「それで、命令の話だが……」

涙目か怖目か分からないが、話を元に戻した。
「それよりもお腹空いた」
せっかく戻された話をまた脱線させる不届き者は何処の何奴だろうか。
「ご飯頂戴」
此奴だ。
うつ伏せのまま、気流子は食べ物を要求していた。
「此方の要望が終わったらそっちの要望も通すっすよ」
「やだ。先にご飯」
「「…………」」
気流子が聞き分けのない子供に進化した。双子が顔を見合わせて黙ってる。
「大丈夫だ「食べ物」お前達が「ご飯」抵抗しなければ、「お腹空いた」直ぐに「ごーはーんー」終わる「お腹空いたー」事だ。「ご飯ちょーだい」ええい、人が話している間ぐらい黙れ!!」
あ、キレた。
まあ、耐性が無いなら一つのことを言う間に六回も飯の要求をされれば我慢の限界というものが有るだろうが、まだまだ甘いなと思ってしまった。
要は、慣れって怖いなという話だ。
一方気流子と言えば、今は双子が黙っているためひたすら「お腹空いた」を連呼していた。これはこれで恐ろしい。
「腹が減っていても出来ることだからとりあえず聞いてくださいっす!!」
耐えかねたのかとうとう敬語になってしまっていた。立場が逆転している。
「気流りんお腹がすいて動けないー」
「お前はアンパンマンか」
「腹が減っては戦は出来ぬだよ小坂君!!」
「別に戦はしないらしいぞ」
「ちっちっち……人生は常に戦なんだよ小坂君!!」
「そんなうつ伏せで言われてもな……」
「お腹が空いたものは仕方がないんだよ……うう、ご飯…………」
「ちょっ、ゾンビ化すんな怖いわ!!」
顔を上げずに手を此方に伸ばしてくる気流子から思わず後ずさった。
こんな風に漫才を繰り広げる俺達に対して九十姉妹と言えば、
「涙目……どうして私達はこんな扱いばかり受けるのだろうか…………」
「分かったら苦労しないっす…………」
「指揮官といい、この緑色といい…………。多分私達は子供の相手に向いていないんだ……」
「指揮官も司令官も、12歳だからな……」
「ふふふ、私は子供恐怖症になりそうっすよ……五歳の壁はでかいなぁ…………」
おいおいと泣きながら(比喩だ。実際は泣いていない。多分)愚痴をこぼしていた。
というか、空美は12歳だったのか。そして此奴等は17歳だったのか。年上というのは意外だった(俺は16歳だ)。
この二人の愚痴には俺も少し混じりたいものがあった。子供は苦手だ。特にこの全身緑色(15歳なのだけれど)。

と、此処でノイズが聞こえた。
通信機とかのノイズだろうか?ノイズは九十姉妹から聞こえてくる。
次第にノイズは小さくなり、代わりに声が聞こえた。
『誰が子供だって?』
「ギャーッ司令官!?」
『……まあいい、二人に用は済んだか?』
「それが……、お腹が空いたと…………」
『…………私はお前達にあんぱんを持たせた筈だが』
「あんぱん!?」
あんぱんに反応して気流子が起き上がった。素晴らしい反応速度だ。
九十姉妹は、司令官とやらに言われて気付いたかのように慌ててあんぱんを取り出し(恐らく気流子の顔ぐらいのサイズはあるであろう驚愕のサイズだ)、此方に投げてきた。
そこからは全てがスローモーションのように見えた。
投げられた驚愕のサイズのあんぱんに、うつ伏せの状態から飛び上がった気流子が食らいついた。その姿は獲物を見つけた肉食獣のようだったが、此奴は蛙じゃなかっただろうか。
あんぱんに食らいついた気流子はそのまま空中であんぱんを食べ終えた。とんでもない速さである。
あんぱんを食べ終えた気流子は、そこから空中で一回転して綺麗な着地を決めた。
「気流りん復活!!」
突っ込みどころしか無かったが、一つ一つ突っ込む気力は無かったので自分の役目を放置することにした。突っ込んだら負け。突っ込んだら負けだ。

「……お前達、私がきたからもう下がってもいいぞ」
壁に阻まれて何処にいるのか分からないが、通信機ごしに聞こえていた声が聞こえた。
通信機ごしの時は気付かなかったが、俺はこの声に聞き覚えがある。
「も、申し訳ないっす司令官!!」
「全くだ」
ばっさりとしたクールな口調だが、聞き間違える筈もない。


「………………空美!?」


九十姉妹の視線の先から現れたのは、日本刀を持った昼夜空美だった。



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