「ふふ、人質っていざ取ってみると便利だよね」

猫さんはそう言って笑った。あなたはいつからそんなキャラになったんですか。
「ほー、これで敵はひとまず安心ですだか?」
「なんかこっちが悪者みたいだねっ!」
そんな気流子さんは根も葉もないことを。自分達の正義を貫くためなら、多少卑怯なことをしてもいいんだよ。きっと。
……ところで正義ってなんだろう。

「ま、待ってください!」
修行しちゃえば組織もなんとかなるかもねーなんて空気が流れる中、空美さんだけが違った。
「あ、あなた達は私達を……組織を嘗めてませんか!?本気で、修行で強くなって勝つつもりなんですか?」
にゃろう、どこまでも僕達をしたに見るつもりか。悲しいことに全く反論は出来ないのだけれど。
「?何を言ってるですだか?そのための修行ですだよ?」
早く修行をしたくてそわそわしている仙人さんが空美さんに言った。空美さんは更に言い返した。
「あなた達は今の組織との力の差を把握しているんですか!?確かに、修行すれば追いつけるかもしれません。……でも、どのくらい時間がかかると思っているんですか!?」
おお、盲点。確かに、ここには時間の流れが違う修行にうってつけの場所なんて無いのだから強くなるまでにどのくらい時間がかかるのやら…………。モタモタしている内に敵の奇襲、バッドエンドなんて僕は絶対に嫌だぞ。
「空美ちゃんの言うとおりだね…………月明も昼夜も全面協力しているわけだし」
最初僕を殺そうとしたのはどこの誰でしたっけ?と言いたいけれど僕は何も言うまい。葉折君は真剣になってくれているんだ。

「大丈夫、提案したからにはちゃんと考えてあるよ」

そんな難題(?)を突きつけられても尚、猫さんは微笑むのだった。どこからそんな余裕が生まれるのだろうか。少しでもいいから僕に分けて頂きたいところだ。

「…………?猫さん?猫さんッ!?」
猫さんを抱き抱えてた気流子さんが突然騒ぎ出した。
よく見ると気流子さんの腕の中の猫さん……黒猫は、人形のように動かない。これは一体…………!?

「僕だって今までただ寝ていた訳じゃないよ」

部屋の出入り口からそんな声がした。この声は紛れもない猫さんのものだけれど黒猫の猫さんはさっきからぴくりとも動かない訳で。
「お、お前もういいのかよ…………!?」小坂君が目を見開いて口を開けながら辛うじて声を発していた。僕も自然と口がパクパクと動く。しかし何もいえない。
仙人さんも気流子さんも葉折君も驚いているようで、唯一空美さんだけがついてこれていない。
そう、部屋の出入り口には人間の姿の猫さんが居たのだ。
「猫神綾……猫神一族の生き残り…………」
空美さんが何かを呟いているが頭に入ってこれない。
ずっと黒猫の姿だったからそっちがすっかり馴染んでしまったけれど、ああ本物の猫さんだ。少し感動した。

「修行に時間がかかると言ったね。それは何故か。魔力の絶対量はなかなか上がらないからだ」
笑顔で猫さんは言う。その久しぶりの生身は、片腕のせいか少しふらふらしていて。
「テクニックで補えって事ですだか?でもそれは限界が低いですだよ」
「違うよ、仙人。もっとシンプルに考えるんだ。ねえ、気流ちゃん?」
「ん?ん?んん?魔力の絶対量をあげるとか?」
「うん。大正解」
気流子さんの答えに満足したかのように猫さんはにっこりと笑った。笑顔が眩しい。
「ちょ、ちょっと待ってください。そんなこと出来たら誰も苦労なんか…………」
「そうだよ。そんなにほいほい上がるもんじゃない」
殺し屋二人組から反論がでる。当たり前だ。
しかし猫さんはそんな二人の反論を急かさないでほしいなで一蹴した。

「僕の周りに、魔力操作のスキルを持ってる人が居てね……勿論、他人の魔力もそれなりに操れるんだ」
凄いよね、と猫さんは続ける。

「ちょっと、そのスキル借りてきたんだ」

そう言って笑う猫さんの目は全く笑っていなくて、魔術師のプライドみたいなものが垣間見えた気がした。



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