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なんだか猫神の様子がおかしいようだったけれど、そんな事を気にしている余裕は無いですだ。 九十の双子は勿論、空美の姉である海菜がかなり厄介ですだ。……流石殺し屋組ですだな。場慣れしてるですだ。 「喰らえですだ……!『メテオ』!!」 炎を纏わせた巨大な岩を、誰が巻き添えを食らおうと構わず落としまくる。しかし、岩がデカすぎて簡単に交わされてしまった。 「そんな事想定内ですだけどな!『クラッシュ・バースト』!!」 誰にも当たる事無く床に落ちたメテオを爆発させた。危うく儂まで爆発に巻き込まれそうになったのを跳躍してかわすと、メテオの反対側にいた海菜が見えた。 海菜はただ、日本刀を払っただけで、自分の周りの爆発を消したですだ。
「こりゃあ…………」 空美の能力が空間移動なら、多分海菜の能力は空間を斬ることですだ。厄介なことこの上ないですだ……。 「はいはいこっちもいるっすよー」 「全く司令官、自分だけ守らないで下さいよ」 「ぬおうっ!?」 突然爆発の中から九十姉妹が飛び出してきたですだ。しかし儂は今跳躍しているわけだから、身動きがとれないですだ。ぐぬぬ……こいつらどうやって爆発から逃げたですだか…………。 「足場が無いならお前たちを足場にするまでですだ!」 身体を半回転してどちらか分からないけど、九十の片割れに炎で加速しながら蹴りをかました。 ……あれ?これじゃあ足場にならないですだ。 なんて気付いたのも遅く、まるでライダーキックのような儂の蹴りは見事にヒットし、そのまま地面につっこんだ。 背骨の辺りに直撃したから、多分いかれた筈ですだ。 「ってえっす…………」 儂の足の下で片割れが呻くように言った。なんとなく、そのままぐりぐりと踏んでみる。 「ぎゃー!?ギブっすギブっす!!そんな地味な攻撃やめろっす!!私はもう動けないっすから!!」 「それは良かったですだ」 あっさりと降参宣言をされたので、儂は片割れを踏んでいた右足を離した。そしてもう片割れと向き合う。 「さあ、次はお前でふおうっ!?」 次はお前だなんて、カッコつけようとしたらガクンと無様に足から崩れ落ちた。 おかしい。足に全く力が入らないですだ。
「お前……何をしたですだか」 腕で身体を起こしながら、さっき降参宣言をしたはずの片割れを睨んだ。
「えげつないな、涙目。降参する代わりにそいつの足を呪ったのか」 「当たり前じゃないっすか。何もしないで降参なんてするわけがないっす。あー、無理に動こうとしても無駄っすよ。此処を出るまで、お前の足はもう動かないっすから」 音無のように魔力で無理やり足を動かそうとしても、足はぴくりとも動かなかった。こりゃあ、相当な呪術ですだ。
「足がダメなら腕があるですだ!!」 儂はロケットの要領で手から炎を噴射させると、腕のバネだけで一気に跳躍した。足が動かないのはかなり不自由だけれど、まだなんとかなる。 「そういうのを、往生際が悪いって言うんだ」 狙い通りまだ動ける片割れが儂と同じ高さまで跳躍してきた。 「つ、か、ま、え、たですだぁぁぁぁ!!」 そいつの頭を両腕で掴んで、ぶつかる一瞬だけに思い切り魔力を込めて、頭突きをした。 「肉弾戦で儂に勝てると思うなですだよ!!」 そのまま片割れと地面に落ちる。足が動かせないから綺麗な着地は出来なかったけれど、片割れをクッションにしたから衝撃は少ない。
「こんの……岩頭がっ」 脳天から出血しながら、片割れは儂を思い切り突き飛ばした。 「ぐえっ」 儂は抵抗できずにそのまま無様に地面に落ちた。 とうとう腕まで動かなくなったですだ。……また呪術ですだか。 「これでもう、お前は動けない……」 ふらつきながら片割れが立ち上がった。さっきの頭突きはかなり効果があったらしい。……しかしまだ足りなかった。これじゃあ儂がピンチですだ。 「やられた分はやり返す。それが私のモットーだからな……たっぷり仕返ししてやろう」 「……動けない相手をフルボッコですだか…………」 「ストレスが溜まっているんだ」 チラッと海菜の方を見た気がしたのは気のせいだろうか。片割れはニヤリと笑った。
「とりあえず気が済むまで殴らせて貰おうか……!!」 「や、やめろです…………るえ?」
ツインテールを纏めて掴まれると思った瞬間、何故か儂は空中に移動していたですだ。
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