「ちょ、ちょっと待て」
僕にとって割と重大なことを宣言した空美さんに、小坂君がストップをかけた。この中で唯一の一般人である小坂君にはかなり頭の痛い話らしく、軽く頭を押さえている。
「そもそも、なんで音無が殺されるんだ?」
ああ、確かに。
そういえば僕はどうして殺されなきゃいけないんだろうか。何か悪いことでもしたのだろうか?……いや、したな。

「……原因は、音無さんがお兄さんの狂偽さんを召喚獣にした事にあります」
ピッと僕を指差して空美さんは言った。
ああ……やっぱりそれが一番悪かったのか。それもそうか、なんせ僕は狂偽兄さんを楽に消して、自動的に楽に力を手に入れたんだから。天罰でもないけれど……罰、なんだろうな。
「簡単に言うと、元々膨大な魔力を持っていた狂偽さんは音無さんの召喚獣になった事でパワーアップしたんです」
「召喚獣になることでパワーアップ……?そんな事、本には」
「召喚獣を作ることで力を得られるのは召喚士だけだと思ってましたか?」
本には書いていなかったと言おうとした僕をじっと見据えて空美さんは言う。
「……違うんです。人を召喚獣にすると、召喚獣になった人は元々持っている魔力に召喚士の魔力が上乗せされるんです」
召喚獣の方が、強くなるんですよと空美さんは言った。
つまり僕は、大嫌いだった狂偽兄さんの全てを奪うつもりが、力を奪って僕のものにするつもりが、逆に狂偽兄さんに力を与えていた…………。
「あ、ははっ」
どうして。どうしてこんなに上手くいかないんだろう。
やっぱりこれも、楽をしようとしたからなのだろうか?僕は地道に、努力を積み重ねていくべきだったのだろうか?そりゃあそっちの方がいいに決まっている。正攻法の逆をいけば必ずデメリットがあると相場が決まっているのだから。

「そこに音無が召喚士になるために力をつけて音無の兄は更に強くなったんですだな」
「……はい、そういう事です」

今回珍しい事に、仙人さんが真面目だから話がサクサク進む。なんて、僕が思考を放棄し始めてるからかそんなどうでもいいことをボーっと考えてしまう。
でもまあ、勝手に話が進むのは良いことだ。楽だし。
「それで、です。力を加算された狂偽さんの力は今のところ推測で…………世界を滅ぼせちゃうレベル何です」
「「「「は?」」」」

空美さんの驚きのカミングアウトに僕、小坂君、仙人さん、葉折君の四人が見事にハモる。
「ちょ、待て待て待て待て。世界を滅ぼすって何だよ!?魔王なのか!?」
「ダークサイドがずっと求めてるものを何気に音無は手に入れてるのかい!?」
「むおお、それはまさしくドラゴ○ボールですだな!儂、ワクワクしてきたぞ!とか言っておけばいいですだか!?んなアホな!!」
「僕の兄さんは人外か何かですか!?」
「わ、私に言われても…………」
そこから始まって突っ込みラッシュに空美さんは困り果てていた。そして仙人さん、キャラが崩れすぎだろ。

「…………力が強すぎるから殺す…………ねぇ」
そんな中、猫さんが1人意味ありげに呟いていた。そんな猫さんに気流子さんが「どうしたの?」と、問うけれど、猫さんは笑顔で「なんでもないよ」とはぐらかしてしまった。むむむ、意味深…………。
「あ、そうです。猫神さんが言った通り、音無さんは狂偽さんと共に力が強すぎるからって考えで…………」
空美さんは其処まで言って俯いてしまった。
まあ、話を聞いてなんとなく納得はいった。むしろ組織の考えに共感すらしたくらいだ。誰だって世界を滅ぼせちゃう危険因子はそうなる前に消そうと考えるだろう。……もっとも、消される側の身はたまったもんじゃないけれど。
でも、そう考えると確かに僕は死ぬべき何じゃないかと思えてくるわけで、でも、今のこのみんながいる生活を手放したくない自分もいて…………。
ああもう、本当に身勝手だ。

「…………気流りん☆パーンチ」

と、ここで思い切り殴られた。いや、別に気流子さんは思い切り殴った訳ではないのかもしれない。それでも僕はそれなりに吹っ飛ばされてダメージも受けたわけで。
いきなり何をするんだ。
「半分くらいしか聞いてなかったけど、考えてもどうしようもないんじゃないかなっ?」
無様に倒れる僕に気流子さんは笑顔を見せた。でもその笑顔にはどこか影があるような気がして、さっきの猫さんの発言といい僕を不安にさせた。

「まあ……確かにそうですだな」
「月明なんて頭の固い爺がトップだからね。話なんてするだけ無駄だし」
「わ、私一応指揮官ですからっ!計画はそれなりに分かります!!」
「自分の身は自分で守れってか」
「そういうことだから音無君!なるようになるんだよ!!」
前向きな笑顔でみんなが口々に言った。確かに考えても向こうの目的が変わる訳じゃあない。それもそうか。

ひとまず僕は問題を先送りにする事にした。もしかしたら、このメンバーなら本当にどうにかなるかもしれない。そんなポジティブな考えで。



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