「それじゃあ、僕の自己紹介をしようか。あ、そのローブは後で処分しておくよ」
 とりあえず彼女を部屋に上げると、彼女はこう言った。
 殺人臭のするローブが手元に残ることにならなくて安心した。周りにばれるばれないの問題じゃなくて、僕の精神的に辛い。
「お願いします」
「うん。僕の名前は猫神綾。君みたいに努力して召喚士になったんじゃなくて、僕は生まれながらの魔術師さ。一族共々氷の使い手で、僕はそれ以外に雷系の魔術が使える」
 さっきから思っていたが、猫神さんの読んだ資料はどこまで事細かく書かれているのだろうか。僕が召喚士であることはともかくとして、狂偽兄さんを召喚獣にしたこともなんて……。
 生まれながらの魔術師というのにも驚いたが、よっぽどそっちの方が気になった。人間誰しも他人のことよりも自分のことの方が関心は強いのだ。残念な限りである。
「勘違いを正してあげるね。僕は他人の思考とか、過去とかが読めるんだ。読心術……みたいなものかな? 一人ずつしか読めないんだけどね」
 どうやら僕の思考を読んだらしい。猫神さんは僕の疑問に対する答えを言った。
 読心術か。読心術なんてものがあったらきっと便利なんだろうな。猫神さんがうらやましいと感じてしまう。
「そんな便利なものじゃないけどね」と猫神さんは少し影のある表情で言った。失言だったらしい。なにも言葉にしていないけど。
「ああ、そうだ。その『猫神さん』ってやめてくれないかな? 初対面だからってなんかね。呼ばれなれていなくて落ち着かないんだ。僕は少しこの苗字が嫌いでね。馴れ馴れしくても構わないから」
 ふむ。嫌と言われたらこのまま呼び続けるわけにもいかない、ような気がする。苗字が嫌いというのはなにか理由があるのだろうか。猫神綾さん……。……綾さん? …………これはなんか無理だ。
「え……ええっと……じゃあ猫さん、で」
 ものすごく動物っぽいけど仕方がない。
「よろしくね、音無君」
 猫さんは魅力的な笑みでそう言った。
 僕が照れて死にそうになったのは言うまでもない。
「さて、君のことは知っているのに、僕のことは何も言わないなんてフェアじゃないね。少し話をすると、君が最初から気になっているこの左腕。これはちょっと前に生贄にしちゃってね。お陰で雷属性の魔法が使えるんだけど」
 これで君も僕の弱みを握ったことになるかな? なんて猫さんはほほ笑んだ。自分の身体を生贄に捧げて魔術を得る、というのも禁忌の一つではある。なるほど、確かにフェアだ。



 猫さんには、空いている二階の部屋を使って貰うことにした。
 そして、夜。僕は恐ろしいことに気付いてしまった。
「思春期の男女2人が一つ屋根の下って! 一つ屋根の下って!!」
 小声で叫びまくり、ベッドで暴れる僕である。仕方ないじゃないか、僕だって男の子だもの。どう考えてもこれはおかしい人だけれど。思春期の力なんだ。仕方ない、仕方ない。
「落ち着け……! 落ち着くんだ僕! って落ち着けたら苦労しねーよ!!」
 あくまでも小声で叫びまくる僕である。
 結局この夜は、興奮しすぎて一睡も出来なかった。まったく、これからが思いやられる。



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