仙人さんが居なくなって。
翌日葉折君も居なくなった。
『家族』が消えていくような感覚がして、僕は息苦しくなった。

取り戻したい。

早く、二人が帰ってきてほしい。
僕はそう願うだけで何も出来ない。

あの頃だってそうだ。
僕はいつも、あんな生活が終わることを願ってた。祈ってた。
でも何も出来なくて。
何も変わらなくて。
才能も無くて、役立たずで。
狂偽兄さんばかりがもてはやされる。

僕はいつだって無力の役立たずで存在意義の無い―……





葉折君が葉折君の弟に連れ去られて(?)、僕は何も出来ず理解できずただただ突っ立っていた。
頭の中は真っ白だ。完全に思考は止まってしまったらしい。

「おーい、何を突っ立ってんだー、音無ー?」
玄関から小坂君の声が聞こえる。聞こえるだけで意味はつかめず、反応できず……。
気づけば僕は引きずられるように家の中へ連れられていた。

僕の頭の中には"仕事"とか"殺すつもりだった"とかそんな言葉が渦巻いていて。
『ごめん……』
と言う葉折君の声が響いていた。





明らかに音無の様子がおかしかった。
何を言っても反応しないし、視界には何も映っていないのか焦点が合っていない。ただ立っているだけ。
絶対にヤバいことがあったと判断し、俺は音無を家の中へ引きずっていった。

音無をソファーに無理矢理座らせて軽くビンタをしてみる。しかしその目はどこも見ていないようで。
仕方無く俺は猫神に読んでもらうよう頼んだ。こういう時猫神みたいな読心術が使えたら……と心底思う。
「こういう時にしか使えないから便利ではないよ?」
俺の心を読んだらしく、猫神は苦笑しながら言った。別に目の前の黒猫が笑っているわけではないのだが、そう見えるというのは不思議なものだ。何か人間の深層心理とかが関係しているのだろうか?いやはや、医療系に繋げてしまうのは俺の悪い癖だ。
「……全部、読めたよ」
猫神が深刻な顔持ちで言った。そんな顔で言われると俺も深刻な顔持ちになってしまう。
「何が起きたんだ?」
「……その前に小坂君は月明家がどんな組織なのか知って居るかい?」
「いきなりだな。あれ、よく考えたら殺し屋としか知らねえな……」
いきなりの質問に俺は詳しく答えることが出来なかった。否、いきなりでなくとも答えられなかっただろう。俺は月明家についてほとんど知らない。
「月明家は確かに殺し屋だよ。その答えは合っているけど、満点ではないね。……月明家が一族ではなく組織と認識されているだろう?あれはただ血のつながりで構成されていないからという訳では無いんだ。月明家には御徳院というボスの貴族(?)がついていてね。御徳院の資産によってむちゃくちゃな人体実験等をしていたりするんだよ。世界ではまだ公表されていない技術だってもっていてもおかしくない一族なんだ」
「つまりお前は何が言いたいんだ?」
「回りくどくて悪いね。本題にはいるよ。簡潔に言うと音無君はその月明家に殺されようとしている」
「……は?」
殺されようとしている?
突然の予告に理解が追いつかない。二拍ほどおいてやっと理解すると、疑問が次々と沸いてきた。
「いや、音無がなんで殺されるんだ?」
殺されようとしている理由がわからない。何故音無が?
「残念ながらそこは分からないよ……。話をまとめると、葉折君は音無君を殺しに来ていた。こういうことなんだ」
女装男は暗殺者だった。つまりそういうことで、なによりもそんな奴と数日間居たという事実にゾッとするのであった。



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