボリの復活と同時にクダリのルカリオが物凄いスピードでどこか彼方へ飛ばされていった。やはり犯人はグリーンである。
「バトルサブウェイでの恨みだ!」
「こんな所で恨みを晴らさないでくださいまし……」
「ルールを守って安全運転、グリーンに向かって全力疾走」
「何を言ってるんですかクダリさん!?」
「……グリーンに向かって集中☆砲火、ルールを守って全力☆疾走」
「やめろレッド!物騒過ぎる!!」
「なるほど」
「クダリさんは納得すんなァァァァァァァァッ」
こんな事をしている間に、グリーンのハンマーの効力が切れた。
「……二人の仇は僕が討つ」
同時に、ハンマーを振り回すサムスから逃げ回っていたレッドのピカチュウが動き出した。ハリセンを口に加えて。
「ちょッ……まッ……やめッ…………」
「やめない」
そこから怒涛のハリセンラッシュだった。『スパパパパパパッ』という小気味良い音を立てながら、ピカチュウがサムスをハリセンで連打する。極めつけは雷で、サムスはネスやルカリオ同様に背景に一瞬輝く星になった。
「私の点数になってくださいまし!」
「波動弾ッ」
サムスが復活してからも、ノボリとクダリが攻撃を与え続けていた。さっきの会話通り、グリーンに向かって集中砲火である。
大乱闘は、最早グリーンを倒すためだけのゲームになっていた。





結局この回もレッドが勝った。さっきと違う点をあげるとするならば、集中砲火によりグリーンが最下位になった事ぐらいだ。「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ」と、コントローラーを置いて床に手をつきながら、グリーンは叫んでいた。
そしてまた、グリーンはレッドに再戦を申し込み、ノボリとクダリは苦笑しつつも次の回を全力で楽しむことだろう。

そんな四人に、かける言葉があるとするならこの二つだけ。
『楽しそうで何よりです』
と、
『そんな事より仕事しろ』
である。


end



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -