「……それで、空美ちゃん。君が逃げてきたと言うのは、“組織”で間違いないかな?」

畳み掛けるように、猫さんは言った。その雰囲気は正に獲物を狙う猫のようで、正直めちゃくちゃ怖い。野生の動物って本当に怖いと思う。実は僕は動物が苦手だ。家の目の前が森になっているから、その内熊が出て来るんじゃないかと内心ヒヤヒヤしてるのは秘密だけれど。
「……蛙なら大量に居るみたいだけどね」と、またしても僕の心の中を読んだのか猫さんは憂鬱そうにそう言った。ああ……絶望している猫さんの顔が目に浮かぶ。どんだけ蛙が嫌いなのだろうか。

「あ、あなたが、猫神綾さんでしたか…………まさか本当に猫だったなんて…………」
「ん?うん?確かに今僕は猫だけど、どういうことかな?」
「ほ、報告と写真は人だったので…………化け猫なんですか?」
「ば、化け猫?いやいや、僕はれっきとした人間だよ。……いや、人間?」
「猫なのに人間…………?え?」
「むむむ……確かによく考えると魔術師は人間とは少し違うのかな?」
「猫魔術師?……なんか可愛いですね!」
「ん?猫魔術なんてあるのかい?それは黒魔術みたいな意味合いなのかな?」
「はいはいはいはいストップストップ!猫さんも空美ちゃんも吃驚するほど話が噛み合ってないよ!!」
「2人とも一旦黙るですだ!話がズレすぎですだ!!」

猫さんと空美さんの話の噛み合わなさに絶句していると、気流子さんと仙人さんが止めに入った。……ボケ要員が止めに入るなんて相当だと思う。猫魔術ってなんなんだ。猫魔術って。

「え、えーっと……雨宮気流子さんに、黒岩暁さん……でしたっけ?お二人は報告通りですね」
「む?さっきから儂等の名前を知ってるみたいですだが……どういうことですだ?」
「…………実は私、組織の指揮官をやってるんです」
「四季缶?四季の缶詰?なにそれ美味しそう!」
「違うよ気流ちゃん。四季缶には食べ物じゃなくて花が入って居るんだよ」
「そうなの!?でもお花って食べれるよね、猫さん?」
「ちょっとそこの2人は黙ってろですだ」
「「はーい」」

話が進みそうでなかなか進まない。今はまだ空美さんが組織の指揮官というちょっと驚きの情報しか伝わって居ない。ロリータが指揮官……一体組織って何なんだろうか。昨日のアリスさんみたいに女の子作ってるみたいだし…………。
っていうかどうでも良いことだけれど、四季缶ってなんだろう。そして猫さんは堂々と嘘を言わないでください。

「うむむ……」
「?どうした女装(ヘンタイ)。珍しく難しい顔なんかして」
「今僕のこと変態呼ばわりしたかい?……まあいいや。いやね?今女子会状態じゃないか」
「まあ……女四人の女子会状態だな。それがどうかしたか?」
「僕って女子会に加わるべきかなって」
「知らねえよ!っていうかお前は女じゃないだろ!」
「一応女装してるじゃないか」
「それはお前が変態なだけだろ」
「……小坂君ってば僕に冷たくないかい?」

後ろでは小坂君と葉折君のお馬鹿な会話が繰り広げられていた。だめだこいつ等、早く何とかしないと。

「指揮官ってことは組織のこと大体を把握してるんですだな?」
「はい……嫌気が差して逃げてきたんですけど…………」
「逃げてきたってことは追われてたですだか?」
「ちょっと九十の双子に…………」
「九十!?」
仙人さんと空美さんが話を進めていくと急に葉折君が反応した。どうしたのだろうか。
「九十は月明の分家なんだよ音無…………!!」
忌々しそうに唇を噛みながら葉折君は言った。
「えっと……分家が居たらどうなるんですか?」
葉折君がどうしてそんな顔をするのか僕にはよく分からない。そもそも葉折君サイドの話がよく分かっていないくらいだ。

「普段は分家は本家である月明に協力しないんだよ、音無。協力する必要なんか無いからね。だけど今回は違う。分家が本家に協力してる状態なんだ」
いつになく真面目な口調で葉折君が言う。しかし女装のせいで決まってないのは黙っておこう。
「……つ、つまり、月明家とその分家は“組織”に全面協力をしてるんです」
そこに空美さんが加わった。少しどもってはいるものの、さっきまでのおどおどした雰囲気はない。
「……更に、空美ちゃんは昼夜を名乗った。月明にとどまらず、昼夜までもが組織に加わって居るんだよ。これがどういう意味か分かるかい?」
尚も真剣に葉折君は続ける。
えっと……月明が組織に全面協力していて昼夜も組織に加わってて?うん?意味?
「殺し屋二家が一つの組織にいるですだ。その組織の目的の一つに音無を殺すってのがあるですだから…………」

「そうです」

仙人さんが続けようとしたのを遮って、空美さんははっきりと言った。


「嘘誠院音無さん。組織はあなたを全力で消そうとしています」



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