「何だったんですだ……」

先程まで存在した殺気は姿形も無く、今まで通りの平穏が流れている
始めから何も無かったかのように、なんていうのはベタですだか……ね

一人屋上風に当たっていると後ろから本物の蛙が姿を現した

「は……はひ……死ぬかと思った……」
「?……どうしただか?」

何故か息が上がっている気流子を疑問に思って振り返ると、気流子の服は上から下まで泥だらけでボロボロだったですだ
……こりゃあ…………

「…………階段でこけたですだか!しかも持っていた粥を頭から被ったですだか!!」
「あーあー聞こえない!」

さっきの幻術師の見せた気流子は幻術だから、粥を処理したってのも嘘の可能性があったから鎌をかけてみた
ビンゴ、本物の気流子は今の今まで粥を持ち運んでいたようですだ

「お主……自殺行為ですだ……」
半ば呆れたですだ。うん
猫神の料理は料理じゃないですだ。最早凶器……いや兵器ですだ!

「ちゃんとガードしたもん!……ケロ君1号で」
「……蛙?で、ですだか……!?」

なんと惨いことを……!あんな小さな体でこんなチビ一人の身代わりにさせられるとは…………

「ケロ君は化ガエルなの!こんなに大きいんだよー!!」
「でかー!?そ、そんなにですだか!?」

家一つ食しそうな大きさを体現してみせる気流子にそんなバカなと首を横に振る

「まあ……嘘だけども」

嘘かよ!とヘタレと音無なら突っ込みを入れていたですだ……
儂は突っ込まないだよ!わかっていたですだからな!……でも何か悔しいですだ…………

「むおおおお……!嘘吐きはなんとやらですだ!!」
「でもこのくらいなんだよ!」

それでも某ネズミポ●モンぐらいの大きさだった

「もうトレーナーになれだよ……です」
「とれーなー?……暖かそう?」
「服の方じゃないですだよ!!」

さてはこの娘……漫画やテレビなんつーもんは見ない派ですだな!

「嘘嘘!某収納用ボールなんて持ってないから無理だよー!……ところで暁ちゃんはお粥どうしたの?」
「仙人と呼ぶですだよ!」本日二度目の訂正。ま、本物には一回目の訂正ですだが


「……まあ、簡単なことですだ。まず猫神の言うアレンジ(と言う名の魔力の渦)。アレを儂の魔力で砕いて弱体化させるですだ。簡単とは言っても氷やら電気やらと色々な種族が混ざっていて複雑な事になっていたですだがな…………
何とかあれ等を解き解して魔力の沈静化。そしてあとはダークマターと化した粥を……食ったですだ」
「食べたの!?」

蛙が物凄く目を見開いて儂の襟首を鷲掴みにした、ですだ……ぐえ!

「か、蛙!落ち着くですだ!食べたといっても元の無害な米ですだ!猫神のあの兵器の実態は猫神のアレンジの所為でもあったですだ!」
「いやいやいやいや!綾にゃんの料理姿見たことあるの仙人ちゃん!笑顔ででノコギリとかチェーンソーとか片手にしちゃう程地獄絵図なんだよ!!」

どんどん掴む腕に力が入ってきているですだ。このままでは本当に儂の首が絞ま……いやいやいやいや

「は、離すですだ気流子!」
「あ……ご、ごめんなさい!」

我に返った蛙に突然離されて地面に落ちる
儂に負けず劣らず馬鹿力ですだ……まだ儂の方が力が上ですだがな……げほ

「むう……気流子はどこからそんな力が出るだか…………」
「……ええっと……い、いっぱい食べるから……かな?うん……」

??なんだか訳ありみたいですだよ。これ以上聞くのはやめておこうだよ、です


「……ふむ、因みに気流子はあの大量の粥をどこにやったですだよ?」
「ケロ君に食べてもらった!」
「また化蛙ですだか!?」
「うん……でもまたどこかに行っちゃったんだ」

肩を落とす気流子。どう声をかければいいですだか…………
というより、蛙……どんだけ万能ですだか……!一家に一匹、いや音無家に人数分欲しいですだな!


「うう……シンゾウ……」

……………………………………。

「……ケロ君1号……じゃ、なかったですだか……?」
「けろっ☆」

てへっ!じゃないですだよおおおおおおおおおおおおおおお
いかにも大切なお友達とでも言わんばかりの雰囲気だったじゃないですだかああああああああああああ

ケロ君1号は儂は見たことないですだが、化蛙と呼べる程の大きさだった。恐らく長い付き合いだったのではないだろうか?
お友達といった雰囲気よりもまるで家族だと思っているような……気のせいですだか?

「それに……多分どこかで見てるだろうから……」
「む?」

どういうことですだか?ますますわけがわからなくなった

今日は理解不能な出来事ばかりですだ!



「……こっちの話だよ!えへ!ああもう服新調しなきゃ……ううう貯金から下ろさなきゃ」
「貯金とかあるですだか……」

その金を少しでも音無に渡せば大喜びだろうにと苦笑した。



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