「はぁぁぁぁなぁぁぁぁせぇぇぇぇですだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ッ!?」

仙人さんのそんな叫び声で目覚めた。
「…………えっと……」
小坂君に何かを首に刺されてから運ばれたのだろうか。僕は小坂君の部屋のベッドに寝かされていた。
壁には組織に乗り込む前につけられたメスの刺し傷がある。うん、間違いない。
そして、この部屋は二階にあるのだから……多分仙人さんが騒いだのは一階のリビング辺りだろう。声の聞こえ方がそんな感じだ。
……なんて、悠長に考えている場合ではない。もしかしたらまた組織が乗り込んできていて、仙人さんが捕らえられたかも…………!

僕はベッドから転げ落ちるように起き上がり、そのまま転げ落ちるように階段を降りた。身体の痛みなんて気にしていられない。
「仙人さんッ!!」
あちこちに身体をぶつけながら、僕はリビングのドアを勢いよく開けた。

「……あ、あれ…………?」

リビングに勢いよく入った僕の目に飛び込んできたのは、布団で簀巻きにされた仙人さんが魚のようにビチビチと跳ね回る姿だった。
「よお、音無。お目覚めか」
そしてビチビチ跳ね回る仙人さんを踏んで制する小坂君。これは…………
「……小坂君の性癖にとやかく言うつもりはありませんけど、真っ昼間ですから時間という物を考えてですね…………?」
「いや待て、お前今どんな解釈をした?」
「どんなって見たままを……」
むしろどんな解釈をしろと言うのだろうか。言い訳は見苦しいし、問答無用かと思う。
「……はぁ。まあいいか…………」
小坂君は諦めることを覚えたようだ。
「そんな事よりも」
急に小坂君の目つきが鋭くなった。僕をすごい勢いで睨んでいる。

「起き抜けで暴れてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

殴られた。そして床にたたきつけられて腕を捻られ馬乗りにされた。暴れた患者に暴れるなとキレながら此処までする治療士がいて良いのだろうか。いや、いていい筈がない。……残念ながら目の前にいるのだけれど。
「いやぁ……小坂君、そんなに怒らないで下さいよ」
「怒るわッ!一体誰が治すと思っていやがる!!」
カッと目を見開いて小坂君は怒鳴った。確かに、僕達が暴れて傷つく度に治療をしなければいけないのは小坂君だ。どんなにアホな事でも、小坂君にはそれなりの労力をさいてもらっている。そう考えると凄く申し訳なってくるわけで。
「す、すみません……」
こうやって謝るしか無いわけだ。

「いや、違いますよ音無さん」
謝罪した僕に対し、妙ににやけた顔で空美さんが言った。

「それ、『あんまり傷だらけになって俺を心配させるな』っていう小坂さんのツンデレですから」

小坂君を見る。
顔が真っ赤になっていた。
「う、うるせえこの野郎ッ!!」
真っ赤な顔で怒鳴られても和むだけである。嗚呼、この人が女の子だったら僕は確実に惚れていただろう。多分、猫さんがこんな性格をしていたら、僕は鼻血による多量出血で死んでいる。

「でも、そんなに心配はいりませんよ」と、僕は笑って見せた。
馬乗りになっていた小坂君が僕からおりてから、僕は続きを言う。
「なんか、前よりも回復が早いみたいなんです。……魔力が手伝ってくれていると言うか……」
胸に手を当ててみる。僕の中に、確かに僕の魔力だけれど、どこか違う魔力が一部ある感覚がした。
「もしかしたら、猫さんの魔力かもしれませんね」
組織に乗り込む前、僕は猫さんに強化として魔力を注がれた。その時の魔力を完全に僕が取り込めないままになっているかもしれない。
もし、そうなのだとしたら、これは凄く素敵なことだ。この魔力が僕の中にある限り、猫さんが生きていることの証明になる。死ぬかもしれない、猫さんの。
「なるほどな……」
小坂君は嬉しいような、怒りたいような微妙な顔をした。
「でも、まあ傷は作るなよ」
「善処はしますよ」
「……どうだかなぁ……お前はアホだし、何よりマゾだからなぁ…………」
「だ、誰がマゾですか!?」
最後の一言は聞き捨てならねえ。というか違う。どちらかと言えば……どちらかと言えば?むうん、僕はどっちだろうか。

「……ついでに言えば、お前はこの丸二日寝たきりだったからな」

真剣に考える僕に、小坂君はそう言い捨てた。
衝撃が走った気がした。



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