なんだったんだろうか……今の二人組は。
僕の名前を知っていて、完全に殺しに来ていた……。
葉折君が居なければ、僕は確実に死んでいた。
ナイフを、心臓に突き立てられて。風の魔力でズタズタにされて。
そう思うと鳥肌が立った。
「あ……、葉折君ありがとうご「ごめん音無っっっ!せっかく料理作ってもらったのに……投げちゃったよ……」
僕がお礼を言おうとしたのを遮って僕を救ったレタスを勿体無さそうに拾いながら葉折君は謝ってきた。
そういえばどうしてレタスがナイフを止められたのだろうか。
「僕はさ……、植物を操る能力があるんだ。植物ならどんなものにも変える事が出来る。暗殺なんて簡単な事さ」
いつになく真面目な口調で葉折君は言う。
自分が殺し屋であることを今のことで晒してしまったようなものだ。何か思うところが有るのかも――……
「手元にあったのがレタスだけだったんだよね……。うう……せっかくの食べられるものが……」
―――なんて、デリケートな心持ち合わせていないか。そんなデリケートさとかその他諸々があったら人の家にずかずか上がり込まないよな。
いや、葉折君は一応インターホン押したんだったな。なんて事はどうでもいいや。

とりあえず葉折君には「僕を助けてくれたのだから、謝らなくてもいいですよ」と、フォローしてみた。
「そっか!ならいいか!」
と、葉折君は笑顔で答えた。
女装してないか、本当の女の子だったら魅力的なんだろうな。
変態って残念。

さてと、夕飯に戻るかな。

夕飯に戻ると、案の定僕の分は食べられていた。
フラグって裏切らない。





翌日の朝である。
僕は爆発音で目覚めた。
なんだ!?敵襲か!?
自分の部屋から出ると、黒い煙がどこからか立ちこめていた。
「……げほっ……火事……?」
口と鼻をTシャツで押さえて台所へ向かう。
流石に僕だって常にマントを身につけている訳じゃないし。
半袖だから袖で押さえる事が出来なくて盛大に腹が出てしまっているけれど、仕方がないだろう。誰も起きていないだろうし。

「ふー……失敗ですだね。火力調節が難しいですだ……」

台所からそんな声が聞こえた。
この変な口調は一人しか居ない。仙人さんだ。
「仙人さん……、何をやっているんですか」
またか。また料理の下りなのか。
「早起きをしたから朝食を作ろうと思ったですだよ。儂は勝手に居座る身ですだからな……なにかしたかったですだよ」
申し訳無さそうにしょぼくれる仙人さん。そんな顔をされると何も言えなくなるじゃないか。
「お主等は儂を追い出す素振りを見せなかった……。まだ居座って1日経ってないですだけど、ここは居心地がいいですだね」
今までの過去を振り切るような、必死にツラいことを忘れようとしているような笑顔で仙人さんは続ける。
それは、僕にも当てはまることで、僕には何も言えなかった。

―――と、ここでまたインターホンが鳴った。
この数日でどんだけ鳴るんだ、インターホン。
昨日のことが頭に浮かんで少し警戒しながら玄関を開けると、そこにいたのは上下某ブランドのジャージに身を包んだ色素の薄い男がいた。
「あなたは確か、お隣の――「いい加減文句を言いに来たぜ。ここ最近の騒音はなんなんだよ!さっきの爆発といい、この前の玄関が氷漬けにされて破壊されてたことといい、迷惑なんだよ!!」
怒られた。だけど、それって僕が悪い訳じゃないんだよな。どうしようもない。
えーっと、確かこの人の名前は……。近所付き合いが少ないと名前が覚えられなくて困る。

「ん……、君は僕を玄関にすら入れてくれなかった酷い人じゃないか……えっと……戸垂田……小坂、君?」
ああ、そうだ戸垂田さんだ。
ヘタレた小坂……。ニュアンスによっては面白い名字なんだったな。
と、いうか猫さん、いつの間に其処にいたんですか。ビビりますよ。

「う……!うるせー!!名字が面白いとか思ってんなよ!とにかく、今度また五月蝿かったらただじゃおかねえからな!」
名字をいじられるのが嫌だったらしい。
小坂君は顔を真っ赤にして玄関から出て行った。



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