各部屋で音無と仁王、そして雨宮雪乃が眠ったことを確認して小会議が開かれた。
「治療中に意識を取り戻した。子供は仁王というそうだ。他に何かあるか?」
「はい。あの……どうして気流子さんのお姉さんはあんなところにいて、私たちを奇襲したのでしょうか?」
「それについてなんだけれど」
空美がおずおずと手を上げるとそれに受け答えるように猫神が立上がった

「どうやら敵が雪乃に接触したらしいんだよね」
「「「「!!」」」」
「以前仙人のもとに雪乃が現れたことがあったんだけどね。……まあ、その時は気流ちゃんの姿をしていたわけだけれど。その時には既に接触していたみたいで」
「お姉ちゃんはケロ君1号っていう、幻覚で出来たお化け蛙で私とコンタクトを取っていたんだけど……ある日から突然姿が見えなくなっちゃっていたの。多分その時だと思うよ。ちょうど葉折君が来て間もない頃だった」

重々しく開かれたそれぞれの口からは信じがたい言葉が述べられた
「僕が訪れて間もない……それってわりと最近だよね。敵も大人しくしているつもりはないってことか……」
葉折がいつになくシリアスになっていた。少し気味の悪さを感じるが気のせいということにしておこう。今はそれどころじゃない

「……あ……」
何かを思い出した様に空美が口を抑えた。敵の情報を持っている有力な仲間なのだし、是非発言して貰いたい
「私……ここにくる直前まで人に追われていたという話はしましたよね?」
「ああ、九十の」
そこまで言うと葉折は目を見開いたまま黙ってしまった
「……これは……痛いね」
空美の発言により空気が一変した。……ということしか理解できないでいると、気流子がこっそりと教えてくれた
「あのね……九十っていうのはね……凄く有名な殺し屋の一族の一つで、空美ちゃんがここまで逃げてきた空間の捻れをたどって、こっちまできちゃった可能性が高いんだよ。それで、何もしないでただ見ていた……今もどこかで見ているのかもしれない……そうなると、こっちの情報は相手に筒抜けだよね?今回みたいに関係の無い身内も巻き込まれたり……身内と敵として再開するケースも考えられるの。修行だって無駄になりかねなかったり……ね」
葉折や気流子までもをシリアスにさせてしまう程、何だかとんでもない話だった

「なに……?空間の捻れをたどる、そんなことができるやつがいるのか?それに身内って言ったって……」
頭が追いつかないながらも何とか理解しようと気流子に質問する
「私たちのボスは、出来てしまうんです。……どんな超人的なことだって」
聞こえてしまったのか空美が切羽詰った様子で立ち上がった。

「すみませんごめんなさい!私の所為です、私がミスを犯さなければこんなことには……」
泣き出す空美を慰めることもできず、思考を放棄し始めた俺たちにどこからか声が降ってきた

「大丈夫です。……何となくで申し訳ないんですけど、きっと勝てます、よ」
振り向くと音無が弱々しく立っていて、そこまで言ったかと思うと咳き込んで床に座り込んでしまった

「音無君……!?君はまだ動ける筈が……」
本来ならばもう少し日にちをかける必要のある音無が真後ろに立っていることに驚愕しながら、猫神は手元にあったタオルで音無の汗を拭ってやった
「……大丈夫です。熱っぽくはあるものの泣き言なんて……言ってられないんです」
「いや、たった半日で熱っぽいで済むわけが……汗だくじゃないか!」
無理をするなと言わんばかりに音無を横にしようとする猫神の手をそっと押し返す音無
「魔力の絶対値が上がったところで……それを扱えなければ意味がないんですよ、猫さん」
…………もっともなことをドヤ顔でいう音無

どこまでいっても俺とはかけ離れた世界で、危機感はあるものの実感がわかない。こんな俺は仲間として凄く失格なのではないだろうか
そんなことを呆然と考えていると葉折の野郎が俺の後頭部を小突いてきた
「とりあえず、面白そうだからってことでいいんじゃないかな?」
もちろん、嫌になったら逃げ出してもいいけど。と付け足して葉折は音無の元へと飛びかかっていった(音無の悲鳴が上がる)
あの変態はそんな考えで音無しについていくつもりなのだろうか。恐らく違う
まあ恐怖感はあるものの、不思議と逃げ出す気にはなれない。これが仲間というやつだろうか
……なんて綺麗事を並べたところで始まらないんだけどな

…………ん?
「おい、やけに遠くないか」
「そ、そうかな?けろーん☆」
貼り付けたような笑いを浮かべながらやはり離れていく気流子
そんな俺たちの様子を見て何か気づいたのか猫神が突然乱暴に気流子の肩を掴んだ
「お、おい」
「やっぱり……!!君もかい雪乃!大人しく寝てろと言ったじゃないか!!音無君といい君といい……!」
この小さいのが本当にあの雪乃なのか疑わしいところだが、猫神がそういうのだから雪乃に違いないのだろう。体格が違いすぎる。猫神ほどではないにしろそれなりに身長あった気がするぞあいつ
ところで自分の体を顧みないような行為をする者が続出したことで猫神の剣幕が凄いことになっているのだが
「……お休み☆」
「まて雪乃!」
霧散して消えた気流子を見るなり二階へと駆け上がっていった猫神。きっと二階に登りきった頃盛大に息を切らす事になるだろう

音無と言えば「……なんですか今の……」と唯々驚いていた



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