それから話し合いをし、修行の班を決めた。細かく役割分担をしておけば、もしもの時の為になるだろうというのと、今日の僕と仙人みたいに羽目を外しすぎる人が出ないようにという、小坂君の配慮だ。申し訳ない気がしなくもない。
とりあえず班は三つに分けることにした。僕・雷さん・空美さんの一班と、気流子さん・小坂君・仙人さん・仁王君の二班。猫さんと雪乃さんは、どうしようもないかもしれないと、気流子さんが言っていたため、必然的に二人が三班ということになった。
「とりあえず仙人。お前はあんまり暴れすぎないでくれ。下手したら山火事になる」
と、これは小坂の指摘。確かに、修行場所を家の目の前の雑木林にしているため、仙人さんがテンションを上げすぎた状態で暴れたら火事になるだろう。それは危険すぎる。
「仕方ないですだな……炎は極力やめるですだよ」
脳みそが多少筋肉質でも理解力のある仙人さんは、やや不満げに納得してくれた。どこかの戦闘民族みたいな彼女にとってはつまらないだろう。だからといって火事を起こす原因を許可するわけにはいかないのだけれど。

「そういえば、そこの森の中って川が流れてましたよね?」「ああ、かなり綺麗な川があるはずだが」
ちょっと羽目を外して仙人さんにフルボッコにされた僕は、今日はもうあまり暴れる気分にはなれないわけで。というか、これ以上は小坂君にメスを刺されかねないため、僕は一つの案を考えた。
「今日の夕飯は、川魚にしませんか?」
暴れられないのなら、力ではなく繊細さを磨けばいいのではないかと思った訳で。川魚を捕らえてこようと思い立ったのだ。これで食費も抑えられるし一石二鳥である。
「ああ、俺は構わないぜ」
「塩焼き!塩焼き食べたいですだ!!」
「大漁を期待するであります隊長!」
「魚!魚!」
二班の全員から、熱意溢れる賛成をもらった。僕は一応バケツを持って、空美さんと雷さんと一緒に外へ出て行った。





「コントロール性を高めるのも大切ですよねー……」
そんな事を呟きながら、空美さんが空間移動で魚をバケツの中へ入れていく。魚がバケツに入る度に水がバケツから溢れ出た。
「で」と、僕の方を見て、割と鋭い声で空美さんは言った。
「何をやっているんですか音無さん」
「……魚って、捕まえるの難しいんですね」
僕は召喚士であるため、鎖やナイフを召喚する魔法しか使えない。仙人さんのように何かを燃やしたり、小坂君のように怪我を治したり、空美さんのように空間を操ったり、雪乃さんのように幻覚を見せたりする事は出来ないのだ。そのためか分からないけれど、僕は魚相手に苦戦を強いられていた。
まずナイフで魚を狙い撃ちしようとしたのだけれど、失敗。次に鎖で雁字搦めにしようとしたのだけれど、これも失敗。少し自棄になってトランプを川に乱射したのだけれど、それでも魚は捕まえられなかった。
「不器用、って、領域を、越えてますねぇー……」
「お陰で私が捕まえやすくなりましたけどね」
雷さんには苦笑され、空美さんには皮肉を言われた。面目丸潰れである。

「ちょっと、ナイフ、貸してもらえますか?」
右手に持ったナイフを眺めながら黙っていると、見かねたのか座っていた雷さんが立ち上がった。
「あ、はい、どうぞ」
「魚を、取るなら……投げナイフよりも、そのまま刺す、方が」
僕からナイフを受け取ると、雷さんは靴を脱いでジャブジャブと川の中へ入って行ってしまった。真っ白なワンピースが濡れてしまうことも気にも止めず、ナイフを握って魚を探す。
――ぞわり。と、全身の鳥肌がたった気がした。
「良いと思うんです」と言いながら、雷さんは水面にナイフを突き刺した。その顔は、歪んだ笑顔を浮かべたように見えて、組織で見た時を彷彿とさせた。否、それよりも、根本的に気持ち悪さを感じさせた。
ただの川の水に濡れているだけの筈なのに、血に濡れているように見えてしまうのは何故だろうか。……僕の中の中学二年生が大暴れしているだけかもしれないけれど、それだけ雷さんが禍々しく見えるのだ。
「…………空美さん」
「後で、お話します」
僕の様子を見て、僕が言わんとしていることを察してくれたらしい。
問題児だったという、九十九雷。彼女が記憶を失うまではどんな人間だったのか、もっと先に知っておくべきだったのかもしれない。これじゃあ、いつ記憶が戻って僕達を襲ってくるか分かったもんじゃない。
もしかしたら、記憶が戻らずとも…………いや、今はそんな事は極力思わないでおこう。どういう皮肉な運命の巡り合わせか分からないけれど、彼女は僕達の所へ来たのだ。ほんの少しの記憶の断片を頼りにしたのかもしれない。そんな人に、何も知らないらしい人に、疑いの眼差しを浴びせ続けるのは決して良いことである筈が無いのだから。
一度受け入れてしまったら、その責任ぐらいとらないと。



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