次々に流れていく視界
流石仙人と言うだけあって足が速いなあと呑気にもそんな事を思ってしまう

ところで僕はどうして担がれているのかな
「仙人ちゃんストップ!」
取り敢えず仙人を止めようと声を掛ける
すると突然(便乗して)葉折くんが叫び始めた
「そうだよさっきから引きずられて服がボロボロだよ!お尻もね!!」
身長というものを考えて欲しいよと言ったところでフードを勢い良く引かれて葉折くんは意識を失った

一言多かったね……
彼の二の舞にならないように言葉を選んで話し掛けよう

「どこに向かってるんだい?」
「……アイツのとこですだ…っと!」
突如右から現れた巨大狼をひらりと宙返りでかわす仙人ちゃん。僕らを担いだままどうして此処まで俊敏に動けるのか不思議でしょうがない
先制攻撃は防ぐことができたもののそのまま落下していき、空美ちゃんが悲鳴をあげる。
「チェストォォ!!」
雄叫びとも言える声で叫びながら、狼の背骨目掛けて踵落としが放たれた
背骨含む周辺の骨が折れたような音が響くと狼の悲痛な悲鳴が森中に木霊する

狼の屍を背に引き続き目的に向かって走り続ける仙人
「アイツって」誰だろう
思考が読めないことで普段より若干疑問に思うことが多くなる。そんな僕に仙人は淡々と答えた

「蛙ですだ」
……………………………かえる。
「帰ってもいいかな?」
「出来るならですだな」
既に何回か試してみてはいるのだけど腕は愚か足まで、抵抗しても抵抗しても全て無に返されてしまうのだ
どう足掻いてもこれは帰れそうにない

『嫌だああああああああ帰るうううううううう』と普段ならわめくのだけど、今回は別段抵抗はしない。何故なら蛙と言うのは比喩だから

「気流ちゃんだけど気流ちゃんじゃなかったんだよね」
「やっぱり見ていたですだか」
「見てはいなかったよ、ただ仙人でも音無くん達の誰でもない思考が紛れ込んだのがわかったから」
「…知り合いなんですだな」
「親友なんだ」
「なら話が速いですだ」

仙人は「一気に突っ走るですだよ!」とか何とか言いながら徐々にスピードが上げていった
徐々に、というあたりが僕らを気遣ってくれているのだろう。だけど既に葉折くんはお尻から腰にかけて相当なダメージを負っているのだけど



仙人は知っている。あの日突然現れた僕の唯一無二の親友を
「仲間にするつもりなのかい?」
「そうですだ」
「……ちょっと不安だね」

でも心配はいらないさ、と言った所で少し喋り過ぎたことに気付く。久し振りに再開出来ると思うと嬉しくてしょうがない

「僕も走ろうかな」
「……冗談でもそんなこと言うとマジで走らせるだよ」

それは勘弁してもらいたかった

「は、話が見えませんー…」
空美ちゃんが戸惑いながら言った
「仲間が増えるって話だよ」
「蛙ですか!?」

当たらずとも遠からずと言いたい所だけど残念なことに蛙は仲間にならないよ…

僕の呟きは森の中にかき消されていった



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