僕の策は通用しなくても、僕の思惑通りに事は進んだ。

「……これは誘われたようね」
「あはは……音無君って酷な事をするよね」

僕の背後から、仏頂面の雪乃さんと苦笑する猫さんが現れた。
僕達の邪魔をする事が目的のこの二人が、あれだけ派手なことをやっておびき出せない筈がない。
「まあいいよ」と、猫さんは笑った。

「二人まとめて邪魔してあげるよ」

瞬間、僕の足は氷で固められていた。
なんだかんだ、僕は自分の敵を自ら増やしただけだった。自分の首を自分で絞めて何をしたいんだ僕は。
「猫神に嘘吐きですだか……これは楽しくなってきたですだな!」
最早脳みそが筋肉で出来ているとしか思えない仙人さんが、ぐちゃぐちゃに絡めた僕の鎖を振り回しながら言った。鎖の先端には岩みたいなものがついていて、即席のモーニングスターのつもりなのかもしれないと思った。
「嘘吐きって……随分な言われようね」
「仙人は率直に雪乃を表現しただけだと思うけど?」
「……五月蝿い」
相変わらず仲の良い二人である。だから、敵に回すとかなり厄介だ。さっきから宙に氷の塊が作られ、霧と化すという事が繰り返されているし、雪乃さんの幻術が来るかもしれない。
「修行が始まってから仙人とやるのは初めてだね」
「む?そう言えばそうですだな」
休むことなく氷の塊を作りながら、猫さんは言った。
「手合わせもあの日以来かな」
あれは手合わせとは言えないけどね。と、ゆっくり歩きながら続けた。あの日とは、仙人さんの他人格が猫さんを殺そうとした日のことだろうか。仙人さんは黙ったままだ。
「いくら不可抗力とは言え、あれだけフルボッコにされたら僕だって怒るんだからね?」
どうやら根に持っていらっしゃったようだ。そして、気付けば僕の足は自由になっていて、変わりに僕たちを囲むようにドームが出来上がっていた。広さからすると、さっき僕が作った円ぐらいだ。そのまま利用されたのかもしれない。
「このドームは雪乃が解除しない限り消えないし、雪乃か僕が倒れない限り仙人でも壊れないような仕組みだよ」
「ふはははは、返り討ちにするですだよ!」
「いつから君はダークサイドになったんだい?」
此処で会話は終わり、戦闘が始まった。
あまり広くない円の中では、逃げ場なんてものはなく、激突する仙人と猫さんの巻き添えを喰らわないようにするのが精一杯である。
「……ねえ」
「なんですか?」
端へ端へと追いやられていると、雪乃さんが腕を組んで話しかけてきた。
「……これ、私も参加しないと駄目かしら?」
「…………」
気だるそうな顔で雪乃さんは言った。一応参加してほしいけれど、出来ることなら僕も参加したくはない。
しかし残念なことに、ドームの中に入れられてしまった以上、僕は逃げることが出来ないのだ。
「音無ィ!」
「は、はい!?」
「突っ立ってるだけならお主から仕留めるですだよ!」
流れ弾ではない、明らかに僕を狙った一撃が飛んできた。炎を纏う岩は隕石のように降ってきて、ギリギリで避けるとドームに激突して消えた。
どうやら、傍観も許されないようだ。
「……駄目みたいですよ」
「そうらしいわね」
面倒臭いわ。とため息をついて、雪乃さんは姿を消した。多分、幻覚だ。
「…………『神姫四札』《アリス・トランプ》」
僕は、鉄のトランプを召喚し激突する二人に向けて弾幕を作るように放った。





相変わらず、仙人の強さは凄まじい。
このドームを完全に僕のテリトリーにするために魔法陣を配置しながら戦っているのだけれど、魔法陣が完成する前に僕がやられるかもしれない。
「……やりにくいなぁ」
「ん?なんですだか?」
「――別に」
何でもないよ。と、言う暇は無かった。岩や炎を氷で相殺すれば、素手の拳や脚が襲い掛かって来る。
読心術に頼りながら戦ってきた僕としては、魔術の相性以前に天敵だ。読めない相手の裏をかくのは難しい。
そもそも肉弾戦が苦手な僕は、こんな勝負を続けていたら直ぐにバテるのだ。僕みたいに体力が無い訳でもない人でも、仙人相手ならバテるだろうけれど。
スタミナも魔力も、本当に底が知れない。だから仙人なのだろうか?

なんてことを考えていたら、目の前の戦闘バカが音無君を挑発した。余計なことを!
直ぐに音無君の方から鉄のトランプの弾幕がプレゼントされてきて、僕はそれを相殺せずに氷の壁で弾いた。それに少し遅れて、今度は炎を纏った仙人の拳が来たからこれもまた氷の壁で対処する。壁は呆気なく弾け飛んだ。
「ああ、もう……」
魔法陣が完成するには後一カ所配置しなければならない。複合型は威力が強くても配置に時間がかかるのが難点だ。最後の一カ所は音無君が居る方角。僕は渾身の脚力で跳んだ。



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