「……そうですね。行動を起こされる前にさっさと乗り込みましょう」
「戦わなくても二人を連れ戻せばいいんだよね?」

昨日、僕達の実力不足を指摘した二人が真っ先に賛同してくれた。二人を連れ戻すだけなら出来るだろうと、買ってくれたらしい。これは、実力を少しだけ認められているような気がして嬉しかった。

「『なんでもいいからさっさと気流子を連れ戻すわよ』……って、雪乃が。やっぱり妹は大事だよね?」
「う、五月蝿いわよ綾!」
どうやら激怒していた二人が落ち着きを取り戻してくれたようだ。全く笑顔が見られないけれど、これは仕方がないだろう。

……と、ここで問題が一つ。
「…………」
困ったような顔で僕らを見続ける少年、仁王君をどうするかだ。
見ず知らずの少年をいきなり危険な目にあわせるのもどうかと思うし、かと言って一人で留守番でもさせるというのも危険だ。
分担するという手も有るのだけれど、もし戦力を分割して敵から逃げられない状況に追い込まれたら…………?嫌だ、これ以上は予測したくない。

「…………えっと……」
と、僕が悩んでいるとずっと黙っていた仁王君が口を開いた。
「僕のことで悩んでいるなら……、僕も連れて行ってくれませんか…………?危険とか、そういうのは大丈夫ですから……」
ふむ。
見た目の割にはしっかりとした言葉遣いの子である。きっと親の教育がいいんだろうなぁと思ってそこで、今こんな事を思っている場合ではないと気付いた。
「どうして、ついてきたいんですか?それに親御さんも心配するでしょうし、危険じゃないなんて保証も……」
正直、仁王君まで守っていられるほど余裕はない。自分の身すら守れるかどうかだ。
「知稀の……弟の空気が、そっちに流れている気がするんです」
立ち上がって仁王君は言った。
嗚呼、そう言えば弟が居るとか(小坂君が)言っていたな。

…………ん?
空気?

「空気が流れてるって一体……」
「ああ、言い忘れていました。僕達は空気の流れとかを読むことが出来るんです」
そして、仁王君は一息ついて、今思い出したかのように自己紹介を始めた。

「初めまして。僕は源氏蛍仁王、弟は宇都木知稀と言います。9歳です。……僕達の名字が違うのは、お母さんとお父さんが源氏蛍グループと宇都木グループの為に別姓にしているからです。複雑な事情は無いから大丈夫ですよ」

とりあえずこんな自己紹介を聞いて僕が思ったのは、年齢の割には正しい言葉遣いが出来てやけに落ち着いているなということだった。







「っ痛ぇ…………」
全身……特に、頭を襲う痛みで、俺は目が覚めた。
「…………なんだこれ」
目の前には冷たいコンクリートと、丈夫そうな鉄格子、それから床に転がっている緑色の塊しか無かった。
緑色の塊は置いといて、天井、壁、床のコンクリートと、目の前の鉄格子から考えるに…………

「……監禁?」

自分の口から、現実味の無い言葉が自然と出て来て驚いた。
監禁って……どこの創作世界の話だよ。つまりこれは夢だ。そうだ夢だ。
現実逃避の意味合いを込めて、自分を思い切り殴ってみた。痛い。当たり前だ。
そして、これが夢ではなく現実だと自分で証明してしまったわけで。でも、こんな事しなくても起きた時からずっと全身が痛いのだから分かり切っていただろうに。

……困った、思考がまとまらない。
自分で色々思考してら意味が分からないことになってしまった。どうやらかなり混乱しているらしい。重症だ。

「……何やってんだかな……俺は」
「マゾに目覚めたとかじゃない?」
「なんでだよ!!俺はノーマルだ……ん?」
俺以外の声があった事に少し驚きつつ、上を向いていた視線を下にやると、緑色の塊が陸に上げられた魚のようにビチビチと動いていた。
「…………」

何をやっているんだ、こいつは。



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